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第45話 誤解

やだやだごねる私を無理やり椅子に座らせ、とうとう観念した私は青年と真正面から向き合った。

 髪は黒髪で典型的な日本人って感じだ。

 しかしイケメンではあるんだけど……なんか疲れ果てている顔をしている、エターナルの枕でも合わないのだろうか。

 私も旅行の時よく寝られなかったからわかる、あれはつらい。

「羊を出せるスキルなんてあったっけ?メニューでスキル一覧を見たときはないと思ったんだけど」

 青年が話しかけてきた、ちゃんと答えてあげなきゃ。

 「はい、私の固有スキルから出てきたと考えています。」

 ふーんと私の答えを聞いて青年が考え込んでいる、考え込む様子も様になっている。

 「そうなんだ、じゃあ現状僕が出す方法はないってことか」

 「羊は枕にはできませんよ、動いて寝苦しいだけです。」

 青年が意味不明な顔をしている、寝不足がたたって思考回路が働ききってないのだろう、これではイケメンも台無しだな。

 「おねーちゃんはお兄さんのスキルが知りたい理由をあなたが疲れてて羊枕をしたいからだと思ったようですね。」

 「あはは、疲れているのは別の理由があってだよ、でもひつじの枕か、気持ちよさそうだし試してみたくなるのはわかるよ!」

 環が私の頭をべしっとたたき会話のフォローを入れてくれている、相手の疲れからくる思考力の低下を見てさっと的確に言葉を足してくれる、言葉足らずの私にはありがたい存在だ。

 「仲がいいんだね、本当に姉妹みたいだね」

 そう言いながら青年は紙をさっと私のほうへ渡す、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 環はえへへと照れて笑って私のほうに一瞬で渡された紙の存在など気づいてないようだ。

 どれどれと私はのぞき込むとその紙にはこう書かれていた。『自分の意志で喫茶をしているのか?』

 ?意味が分からない。けどまあできるならやりたくないよね?

 「別に、やりたくはないですけど」

 その発言を聞いて青年は目を細める。なんだろう何かがおかしい気がする。

 「確認だ、この喫茶は君の意志でやってるわけじゃないんだな?」

 答えなくてもいいと思うんだけど、プレッシャーが答えなければいけないと私の口を動かす。

 「ええ、まあ」

 そのセリフを聞いた途端環の手に手錠がかかった。

 「こい!ジェミー、ジェニー!黒だ!」

 「え?え?え?」

 環も私もあまりのことに動けずにいる。いったい何が?

 奥から双子と見間違うような二人組がこちらに来て環をさらに拘束して連れ去ろうとする。

 「おいおい、こんな子供が犯罪とは世も末だねニーさん」

 「前から言ってるでしょう。転生者は見た目と中身は寄らないのよネーさん」

 なんだこの双子は、しかしひとつだけわかることがある、どうやら環を連れて行こうとしているということだ。そうはさせない!

 「すいません!羊毛が綿菓子の元なんです!だから異物混入じゃないんです!お願いします!」

 必殺土下座だ、これで私は夏休みの宿題を3日だけ待ってもらったことがる。

 「もう演技はいいんだよ、それよりほかに脅迫してきた人間はいないかな?教えてくれないか?」

 青年が演技はもういいと言ってきた、この土下座が演技だとばれている……だと?

 確かに私がかつて宿題をまってもらった時の土下座はスライディング土下座だった。

 しかしその時ですら本来なら長ズボンで床を滑ってやるところを半ズボンで行ってしまい、先生の前に到着する前に私はすねの所が床と凄い摩擦を起こして横転してしまい顔からこけてしまい泣いてしまった悪夢の出来事だ。

 今ここでその¨本気¨とやらを見せてしまえば私は脛と顔を両方持っていかれるだろう……この青年は許してほしければそれほどの覚悟を見せてみろというのか?

 土下座をやめ顔を上げるとそうこうしているうちに環が連れていかれようとしている光景が目に移った、目の合った環が叫ぶ。

 「おねーちゃん助けて!」

 なんでこんな理不尽な目に合わなければならないのだろうか?

 ふとすべてが煩わしく感じた私は立ち上がって目の前の青年を突き飛ばす、突き飛ばされるとは思ってもみなかったのだろう、簡単にバランスを崩した青年にさらに追い打ちをかけて床にたたきつけ追撃を食らわないようにすると私は環のもとへと走り抜けた。

 そして腰から取り出した短剣で手錠を真っ二つに引き裂くとそのまま双子から環を取り戻した。

 「ねえ、何をしたいんですか?いい加減怒りますよ。」

 環をそばに抱き寄せて双子の方に短剣を突き付けて威圧をする、2対1は不利だが……やるなら非力そうな女のほうからか?

 「おいおい、こいつ見た目に寄らずやるじゃんよ、ニーちゃん」

 「だから言ってるでしょう。転生者は見た目と実力は寄らないのよ、ネーさん」

 まだ軽口をたたく余裕がある双子はそれでも警戒の姿勢を崩さない、しかし先ほど床にたたきつけた青年にいつの間にか背後をとられていた。

 こうならないためにたたきつけたのだが……回復が早い。

 「やめだやめだ、どうやら俺たちの勘違いみたいだったようだよ、ごめんねお嬢さんたち。だから武器をしまってくれないだろうか?」

 青年が謝ってきた。双子もいつの間にかだした武器をしまってぺこりっと頭を下げてきた。なんだったんだこれは……。


 

 

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