第35話 逃亡
「いやー、一時はどうなることかと思ったけど何とかなったね!」
セーフティエリアにたどり着いてしばらく私たちは地面に突っ伏して体力の回復に努めていたがもう平気なのだろうか、すでに元気を取り戻した双子が魔王とリゼに絡んでいた。
「マジで勘弁して……」
「……」
魔王は抗議の声を上げるも力ないしリゼにいたっては手を振ってシッシッと追い払うだけだった。
「でもさあ、こんなことになったのはリゼのせいなんだし、そこはさ、わかってるよね?」
双子がリゼを両サイドから囲って何か話し込んでいる……。
しかしそれをみたカヌスさんが双子の頭を掴んで引き離した。
「おい、お前たちがこいつらを仲良くする策があるっていうから今日は任せたが、これがそうか?」
カヌスさんが聞いたことないくらい低い声で双子に詰問している、ちょっと怖い。
その様子に双子はビビったのか知らないけど大きく手を振って弁解を始めた。
「さすがに森が燃えるのは予想外だよ!」
「皆で苦難を乗り越えたら仲良くなるかなーって思っただけさ!」
そういわれるとそれ以上はどうしようもないのかカヌスさんが苦虫をかみつぶした顔をして双子を放す。
双子をぽいっしたカヌスさんはこちらに振り返ると未だ休息をとっている私たちに『そのままでいいから』と言いながら話しかけてきた。
「まあいい、ところで皆1つ決めたいんだけど、今日はここで野宿になってもいいかな?」
一体全体どういうことだろうか、私としては早く家に帰って休みたいのだが?
「ここまで大事になった以上、燃えた後の森を何も調査しないで帰るのは無しと考えてほしい。つまり明日もこの層を探索しなくちゃいけないんだけど……」
カヌスさんの歯切れが悪いが要は家に帰って戻ってをやるくらいならここにとどまったほうが体力的には楽かもしれないってことかな?
「でもここ、本当に安全なのかな団長!」
「ダンジョンで寝泊まりなんて正気の沙汰じゃないよ!」
双子がカヌスさんの言いたいことをフォローしつつ話を進めていく、いつもこうしろよ。
「本当にセーフティエリアが安全なのか、それも調査のうちに入っていると考えてもらえると助かるかな……、ここにとどまるのは少し危険が伴うけどね」
確かにここ燃えてないから安全そうだけど、本当の意味で安全なのかまだ分かったものじゃないね。
エリアの外をチラ見すると其処ら中が燃えて焼野原状態の今は非常に見渡しもいいし検証日和かもしれない、好意的に考えればだけど。
「じゃあ僕らは周りを探索してくるよ、だんちょ」
「もしかしたらドロップアイテムやなんらやたくさん落ちてるかもしれないからね!」
なんていうかあの双子、まじめに働くときといたずらするときのギャップ激しいんだなあ、と考えながら私は走りつかれていたのもあって一眠りしてしまった。
しばらくして『ご飯だよ』と円香に体をゆすられながら起きた。
なんだか頭がすごく重い、こんなところで寝たせいかな?
「その髪型すごいね……」
するとちょうど外から探索を終えて戻ってきたカヌスさんが絶句している。
私は手鏡をつかうとあら可愛い!編み込みクォーターアップ、右はサイドテール、左は髪で薔薇まで仕立て上げられている始末だ。
ってそんなに髪長くねーよ!
横についてるのは全部つけ毛だった、どっからこんなもの調達したんだ……。




