第28話 PTが3個
ダンジョンの入り口に着くと、他のメンバーがすでに待っていた。魔王とリゼの間にはまだ微妙な緊張感が漂っているが、私の妄想と違い間にカヌスさんが毅然とした態度で居てくれるためちょっとだけましだった。
それにくらべ双子のジェニーとジェミーはPTのことなんて気にする様子もなく、いつものように元気に振る舞っている。
「おーいちびっこ2人組、こっちこいよー」
木の下で涼んでいる魔王がなんか呼んでる、普段なら行かないけど今の私はスライムレベルでぐでんぐでんなのでその呼びかけに答えた。
「おーこっち来るとか珍しいな、まあ座れ」
魔王が呼つけておいて言いたい放題だ、抗議のため顔をふいっと横方向に向けておく。
「いいか?俺たちは今日一緒のPTになりはしたが、ダンジョンの中までは一緒に行かねえ、理由はわかるな?」
魔王が真剣な顔で内緒話をする、なにか考えてきたのかな?見直したぞ魔王。
「しかーし!俺から言っても却下されるに違いない!ので!円香!任せたわ」
ずこー、私は他人任せのヘタレ魔王に思わず姿勢が崩れた。肩に手を置かれた円香も苦笑しとるわ。
「しょうがないわね……、私もPTの雰囲気が悪いのは嫌だしそれとなく提案はしておくわ」
「んーいいよ」
カヌスさんも自分のあずかり知らぬところでPTメンバーが増えまくっていたことに思うところがあったのか、円香からのPTを分ける提案をあっさり承諾した。
カヌスさんの後ろでブーブー文句をつけている双子を無視して私はこれからのPTメンバー争奪戦争を勝ち抜くべく、ここに集まった人たちの中でPTを組むべき人を吟味することにした。
「りおっち、今日の日替わりランチうんこ味のカレーか、カレー味のうんこかどっちだと思う?」
「どっちでもねえ」
「なんでわかるんだよー」
「勘」
あいつらは論外だ。会話が終わってる。
アホ2名を横目で見つつほかのメンバーを探す。
双子はいつの間にかリゼに絡んでそのまま空に吹っ飛ばされている、ダンジョンの6階くらいまで攻略しそうだな、近寄らないようにしよう。
ってなるともう候補はないも同然なんだけど……。
「どうやって分けるんですか?」
「紅蓮団3名、双子と僕、君らとリゼさんが妥当かな?」
そうこうしてる間にカヌスさんと円香がPTの内訳を決めてしまった。
まあ、最悪のパターンではないだけましといえる。
「僕は頑張って双子を見張っておくから、君たちの探索結果に期待しとくね」
そう言ったカヌスさんの少しやつれた顔とは対称に双子は『ひさびさにだんちょーであそべるぞー!』と歓喜に満ちた顔で全身で喜びを表していた。
「じゃあ皆、今から2、3時間後、お昼になったら3層入り口に集合しよう。そこで休憩しながら情報交換して、午後に怪しいと思われる場所を偵察することとしよう。なので!怪しいところを見つけたらマップの位置を記憶しておいてその場では絶対近づかないようにしてくれ!頼んだよ!」
カヌスさんが今日も1日ご安全にと特に双子を見ながら、いや凝視しながら私たち皆にも一応念押しした。
「じゃあ行きましょ」
円香とリゼとPTを組んで3階へつながる石碑に触って私たちはダンジョンの探索にとうとう乗り出したのでした。




