第37話 作戦会議
雨降って地固まるということわざがある、次の日朝起きたとき私と環は二人してぼさぼさの頭をしていて少しだけ笑いあった。
そのあと昨日風呂に入らないでいたこともありまた起きた時間もすでに10時を過ぎていたこともあったため今日の探索は中止ということになった。
ただ今後のことを話すためまた私の家でブランチをとりながら会議をすることにした。
なぜいったん別れたかといえば、一線を越えないためだ。
「どうせ風呂に入るんだから一緒に入ればいいじゃない?」
「いやです!恥ずかしいじゃないですか。」
そう言って風呂に誘う環を置いて私は自分の家に先に帰って風呂に入った。
すっかりわたあめによって手入れされた庭でご飯の準備を終えて環と食事をとった。
「ごめんね、わたあめ~」
私は食事を始めるとわたあめをもふって慰めてあげた、友達とけんかになった後急に家の主人が外泊したのだ、さぞ心配したはずだ。
めぇ~っと気持ちよさそうに鳴いているペットを見て、こいつなんも考えてないんじゃね?って考えてしまった。
「わたあめなら夕方には爆睡してたわよ、私窓から見てたもの。」
環が悲しい発言をする、夕方って環の家に行く前じゃないか?ご主人様の帰り全然待ってねえ、こいつ!
そう言って話に上がった環の家の窓を見る、実にうちの庭がよく見える位置にお隣さんの家の窓があった、プライバシーもへったくれもあったもんじゃない家と庭の配置だった。
まああそこから超絶美麗な私の歌声が環の部屋にまで聞こえなかったらそもそも私たちは出会ってなかったかもしれない、そう考えれば結果オーライなのだろう。
「にしても家が隣同士だなんてよくわかったよね?正直知ってるものだと思ってたから教えてなかったわ。」
「歌声が聞こえてきたって言ってましたからね、それで庭から見える位置に窓がある家なんじゃないかって思ったんです。」
「あんな些細な一言からそこまで導き出せたなら上出来でしょ。」
環がほめてくれて私も鼻が高い、ハナロングだ、にょきにょき。
「さて、改めて今後どうしていくかですけど、まずは2階でポイントを稼いでスキルのレベルと装備、消耗品を充実させましょう。」
いまある情報でできることといえば2階で堅実に稼ぐことだ、環も私の提案に頷いてくれている。
「3階攻略に必要な情報や一緒に上ってくれる信頼できるメンバーを見つけないとね。」
環がちゃんと提案してくれている、よかった、嫌々付き合わせる様なものだろうがそれでも3階へ進むことをしっかりと考えてくれている。
ニコニコしながらわたあめをもふっていると唐突に環がわたあめを取り上げた。
「あ と は !おねーちゃんの意味不明な固有スキルを判明させることも必要ね?」
わたあめがめぇ~っといいながら環に絞られている、その子は悪くないんです!やめてあげて!
「でもあれから一度も発動していないんですよね、発動の条件もスキルの効果もよくわかんないんですよね。」
環の発言に私は答える、空を飛んで行ってしまったあの日以来、私たちはいつまた空を飛ぶ羽目になるかびくびくしながら過ごしていたが結局飛ぶことはあれから一度もなかった。
「一個だけ、発動の条件のようなものはわかっているわ。」
環がお茶を飲みながら答える、まさか私のスキルの一端をすでにつかんでいるというのだろうか?ゴクリ。
「わたあめが近くにいるときよ、夢を見た時も、空を飛んだ時もおねーちゃんわたあめと一緒にいたわ、きっとおねーちゃんのスキルのトリガーなのよその子。」
そう言われてみると迷宮などにはわたあめを連れて行ってないし、このひつじ最近はもっぱら庭の手入れというなの食事しかしていない、触れ合う瞬間といえば帰ってきてから庭や家の中でのスキンシップやブラッシングくらいだ。
「だから、ダンジョンにわたあめ連れて行くわよ。ただの固有スキルがわからない程度ならいいけど、おねーちゃんのはいつ爆発するかわからない爆弾みたいなものなんだから多少は検証ておかないとおちおち3階には行けないわ。」
3層は森だものね、もしそこで空を飛んで行ってしまったら……やばいね。ぷかぷか浮かんで行ってしまう私とそれを大慌てで回収しようとする顔もわからない未来の攻略メンバーを想像して私はクスリと笑ってしまった。




