第44話 開店 ひつじ喫茶
ひつじ喫茶開店初日の朝
今日もいい天気!喫茶店の準備を春の陽気な日差しの下で準備しながら私はエターナルの天気は一体どうなっているんだろうか?っと考え込んでしまった。
考えてみるとこの3週間雨が降った記憶がない。大丈夫なのだろうか?
フリマの広場にはもちろん屋根なんてない、もし雨でも降ろうものなら雨ざらしだ。だから雨なんか降らないほうがいいのだが今日だけは降ってもよかったのにと内心思っている。
1週間もの間あの手この手でわたあめをド根性でローブに入れようとしていた私達だが結局何も起こらなかったのだ。
私の固有スキルが発動したと思われる仮説は2つあった。
1つ目は神殿で寝てた時、あれが予知夢となり、夢での内容がトリガーとなり実際に空を飛んでしまったということ。そしてそれにはわたあめが媒体になっている可能性がるということ。
2つ目は神殿で寝たときはわたあめがでてくるという現象が起こって、家に着いた後は空を飛んだという現象が起こったということだ、さらに白昼夢をみるというおまけもついている。
1つ目は毎日のようにわたあめと一緒に寝たのだが特に何も起こらなかった。こればっかりは継続するしかないのでいったん様子見することにした。
2つ目のほうは神殿で寝てたら羊を召喚したあげく、家に着いたら空を飛び、あげく海で初めて出会った人間の白昼夢を見るという意味不明具合だ、説明してて意味わからない。
つまりもうお手上げなのだ。二人で考えていてもらちが明かない、なのでほかの人たちの固有スキルについて情報を手に入れたいと考えたのだが、ダンジョン前の広場でその手の情報を集めようとしたら変な奴に目を付けられそうだった。
ので喫茶店を開き、そこで私のスキルが羊召喚だといいそこでほかの人たちの固有スキルの情報を集めてみようという考えに至ったのだ。
接客なんて無理だよ……怖い人が来ちゃったらどうすんだよ……。
「へい客がらっしゃいだ!ご注文をきけや!」
そうこうしているうちにこわいヤンキーとおばさんの客が来てしまった。おずおずと前に出る。
「アイスティー!ブラックで!」「じゃあ俺もコーラ!ブラックで!」
私は注文を受けたとおりにドリンクとわたあめを用意し客に渡す。給仕している手が震える。
「おいこのひつじ!ふわふわじゃねえか!」
男が乱暴にわたあめを触る、いやこれはたたくといったほうがいいだろう、わたあめが心なしか苦しそうだ。
「やめ、やめてあげてください……苦しそうです。」
私はか細く抗議の声を上げる、聞いてくれてない……。
すると今度はおばさんが金切り声を上げた。
「ちょっとこの綿菓子!ひつじの毛が入ってるじゃない!どうしてくれんのよ!」
入ってるも何も羊毛そのものだ。大丈夫話せばわかってくれるはず、私はわたあめにごめんと心の中で謝ってまずはおばさんに説明することにした。
「そのわたがしは羊の毛を利用してて……」
しかしそこでおばさんに大声で遮られてしまった。
「何適当なこと言ってんのよ!客商売なめんじゃないわよ!弁償しなさいよ!早くしないと食べ□グに低評価レビュー書くわよ!」
あわわわわ、どうしよう。このままじゃあることないことかかれてこの喫茶店は閑古鳥、あげく警邏隊の人間に詐欺申請をしたと疑われて懲役1年の刑に課されてしまう。
次話からむしょ暮らしのアガスティアよろしくお願いします……つまんなそう。
「……ちゃん、おねーちゃん!」
肩を揺らされている、環だ。ヤンキーとおばさんはどこ?
「ヤンキーとおばさんは?」
環に聞くと環が呆れた声で答える。
「また?いいからコーヒー用意してよ!お客さんよ!」
どうやらネガティブなことを想像しすぎていただけのようだ。
まだひつじ喫茶の食べ□グは爆撃されてない。アイスコーヒーを用意してお客さんに渡しに行く。
お客さんはあれ?という顔でドリンクを見ている、また私何か間違えちゃったんですかね?
「おねーちゃん!コーヒーは普通のよ!アイスじゃないわ!」
さっきの変な想像に引っ張られてアイスコーヒーを用意してしまった、慌てて謝って交換すると伝えたがどうやらそのままでいいらしい。やさしい。
ドリンクはお代わり3杯まで無料なのでと喫茶の説明をしてわたあめを机の上に置く、あとは触れ合ってもらっていい感じになったところでスキルの話が振れたらミッションコンプリートだ。
だがスキルの話は聞きだすのに非常に高いコミュニケーション能力が必要となるはずだ。事前の話し合いの結果私は喫茶店担当、環は接客と情報を聞き出す担当となった。
どうせ一組づつしか入れることができないためどちらが重労働というほど偏ったことにはなってないはず……だ。
なのにだ、お客の青年はこう言ってきた。
「このひつじ可愛いけどどうやって手に入れたの?」
環が笑顔で答える。
「それはおねーちゃんのスキルで出てきたんですよ。」
「そうなんだ、じゃあそのおねーさんとお話ってできるかな?いやなに、羊が出てくるスキルだなんて気になってしまって、ね?」
環が笑顔で私を押し出して椅子に座らせようとする。
やだ!環が情報収集するって言った!しかし環の目が怖い、駄々をこねても無駄のようだった。




