第45話
「ティア!起きなさい!」
円香が起こしてくれなかったら、きっとベットを干さないといけないほどの寝汗をかく羽目になっただろう。
少なくても現時点でも寝間着は寝汗でびっしょりとなっていた。
「おはようございます、円香」
私は少し震えながら円香に朝の挨拶をした。
「大丈夫?もう12時だよ?それにすごく魘されてた」
「うん平気」
適当に返事をするしかない私はそのまま服を脱いで着替えようとした。
「本当に大丈夫?」
やけに念を押されるが大丈夫だと言い返すと、『下に昼ご飯があるから降りてきてね』と言われた。
下に降りるとそこにはメイドがいた。
そういえばここメイド喫茶だった。
「ティア!おはよう! ご飯食べたらお皿洗い手伝ってもらってもいい?」
リゼが開口一番手伝いを要請してきた。
お店は多少繁盛しているらしく流石に円香とリゼの二人では少し捌くのは大変そうだった。
「はーい、ちょっと待っててね」
私は返事をするとご飯を探した。キッチンのところにティアと紙が貼られたオムライスがあった。
これ手作りなのだろうか。
そう考えると喫茶店ってとっても大変なのでは?
「作り貯めしたのをメニューから引っ張り出してるからそうでもないわよ?ティアも皿洗いじゃなくて料理作る?」
「火使う料理は親に止められてるからまた今度ね」
「?」
怪訝そうな円香を横目にご飯を食べて、キッチンで料理を作っている途中の円香に声をかけて皿洗いに入ることにした。
「はい、ティアのエプロンね」
私は円香に渡されたエプロンがやけにひらひらしていることに気づいた。
「観念なさい、エプロンを付けたらメイドさんの出来上がりよ」
どうやらさっき部屋で着替えた服はメイド服に見立てた黒いワンピースだったらしい。
それにひらひらのエプロンを付けたらメイドもどきの完成だ。
それを見た時私は強烈な嫌悪感を感じてしまった。
「うっぷ」
私がうずくまると慌てて円香がこっちに寄ってくる。
「ちょっと!?ここ厨房だから吐くならトイレにしなさい!?」
無理やり引っ張られていく中私は……いや僕は夢を見たせいかこの世界に来る前のことを思い出していった。
なんでできもしないことができるようになっているのか。
この世界に来てから自炊をしていたけどやけに手馴れて行えすぎた気がする。
なんで髪の毛やその他もろもろの身の回りのことができたのか。
前のままだったら1週間もしないで髪もぼさぼさで部屋もとっ散らかっていたに違いがなかった。
それにこの心からくる自分が知らない感情も……そうだ。
いつもいつも経験したことがないことに対して懐かしさや、妙なうれしさや、そして嫌悪感を感じる。
これは一体どこからやってくるのだろうか。
僕は今日の夢を思い出した。
夢の中の「私」はどんな表情をしていったっけ……。
そんなことを考えながら遠くで必死に呼びかける声を無視して私は気を失ったのだった。




