第41話 不穏な情勢
「おいこる゛ぁ!てめえけんか売ってんのか!」
アクセのお店から少し離れて今度はスライム形をしたクッションを環と吟味していたらちょっと離れたところから大声が聞こえた。
嫌だわ喧嘩ですわよ、そう言って環と野次馬をしに行く、火事と喧嘩はなんとやらだ。
現場に到着、こちらは喧嘩現場となっております楽器屋さんになります。
そこら中にアイテムや楽器が転がっているからそう判断した。ん?この楽器どこかで……。
よく見たらさっき広場で演奏していた少年だ、どうやらここでも揉めているようだ。
「おまえ俺たちのシマで演奏させてやるって言ってんだろ!早く準備してこっちコイや!」
ガラの悪い男が少年を恐喝している、警邏隊の人こっちはやくきて~。
「いやだよ!昨日演奏してたら俺の選曲に文句ばっかつけてアニソンばっかりリクエストしてくるじゃないか!またリクエストするつもりだろ!」
ガラが悪いわりに要求は可愛かった?。クラッシクはまだ我々には早かったんですねえ。
「いいじゃねえか!なんも知らなくてもコシアンマンマーチくらいなら知ってるだろ!早く来て演奏シロや!」
「いやだよ!そんな曲手拍子で勝手に歌ってろ!」
なんて低レベルな喧嘩なんだ……でも体格が違いすぎる、手を引っ張られた少年のほうは結構痛がっている。
こういう時だれも止めないんだよね。野次馬の人も誰も止めようとしないし私も止める気はさらさらない、今の体じゃ返り討ちが見えてるからね。
でもまあこのくらいはしていいかな?
「警邏の人~!こっちが喧嘩の現場でーす、はやくこっちこっちー!」
大きな声で警邏の人を呼んでるふりだ。もしこれで逃げてくれなかったら帰ろう。
「うげ!てめえまじでおぼえてろよな!」
ガラの悪い男は捨て台詞を吐いてすたこらと走り去っていった。無事平和的に解決できた。
野次馬の人たちは喧嘩が終わると少年に興味がなくなったため転がったアイテムなどはそのまま放置して解散してしまった。
仕方がないので私が拾うのを手伝ってあげる。
「これで全部ですかね?」拾い集めたアイテムを少年に渡してあげる、少し手が触れて少年の顔が赤くなった、かわいい。
「ありがとう、さっき演奏聞いてくれてた子だよね、今も助けてくれたのかな?」
少年の問いにこくりと頷いて、私は自己紹介をする。
「そうだよ。私はアガスティア、ティアって呼んでね。こっちは環。」
「俺は井手直人、助かったよあいつらしつこくてさ。最近はほんとキナ臭くてやになっちまうよ。」
話しを聞いたら広場の縄張り争いといいレイドPTという新しい形態のせいでの分配の争いといい最近は転生者同士の諍い事が絶えないようだ。
「あんな連中でもまだ可愛いもんだよ、うざいだけだし実害がないからね、ティアちゃんたちも今度は助けなくていいよ、目立つことはしないほうがいい。危ないからね。」
井手君はそう言って立ち去って行った。あのガラの悪い連中ですら可愛いものとか本場の連中はどんだけ酷いんだろうか。
不穏な島の情勢になんだか嫌なものを感じつつ、それを飲み込んで環と一緒に家に帰った。
明日からは本格的に3階に進むための準備をしよう、できることからコツコツとやっていればきっと大丈夫だろう。




