第34話 知らないおじさん
それから私はあらゆる誘惑をはねのけて環を探してフリマを彷徨った。
しかし環は見つからなかった。すっかり日が昇り正午近くになってしまった。
ぐうぅ、お腹の虫が鳴る。せっかく目の前に串焼きの屋台があるというのに串焼きは一本スライムの核1個だった。私はあれすら買えないのだ……恨めしい!
するとそれを見かねたのか知らないおじさんが少し離れたところでスライムの核をみせて手招きしているじゃないか。そちらのほうへ向かう。
「お嬢さん、スライムの核持ってないんだろう?ちょっということ聞いてくれたらこれあげるよ」
なんと、この親切なおじさん少しいうことを聞いただけでスライムの核をくれるというじゃないか。私は喜んでおじさんについていこうとする。
しかし次の瞬間おじさんは吹き飛ばされた。目の前にはカツラだけが残っている、oh……。
「ティア、知らないおじさんについて行ってはいけないって教わらなかったのかな?」
吹き飛ばした人間が話しかけてきた。リゼだ、おじさんを一瞬で200mは吹っ飛ばすだなんて、怖すぎるっぴ。
「スライムの核なら私があげるわ、ほらこれで串焼きを買ってきなさい。」
リゼ大好き。
「へえ、じゃあお友達を探してここまで流れ着いてきたのね?」
リゼとベンチに座って一緒に串焼きを食べながらお互い今ここで何をしてたのか話していた。ちなみにリゼも誰かを探していたらしいが……協力を申し出たら断られた、なんでだろう。
「ここにもいないんじゃもう心当たりが無いんです……どうしよう。」
「大丈夫よ、諦めない限り運命の二人は再び出会えるわ、私もそうだったもの」
相変わらずリゼは優しい、しかしなんだろうたまーに返答が厨二めいたような、無理しないかな……?
きっと中二病発症して間もない人なんだろう。さっきからウインクしてきて可愛いし普通にしてたら惚れちゃうところだった。
「うーん、10階まで行けば神様にお願いを聞いてもらってその子の家を教えてもらうってこともできるかもだけど……」
リゼが気になることを言ってきた。
「なんですかそれ?初めて聞きました。」
「誰かが神様に聞いたんですって、10階までクリアしたら何か報酬はないのかって、そしたらお願い事を一個聞いてくれるらしいわ。」
私は好きな人の病気を治してもらうの!とリゼはうっとりした表情で言っていた。なんて優しい子なんだ。他人のためにそこまで頑張れるだなんて。
「でも現実的じゃないですねそれ、今の最大到達層は4階ですしね……」
私がそういうとリゼがとんでもない事実をぶっこんで来た。
「あら私はもう5階に行っているけど……?私、一人で挑んでるからみんなもっと先に行ってるのかと思ったわ。」
ええ、リゼさん強すぎない……?
「私に協力できることなら何でもしてあげたいけど、どこかで見かけたら教えてあげるくらいしかできないわね。
うーん、普段の何気ない会話にも手掛かりはあるはずよ、多分。彼女はなにか気になるようなこと言ってなかったかしら?」
リゼに言われて環と出会った時からの会話を思い出す。
少しだけ、確かめてみたいことがあった。
「ありがとう、リゼ。少し確かめたい場所が出来たからもう行くね。」
私はリゼにお礼を言って家に少しだけ早歩きでそこに向かうことにした。




