第46話 誤解②
謝ってきた青年に免じて一度話を聞いてあげることにした。
「ごめん、まずは自己紹介をしよう、僕は警邏隊の隊長カヌスっていうんだ、こちらの双子はジェニーとジェミー。」
青年はどうやらあの警邏隊の責任者らしい、どうりで隈がひどいわけだ……。
「ジェミーだよ、こっちのキュートな姉の弟さ」
「ジェニーだよ。こっちのクールな兄貴の妹だよ」
そして混乱しそうな紹介の仕方をしてきた双子は結局どっちがどういうことなんだ?
「こいつらは……実際の双子じゃないんだが見た通り髪の毛の長さ以外そっくりでね、だから双子を名乗っているんだ、そのせいでどっちもお互いのことを兄とか姉と呼んでややこしいんだ……」
双子の紹介の仕方が心なしか疲れている、いっつもこんな感じなのだろうか、大変だね隊長さんは。
双子は中性的な見た目をしていて髪の長さ以外は紹介通りすべて同じだ、服もペアルックで下は短パンで上は白のシャツと赤のマントを羽織っているどうやら軽装職のトレンドの格好だ。
髪は青髪で長いほうが姉で短いほうが兄なのかな、っと質問したら『その通り!』と元気良く返事が返ってこういうのって髪の長さと性別が逆だったりするものじゃないの?
「それでどういう了見で環を連れて行こうとしてたんですか?」
自己紹介も終わったことだしさっさと本題に入る、私は怒っているのだ、もう待てない。
「ああ、すべてはこちらの勘違いのせいなのだが、金髪のお嬢さん……ティアちゃんがそこの環さんに脅されてこの店を開いている可能性があったから少し調査をしに来たのさ。」
カヌスさんが話し始めたがこちらは自己紹介をしていない、環がさっと私たちの名前を告げて、カヌスさんは続きを話し始めた。
「まずなんで脅されているかって話になったかなんだけど、ひつじ喫茶の羊なんてどこにもいないから誰かが羊の格好をしてコスプレ喫茶でもするんじゃないかと疑ったところから始めないといけないんだが……」
すべて聞いてみてもカヌスの話す内容はすこし突飛もなさすぎる話だ、疑うのはいいがそれだけで判断しないでもらいたい。
「話は分かりましたが、いくら何でも早計過ぎでは?」
少しイライラしてつっけんどんな言い方になってしまう。しかしカヌスの後ろの方から双子がひょこっと出てきてフォローを始めた。
「それがそうでもないのさ」
「だって他人を脅して恐喝するなんて」
「この島では隠れて横行しまくってるからさ。」
悲しいことにこの島の治安は少しよろしくないみたいだ。
「今この島で唯一ポイントのやり取りのためにドロップアイテムをやり取りする場がここだ、そして悪いことにここにはダンジョンに潜りたがらない非好戦的な人も多くいる。」
「だからって私と環は違いますし、それに疑った理由のひつじだってほら!ちゃんとここにいるじゃないですか!」
机の上にわたあめをおきべしべしとたたく、心なしかわたあめも誇らしそうだ。
カヌスはちょっと困った顔をしてしかし言わないとこの場は収まらないと判断したのだろう、意を決して話してきた。
「羊がちゃんといてコスプレもしてないのはその通りで僕も最初は大丈夫だと思ったんだけど……ティアちゃんがあまりにも接客もひどいし、椅子にも環さんに無理やりつかされるしで逆にやっぱり何かあるのかなって気になってとりあえず紙で聞いてみちゃったんだよね……まあよくよく考えると仲良くないと逆にああはできないよね」
カヌスが本当にこれ言ってよかったのかなっていうすこし困惑した顔で言ってきた。私がだめだめでごめんなさい。スライディング土下座を披露しようとして私は立ち上がったが勢いつけすぎてこけた。




