第39話 もう一人の私?
「ぎゃああああああああああああああ!」
私の悲鳴につられてジェミーも大声を出す。そりゃおんなじ人物がもう一人いたらびっくりするよね。
「大変だ! 姉さん! ティアが双子キャラの座を狙ってやがったんだ! 今すぐ来てくれ!」
いやびっくりしたのそっちかい!狙ってねえよそんな座!
「うーん、考えようによってはチャンスかもね」
もう一人の私は未だ状況がつかめない私と違ってとっとと逃げ出すことにしたようだった。
私はというと書き終わった提灯をのんきにおじさんから受け取ってしまっていた。
だって『書き終わったよ』って提灯を渡されたら対応してしまうじゃないか。
受け取ったおかげで少し落ち着いた私はしょうがないのでジェミーのところに行く。
「さっきの私? みたいなのどこ行きました?」
「ティア、君のことはいい子だと思ってたのに……こんなことになるなんて」
ダメだこいつ話通じねえや、敵意剥き出しのこいつはほっといてしょうがないので変態5人衆に嫌だけど聞くことにした。
「負けたよ、まさか警邏が双子戦隊を組織してたなんてね、今日のところは帰らせてもらうよ」
ダメだこいつら話通じねえや、5人で円陣を組んで相談した結果がこれなのか?この島にはろくなの居ないんですかね?
とぼとぼと立ち去っていく彼らに話しかける気が起きなかった私は静かに見送ることにした。
すると彼らと反対のほうから小走りでかけてくる音が聞こえ振り返ると円香とジェニーが此方に向かっているのが見えた。
「おーい! ティアが分裂したってホントー?」
「ええ! 戦隊はどうなったの!」
どうやら2つ目のメッセージを円香に見せてないらしく私が二人に増えたことは初耳らしい円香にさっき起こったことを説明した。
「じゃあさっきすれ違った子供、もしかしてティアだったのかもね」
どうやら私の分身は島の中央、東地区の商店街に当たる場所に向かって走っていったそうだ。
早く捕まえないとどうなるか分かったものじゃないんだけど、この暗がりの中人ひとり捕まえるのは不可能じゃなかろうか。
「多分あの調子で走っているならスキルを使えば余裕で追いつけるよ」
そういうとジェニーは『エンチャント! レビテーション・リンク!』と魔法を唱えると私とジェニーの二人が空中に浮き始めた。そんな了承もなしに!
「ティアは右見といて、私は左見るからさ」
ジェニーにそう言われて私はじたばたしてた手足をだらんとおろしてあきらめて周りの景色を見ることにした、空を飛ぶのは2度目だ、大丈夫怖くない。
夜空の静寂は、まるで時が止まっているかのようだった。空気は冷たいけど、風も音を立てることなく遠くの木々の木の葉を揺らすたびに聞こえる程度だ。
空を高速で移動する代償に風に当たるってこともなさそうだった。
「あ! ティア、あそこぽつんと光ってるあの光! あれじゃない?」
ジェニーが指をさす方向に提灯の明かりが移動しているのが見えた。
この時間に島の中心に向かう人なんてそういないだろう。
「下で走ってる二人にも伝えたよ!3分くらいで追いつくんじゃないかな? でも私達で先回りして捕まえよう!」
なんか自分の分身ながら走ってるスピードが遅くて泣けてきたわ。




