第64話 失踪
次の日の朝のことだった。武は第3PTにいるカヌスさんに用事があるといって早々に警邏隊でPTを組んで野営地から出ていき、さらにメアリーさんたちもオオカミを狩ると言って野営地から出ていきこの野営地にはつっ君さんを除き警邏隊の人がいなくなってしまった。
危険地帯で自分たちがほっぽり出されてしまったのではないかという不安がレイドPT全体に漂い始めたが、まだ楽観的な雰囲気ではあったと思う。流石にこんなところで警邏隊の人間が逃げ出す意味がないからね。
そんなことより今日は休日みたいなものなので久々に環と一緒に過ごすことにした。
「そっちはどうですか?私の方は大変でしたよ」
「べつに、敵が来たら魔法を撃つだけだから暇なもんね、ただMP回復のPOTを飲まなくちゃいけないからトイレが近くなっていやね。」
森の中の移動はトイレ休憩など一気に取らないといけないため確かに飲み物をがぶがぶ飲まなくちゃいけない後衛は大変かもしれない。
オオカミに追い掛け回されるのも大変だけどトイレを我慢するのもすごく大変そうだ。どっちがいいだろうか……。
「それよりも昨日の狩り、いったい何だと思いますか?」
環に昨日から疑問に思っていたことを聞いてみた、もしかしたらなにか気づいているかもしれない。
「おねーちゃんがなんもわからないなら私もわかんないわよ、ただ警邏隊の人たちはこのオオカミが異常にポップしている原因に心当たりがあるんでしょうね」
環にもさっぱりわからないようだった。まあそうだよね、ということは警邏の人たちは何か私たちに隠していることがあるんだろうか。
「考えてもしょうがないことなんてやめましょうよ、辛気臭くなるわ。ただでさえ野営地から出れないのに。」
野営地は外敵から私たちを守ってくれる一方外に出ることを拒む檻にもなっていた。
「何かすることありますか……」
環に何か暇つぶしにできそうなものはないのかと聞く、環は力なく首を振った。
エターナルでの娯楽はおしゃべりするくらいしかないのだった。
外に……外にでたい!別にそんなに出たくもないけど禁止されると出たくなっちゃう。
暇を持て余した私たちは仕方がないので小学生の時よくやっていた名前のわからない謎の遊びをして過ごすことになった……。
そうして夕方まで暇をつぶしていると武たちやメアリーさんが野営地に帰ってきた。
こそこそと何かを話しているが……さすがに聞こえないか。しばらく話していると話がまとまったらしく武がまたみんなを集めた。
「明日、我々は撤退し、3層の入り口に帰ることになった、理由は今は伝えられないのだが、これは警邏隊で集めた情報から判断したものだ。今回のレイドPTに参加してくれた皆さんには申し訳ないことをしたと思っているが、君たちの実力なら適正のレイドPTでも十分やっていけるとこの3日間共に戦って感じているのでこれに懲りずにまた3層のレイドPTに参加してくれると私としてもうれしい。」
武は警邏隊の決定を私たちに伝えてきたのだが……なんだろう、少し不服そうだ。彼は個人的に前に進むべきだと思っているのだろうか?
それとも今回のレイドが攻略に結果として失敗してしまったという事実が受け入れられないのだろうか。
とにかく私たちはこの3層から出られることに安堵して、明日のためにゆっくり休もうとかメニューから必要なアイテムを購入しておこうなどと各々必要だと思う準備をするためにその場を後にしたのだった。
この時私たちの誰一人も次の日の朝出発の時間になっても警邏隊の人間がいないだなんてその時は考えもしなかったのだった。




