第2話 町のくまさん
熊さんのいうことにゃちゃんときかなきゃあかん、そう思って私は神(空に浮かぶ米粒)の言ってることをちゃんと聞こうとした。
しかし神の話は端的にいって長かった。なので途中から座って聞くことにした。体育すわりだった。
座ったものだから途中から寝てしまった、神様も転生させたというならせめて万全の状態でここに呼び出してほしかった。
つまり寝てしまったのは神が悪い。
そう言い訳をして熊さんから神がすべての説明が終わった後に聞くことになった。
その時の熊さんは、信じられないものを見る目だった、呆れてるんですねわかります。私はすぐに祈れるよう待機していた。
「お前すぐ死にそうだな、つってもこれからすぐ動かなくちゃいけないから詳しくは説明できないぜ。」
寝ていた私をそのまま放置して行けばいいものをわざわざ起こして説明までしてくれるんだなんて、彼は出来た人間、いや出来た熊なんだろう。
そんなふざけたことを考えていた私は熊さんからの説明を受けて絶句をした、体が地面をういてグルグル回っているような気分が悪いそんな感じだ。
それほど衝撃的な話だったのだからしょうがない。
神が伝えたのはたくさんあったらしいが特に重要なのは
君たち4000人をわけあって召喚させてもらったこと
これから1年の間にこの島の中心にあるダンジョンを10階層突破してもらうこと
そのあと神様が運営する別の世界に行ってもらってそこで人々を導いてもらうこと
そしてその為のメニュー機能であることを告げたらしい。ちなみに説明を寝ていて聞き逃した奴のためにメニューでいつでも見返せるらしい。バレテーラ
メニューにはダンジョンで倒したモンスターのドロップアイテムを入れることによってポイントを追加することができる。
そのポイントでスキルを買ってもいいし、冒険に役立つアイテムや武器防具を買ってもいいし、食料を買ってもいい。
ただし食事はしないと死ぬらしいので生きるためには毎日少しづつポイントを消費することになる。
強くなるため、異世界で人々を導くために私たちにダンジョンに挑んでほしい神様はダンジョンでモンスターを倒す限り私たちに衣食住を提供してくれるそうだ。
ここまではよかった。まあよくはないのだが、最後に告げられたことに比べれば些細なことではあった。
ダンジョンで死んだらその場でおしまい。ちなみに死なない程度に大けがをした場合は神殿という施設があるのでそこで一晩過ごせば回復するらしい。
長生きしたかったら何かある度神殿に泊まったほうがいいなと目の前にいる熊はため息をつきながら説明してくれた。
ダンジョンに潜ってモンスターに負ければ死ぬ。けれどダンジョンでポイントを稼がないと餓死して死ぬ。つまりはそういうことだった。神殿なんか作ったんだからせめて負けた時くらいリスポーンさせてくれればよかったのにと思った。
当然ではあったが平和な日本で暮らしていて死ぬなんてこととは無縁だった私は衝撃を受けた。
どれくらい立ち尽くしていただろうか、周りを見ると熊さんはおろかほかの人たちの姿もなかった。
さっきまで私の頭がぐわんぐわんと揺れるほど「おーい」と呼び掛けていた熊さんがいたような気もしたが、さすがに反応がいつまでもなかったので置いていったのだろう。
きっと熊さん以外のここにいた人達もダンジョンに向かったに違いない。そう思うと言いようのない焦燥感をかんじて私は召喚された広場からダンジョンがあるといわれた島の中心へと駆け出すことにした。
さっきまで呆けてしまっていたのは逆に良かった。きっとこんなどんくさい私はすぐ死んでしまうだろう。
その時もしも人のいい熊が一緒にダンジョンを歩いていたらこれまでかけた迷惑の何倍もの迷惑がかかるだろうから、これでよかった。そんなことを考えながら私はまだ私自身の違和感を感じることはできなかった。