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第6話 敗者

 皆さんは宇宙でおぼれるのに必要な水の量を皆さんはご存じだろうか?

 ほんのわずかな水でもおぼれてしまうそうだ。重力がないせいで顔に水がへばりつくためらしい。

 なぜこんな話を急にし始めたか、それは私が迷宮で転んだ際顔面がスライムに突撃してしまったからである。

「ぼがガガガがっ」

 転んだ直後私は何が起こったのかわからなかった。目を開けようとしても視界は薄暗く濁ってる。

 混乱の中とにかく私は立ち上がろうとしたが頭が持ち上がらない。

 ここまできてようやく私はスライムに頭を包まれた状態なことをおぼろげながら理解した。

 だったら話が早い、スライムを引き離せばいいのだが、

「んぎいいいいいいいい」

 と、取れない、そして息苦しいスライムが顔にへばりついて呼吸ができないのだ。幸い鼻の穴に入るとかそういうことは起こっていないが遅かれ早かれ窒息してしまう。

 単純な力比べならスライムに負けるわけもないはずなのだがいかんせん体勢が悪い。スライムが床にへばりついているのだろうか、私の頭は床からほとんど動かせずほとんどうつぶせの状態だった。

 そして首を曲げて体を持ち上げないと足に力がかからず無理な体勢を取らなくちゃいけない以上スライムを頭から引きはがすことができなかったのだ。

 ああ、転生したというのにスライムに負けてこんなところで終了してしまうなんて。

 祈りたかったけど祈れなかった、というか息が苦しくてもがいていたためそんな余裕はなかった。

 けれど最期の晩餐がカロリーメイトかぁっと思う余裕だけはあった。

 そうして私は意識を失ってしまった。


 しばらくすると私は目を覚ますことができた。ぱっと見迷宮の中だったため生き延びたようだった。

 あたりを見渡すと少し離れたところに別の転生者の人達がいた。どうやら私は死ぬ前に彼らに助けてもらえたらしい。

「すいません、私は助けてもらったのでしょうか?もしそうならお礼をもうしあげます。」

 ファーストコンタクトは大事ということで私は彼ら3人組のPTに話しかけることにした。

 3人とも人間のように見えたが一人だけ角が生えていた、かっこいい。

 せっかくお礼を言ったのだが彼らは少々困惑気味の表情で私に話しかけてきた、しかしその理由はすぐに理解した。

「あんたスライムに負けたのか?」

 どうやら私がスライムに負けたことがよほど不可解らしい。好きで負けたわけじゃない私だってできればスライムに勝ちたかった。

 できれば転んだ先にスライムがいて負けてしまったなどという痴態を話したくはなかったのだが、話さなければ実力でスライムに負けたことになるため恥を忍んで私は先ほどの状況を説明する羽目になった。

 そうすると男たちはとたんに笑い出した。

 「そりゃあ災難だったなあ!いやあでもスライムに負ける奴なんかにお目にかかるとはなあ」

 負けたわけじゃない、そんなことを言ったら小石につまづいて転んだ人間は全員小石に負けたことになる。

 そしてそんなに笑わなくていいのに。思わずそう思ってしまうほど彼らは笑っていた、いや爆笑していた。

 「あーすまん、すまん。お詫びにスライムの倒し方を教えてやるよ。」

 笑いすぎた3人組を見る私の目は眼力でスライムを倒せるほどに鋭くなっていたに違いない。

 少し居心地が悪くなったらしく3人組のうちの背の高くて軽薄そうな男が腹を押さえながらちょうどいいところにいたスライム(きょうてき)を使って倒し方を実演してくれるそうだった。

 やれ!スライム!その男をやっちまえ!!

 私はスライムを応援したが男が小突くような軽いけりを入れたらスライム(ざこ)はプルプルして、そしてあっけなく絶命した。一撃だ。シャボン玉より儚くきれいな散り際だった。スライムのドロップアイテムは核だったらしくころころと丸くて黒い核が転がっていた。

 スライム(かつてのライバル)だったものをうつろな目で見つめていた私は頭にある不等式が浮かんできた。

 私の渾身の頭突き<男の軽くはなった蹴り

 oh……my god!神に祈りではなく怒りをささげたい。

 

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