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第30話 エレメント

「さあ行きますよ!」

 「おー!」

 環と二人でダンジョン前で気合を入れる。今日は2階に行ってエレメントを倒すのだ。

 ダンジョンの1階はほとんどマッピングが終わっており階段の位置も最短ルートもわかっている。

 20分ちょっとかけて私たちは1階を踏破して2階への階段前までたどり着いた。

 環のほうを向く、環も私のほうを見ていた。お互いに頷いて2階への階段を上り始めた。私たちの冒険はこれからだ!

 「2階も1階とぱっと見代り映えはしませんね」

 「さらに言えばエレメントは光るからスライムよりも遠くから見つけられるよ」

 なんてことだ、まさかスライムさん以下なのかエレメントってやつは?ダンジョンヒエラルキーでスライムと常に最底辺を争ってきた私だがどうやら今日エレメントが最底辺に滑り込んだことで終止符が打たれたようだ。めでたしめでたし。

 やったぜ!なんて考えていたからダンジョンの私の仕事である索敵を全くしてなかった、これでは奇襲を受けてしまう。ちゃんと探すか。

 「あ、エレメントだ」

 しかし環のほうが先に見つけてしまった。どうやら本当に見つけやすいようだ、言われてみると松明の光ではないものが迷宮の前のほうでぼやーっと光っている。まだまだ遠くだけれど敵を認識できた。索敵要らずだ。索敵という大事な私の役目がなくなった、アガスティア、お前首だ。

 「何やってんのおねーちゃん!早く構えないと!」

 環が大声でせかす、そう言えばエレメントはスライムなんかよりすごく早くて見つけた次の瞬間にはもう戦闘態勢にうつったほうがいいって教えてもらってたっけ。

 私は背中に背負ってきた革の水筒を下ろしてエレメントに向けようとした。

 子の水筒こそが2階攻略のカギなのだ!しかし一連の動作をしていたらすでに目の前にエレメントがいた。ちょっと髪がチリチリするじゃないか!

 「あわわ、みず、みず」

 火のエレメントには水をかければ倒せるらしい。本当は神はここで魔法でも覚えてほしかったのだろうが悪知恵の働く人間がメニューから買った水をかけて倒せることを発見してしまいこの2階はだいぶヌルゲーとかしてしまった。水を核に当てさえすればこれほど楽なことは無い。

 「ちょ、あつ、あついって!近づかないで!あつ!」

 ちょちょ、まってほしい、エレメントが思ったより早くて狙いがつかないのだ。たまにかすってもエレメントの核にあたっていないため倒すに至ってない。最初に少し気が緩んでいたのは確かだがそこから先は油断なんかしてなかったのに!このままじゃパーマになってしまう。

 「ああもう!おねーちゃん覚悟!」

 いつまでたっても水鉄砲(革の水筒の飲み口をいじって水圧を強くしたもの)を当てられない私にしびれを切らした環はタライに貯めた水で私とエレメントをまとめてずぶ濡れにすることにしたようだった。それは最終手段だっていったじゃん……。

 「しくしくしく……」

 迷宮で濡れネズミになった少女が一人体育座りで泣いている。今日だけで10回は濡れたといえばいいだろうか、エレメントさんには私たちヒエラルキーの最底辺が敵うわけなかったのだ。スライムが懐かしい、スライムと戯れていたい……。

 「担当を変えましょう、おねーちゃんがタライを持って、私が水鉄砲を持つわ、それでいいね?」

 環が見かねて担当を変えようと申し出ている。環、今度はお前が濡れネズミになる番だ。

 「環さん、これ当てるの難しいですよ、気を付けてくださいね。」

 私は水鉄砲を環に手渡しながらありがたいアドバイスを授けた。10回やって手に入れた無価値な教訓だ。

 しかし環は割と自信があるらしく、こう言いかえしてきやがった。

 「おねーちゃんこそ、タライ持ったまま転ばないでね……。」

 私は歩きメニューをした時くらいしか転んだことは無いんだからね!勘違いしないでよね?

 

 

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