第21話 スライムからの逃走②
私のそばに寄っていたスライムを蹴り飛ばして環へと向かう。
出会ってから2日……、もたってないかもしれないし情もそんなにわいたわけでもないけれど目の前で死なれるのは気分が悪すぎるだろ!
私が倒れこんでいた場所は若干環と距離があった。ナイフが手元にあればよかったのに、そしたらそれを投げて少しでもスライムに牽制を入れられたかもしれないのに。
そう思った瞬間、手に違和感を感じた。何か投げられるものをいつの間にか持っていたらしい。確認する間も惜しいのでそれを投げる。
一生に一度の幸運なのか火事場の馬鹿力なのかスライムに命中し一匹はじける。もう武器もないのでのこった2匹のうち一匹にのしかかるようにして倒す。しかしそこで私の健闘は終わってしまった。
さきほど蹴り飛ばしたほうのスライムが私の背中を強打して私は受け身をまともに取れず倒れこんでしまった。
頭がくらくらしてまともに立ち上がれない。このままじゃあ死ぬだろうなあ。
こんなに倒したのにここでおしまいなのかとか、せめて環が1匹でも倒してくれたらここまで追い詰められなかったのにと考えが巡り、最後に大声で怒鳴ることにした。
「……にげ……」
どうやら声も出ないほどの大けがをしたらしい。ちなみに逃げられないなら戦え!と言おうとした。
環がこちらを見て、そして意を決したようだ。目が先ほどと違う。なぜかはわからないけれど戦う決心をしてくれたようだ。
「ファイアーボール!」
火の玉がスライムを襲う。2匹いたスライムは瞬く間に倒されていった。
最初からこれをしてくれれば私たちはこんな目に合わないで済んだんだけどなあって思いながら私は意識を手放した。
次に目を覚ました時まだ私は迷宮の中にいた。
環には私を担いで移動なんてできないだろうし、そもそもスライムたちは人を襲うときにしか基本的に移動しない。つまりけが人を背負ってダンジョンを移動するより一か所にとどまっていたほうがよほど安全なのだ。
「ごめんなさい」
しおらしく謝ってくる環を見て一応理由を聞いてみることにした。
「どうして逃げたんですか、戦えましたよね?」
「ごめんなさい……」
「あやまるのはもういいです怒ってないですから、どうしてにげちゃったんですか?」
相手を威圧しないようにできる限り優しい口調で声をかけてあげる。
「おねーちゃん、頭から血が流れて……、もう平気なの?」
まるで話を聞いてない、泣きそうな子を相手にするのは疲れるぜ……、やれやれ、だな?。
環の頭をなでてよしよししてあげる。よく見ると私は包帯でぐるぐる巻きだ。包帯だらけの手でなでても落ち着きを少しは取り戻してくれるだろうか。




