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第26話 空飛ぶβ

「ねえ!この子の名前を決めましょう!」

 家に帰るなり環はそう言った。確かに名前がないのは不便だ。

 しかしそうなるともう一つ問題がある。

 「私もないんですよねえ……」

 「ええ!おねーちゃん名前つけてないの!?」

 環が驚いている、そりゃあ私も名前を付けたかったのだが、いい名前が思いつかないのも理由にあったが、女の子っぽい名前を付けてしまうのが少し恥ずかしくて先延ばしにしていたのだ。

 幸い名前がなくて困るようなこともなかったしね……、泣けてきた。

 ひつじで癒されないと…ひつじは庭でぼうぼうの草をむしっては食べていた。もうこれだけで家に連れてきた甲斐があったわ。

 外に出てひつじを捕まえる、今のお前の仕事は庭の手入れじゃなくて私の傷心の心を癒すことなんだよ。

 「でもおねーちゃん早く決めないと大変なことになっちゃうよ?」

 環が家から出てきて私に不穏なことを言ってくる。

 「だって名前がない状態でほかの人たちが広く認知してしまった呼び名があると勝手にその名前になってしまうんだもの。東の街にはロリコンとかいう不名誉な名前になっちゃった人もいるんだから!」

 それはとんでもない、名前を決めないデメリットなんてないと思ってたがそんなことは無かった。一刻も早く名前を決めなくては!

 私はそう思ってメニューを開いて名前を確認しようとした。


  名前:木の下の幽霊

 スキル:短剣術1

 隠しスキル:隠匿2


 一瞬だけそう映っていた気がした。しかし次の瞬間


  名前:xxxxxxxx

 スキル:短剣術1

 隠しスキル:隠匿2


 メニューがぴかっとひかって私はろくに確認できなかった、こんな事一度もなかったのに。

 さらに不測の事態は続く。羊が私のローブに入っていった。その瞬間からローブが羊毛製になってもこもこと膨らみ、そして私の足は地面から浮いて行った。


 「おねーちゃん!?」

 環が驚いてこっちに手を伸ばしてくる。その手を私はつかもうとしたがそれより早く空に浮かんで行ってしまった……。アレー

 「夢で見た光景だ。」

 私はいつの間にか空に浮いてしまっていた。羊毛のローブはとても暖かく寒いといったことは無かったけど、とにかく足が地についていないのは不安だった。

 こんな非現実的な光景まさかまたみる羽目になるとは……。

 私はゆっくりと空を眺めてみた。雲が一つもない夕方の空。おかしいなここで雲が私を出迎えに来てくれるんじゃなかったのかな?

 すると服が小さくめぇと鳴いた。そうか私はすでにもう羊に乗っかっていたのか。そう思いなおし今度は海に向かってみる。

 夢の終着点には今度は私はいなかった。浜辺に座ってみる。するとローブから羊が出てきて私はそれを抱きかかえた。

 「うーん、夢の導きによってここにきたはいいけど?でも……」

 別に私は夢のように絶望なんてしてない、あの時の私は確かに何かに絶望していたはずだった。けどここにいる私はそんなものに心当たりはなくて、つまりどういうことだろう?

 ていうかなんでローブとひつじが合体して……?

 砂を踏む音がしてそちらを振り返ってみる。夢で見た厨二疑惑のあるお姉さんがそこにいた。この人も夢に従ってここに来たのだろうか?

 「そんなところで黄昏ちゃってどうしたの?」

 厨二さんがこちらに声をかけてくる。

 「夢に従ってここに来たの、あなたは?」

 私はそれにこう答える。もう意味わからないです。あなた答え知ってませんか?

 厨二さんは少し困った表情をして私のそばに座った。

 「かわいい子ね、少し抱かせてもらっても?」

 一瞬何のことかと思ったけれどひつじのことだった。わたしはどうぞと渡してあげた。

 「この子は名前なんて言うの?」

 ひつじをなでながら厨二さんはそう言ってきた。名前……まだ付けてないな。

 「まだ決まってないよ。」

 「そうなの……?候補とかあるのかしら?」

 そんなものもまだない。自分の名前すら考えて決められないのに羊になんか付ける名前なんてなおさらだ。何なら今適当に決めてもらってもいい。厨二の人はネーミングセンスがあると聞く。

 「貴女が決めてしまってもいいよ?」

 「そうなの……?うーんじゃあ……」

 厨二さんが少し悩んで口を開いた。

 「じゃあ、アリエース?」

 なんかとんでもない単語が出てきた。

 「ち、ちなみに由来は……?」

 私が名前の由来を聞くとラテン語らしい、やっぱ中二病患者じゃねーか、話が長くなりそうだったので途中で遮ってしまった。

 名前で思い出したけど私は夢の中で彼女に名前を決めてもらっていたんだっけ?

 気が進まないけどとりあえず聞くだけ聞いてみようか。

 「ねえ、私も名前ないんだけど、決めてくれる?」


 厨二さんは目を大きく見開いてぶつぶつとしゃべり考え込み始めた。やばい後悔してきた。まともな名前返ってくる気がしないよ。

 しばらく悩んだ厨二さんは私の名前をしっかりと考えてはくれたようだった。

 「じゃああなたの名前はアガスティア……でどう?」

 とりあえず夢の通りの解答が返ってきた。うーん厨二全開だね!

 まあこれで名前が決まるわけでもないしと高をくくっていたが、メニューを開くと


  名前:アガスティア

 スキル:短剣術1

 隠しスキル:隠匿2


 あれ……?さっきからメニューがおかしいぞ?

 どうやら名前が決まってしまったらしい。


 そして次の瞬間メニューが光り私にありもしない記憶が流れてきた。

 

 

 

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