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第28話 並行世界の記憶?

気づくと目の前には夕日に照らされているリゼがいた。

 いや、メニューを開いて私は名前を確認してただけだ。

 家に帰ってはいなかった。あれは幻?白昼夢?

 目の前のリゼが不思議そうな顔をしてこちらをのぞき込む。あっちのリゼはただの優しい美少女だったのに現実のリゼは中二病だったのかあ。

 「名前……気に入らなかった?あなたが気に入りそうなものをつけたつもりだったけど。」

 どうやらじっと顔を見ているから誤解したようだ。

 「いいえ、アガスティア、気に入りました。ありがとうリゼさん」

 木下の幽霊よりはなんでもましだった。そうなる未来もあったかもしれないのだから名前っぽいだけでもいいだろう。

 「私……名乗ったかしら……?」

 小さくリゼが何かをつぶやいた。なんだろう?

 「ねえ、ティア?」

 やばいこの流れまた男だとばれてしまったのか?

 急いで私は立ち上がるとリゼにお別れを言ってそそくさと立ち去った。

 「行っちゃった……ティア。不思議ちゃんなのか中二病っぽいの発症してる以外はタイプな子だったな……。

 また会えるといいな、今度会うときはもっと仲良くなれるようにラテン語以外も勉強しようかな。」

 

 私は無事にマイホームへとたどり着くことができた。怪しい人影もなかった。

 しかし私の家には泣きじゃくっている環がいた。

 「環さん!戻ってきましたよ!」

 すると環は顔を上げて私を見た瞬間に私に抱き着いてきた。

 「よかった!もう二度と戻ってこないんじゃないかと……」

 そりゃまあいきなり飛んでったらもう戻ってこれないかと心配もするよね、ごめん。

「海のほうまで飛んでってしまったんだけどそこで地面に降りられて、それでここまで戻ってきました。」

 「なんで飛んでったのぉ……」

 ごもっともである、にしてもせっかくダンジョンから出て手を放してくれたのに今度は体にべったりくっついて離れない。

 本人いわくいつ飛んでっても重しになれるようにだそうだ。また空を飛ぶ前提ですか。

 「そんなに心配しなくてももう空なんか飛びませんよ?」

 そうは言ったものの今のところどうやったら空を飛ばないで済むかはわからない。

 とりあえず落ち着かせて身体から引き離した環と一緒に椅子に座る。

 「とりあえずおねーちゃんは羊没収!この子はうちでは飼えません!」

 すると私の手元からひつじを奪い去ってしまった。私のモフモフが……。

 「なんでわたあめを捨てちゃうんです?」

 「わたあめ?」

 環がごもっともな疑問をぶつけてくる。

 「その子の名前ですよ。夢で羊毛が綿菓子みたいだったのでそう名付けました。」

 環がすごく残念な目でこちらを見てくる、まあまてよ夢の通りになったんだからそれにあやかった名前にしてしまうのはしょうがないじゃないか。

 まあ私のネーミングセンスがあれなのかもしれないけれど……。

 「ちなみに私の名前はアガスティアになりました。よろしくお願いします。」

 「おねーちゃん、空飛んでさまよってたのに寝たり名前考えるだなんて意外と平気だったの?」

 とうとう環は呆れた声を隠さなくなってきた、癖になっちゃう。

 「違いますよ、飛んでる最中は寝てないし、途中で浜辺に降りたらたまたまそこにいた人に名前を付けてもらっただけです。」

 「おねーちゃんってたまにあり得ない行動力とかコミュ力を見せるよね……」

 たった二日の付き合いで私を計らないでいただきたい、初対面なら天気の話題だけで乗り切ることも可能だ。

 「で、なんでわたあめを没収しちゃったんです?」

 「だってこの子がおねーちゃんのローブに入って空に飛んだんじゃん!捨てないならおねーちゃんはわたあめと接触するときは家にロープ括り付けてから触らないとだめだからね!」

 かたや放し飼いのひつじ、かたや家に括り付けられた人間……そんなまるで私のほうがペットみたいじゃないか……あんまりだよ扱いが……。こんなのってないよ!?

 想像した絵面のダメージがでかい。くちから変な液体が出てきたぞ……。

 「ほんとに大丈夫ですよ……夢で空を飛ばなければ私も空を飛ばないはずです……。」

 環を説得しないとそのうち私はリードをつけられて行動をする羽目になってしまう、それはとても……やばい。

 「さっきからおねーちゃんは何を言ってるの?夢が云々って子供じゃないんだから……。」

 それもそうか、私は環に対して今日神殿で見た夢を伝えて、それにある程度沿って行動が起こった旨を伝えた。すると環はしばらくうなってこう言ってきた。

 「もしかしたらおねーちゃんの固有スキルは予知夢とかそういったものなのかな?だったら納得だけど。」

 「固有スキル?」

 私はオオム返しで聞いてしまう。環はため息をついて教えてくれた。

 「神様が説明してたじゃない。転生者たちにはもともと地球でも持っていた固有のスキルがあるって、今はステータスでは見れないらしいけど条件を満たせばそのうち見れるって。」

 「でも私は地球で予知夢なんて見たことないですよ。ましてや空を飛ぶことも。」

 「考えるだけあほらしいわね……。」

 考えども考えども結論は出てこなかったため私たちは諦めて寝ることにした。

 「じゃあおやすみなさい環」

 家に帰る環を私は玄関で見送る。環が少し悩んだ顔でこちらに問いかけてきた。まさか見張るために泊まると言い出さないよな?

 「おねーちゃんのことこれからどう呼ぼうか?」

 そうえば名前が決まったんだった。でもおねーちゃん呼びも捨てがたくなってきたぞ……。

「ティアって呼んでもいいけど今までどおりおねーちゃんって呼んでくれてもいいぞ☆彡」

 「……うっざ」

 バタン、とびらがしまった。明日……来てくれるだろうか……?

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