第一話 異世界への召喚
「えー、本日はお日柄もよく、故人あらため君たちが私の世界、エターナルに転生したことを心よりお祝い申し上げます。」
私は空に浮かぶよくわからない人がそんなふざけたことをしゃべっているのを、聞き流しながらぼーっと考え事をしていた。
目があまりよくないため米粒くらいにしか見えないのだがあそこから声がする。気がするだけだけど。
一体全体何が起こったのだろうか?いまは物思いにふけることに頭を使うことよりもせっかくこの状況について話しているよくわからないやつの話を聞いて内容を理解することに頭を使ったほうがいい、そう感じていながらも私は考えることをやめられなかった。
さっきまでチェーン店でイカ墨のパスタを食べていて、そして今日は奮発してデザートにアイスを頼んでいたはずだった。
パスタはすでに食べ終わっていてアイスがあともう少しで届きそうなところだったのだ。
こんなところに来てしまう前に最後の晩餐としてアイスが食べたかった。
そんなことを考えていたら隣の人が急にステータスウィンドウ(仮)のようなものを目の前に出し始めた。
ステータスウィンドウと心の中で唱えてみたが出てこない。音声認識ではないことは周りの人たちが発音した後それを取り出してないことからわかるのだが……
何も話を聞いていなかった私はステータスウィンドウ(仮)は出せなかったので恥を忍んで隣の人に聞いてみることにした。
「すいません、それっていったいどうやったら出せるんですか?」
なんだか声の調子がおかしく、しゃべりずらい気がする。
しかしそんなささいな違和感なんて頭の隅に追いやらざるを得なかった。
隣にいる人、いや人だと思ってた生物は熊さんだったのだから。ガルルルルッ
熊語を習っていなかった私はもちろん死を覚悟した、手を胸の前で組み祈りをささげた。最後の晩餐がイカ墨パスタなのかぁ。
できれば痛くないてほしいな。などと神に対して祈りをささげていたところそれが通じ目の前の熊はあきれた声でしゃべり始めた。
「おいおい、話聞いてなかったのか?っていうかなんで目を閉じて祈る?なんでだ?」
私は話を聞いていなかったことを正直に告げて目の前の熊に食われそうだから来世ではアイスが食べたいと祈っていたことも告げた。
「お前、人の話聞かないやつなんだな、ここに集まった奴らは全員日本人だ。だから食わねえよ。」
どうやら日本の山に住んでる熊さんだったらしい、よかった。
などということはなくこの熊さん明らかに人を何人も食い殺してそうだったが前世が日本人でそして熊に生まれ変わってしまっただけらしい。
よくよくみたら洋服を着ていた。〇二クロの服だ。ギャップがはなはだしい。
顔だけでなく全体を見てみるとどちらかといえば熊の顔をした毛深い人のような感じだった。獣人というべきだろうか。
私はその時初めて周囲を見渡してみた、たくさんの人がいるらしい、けれど周りの人間が背が高すぎて自分の周りしか確認できなかった。
私の周囲の人は熊さん以外全員人間だった。代わりと言っては何だけど髪の毛がカラフルだった。赤だったり青だったり、黒髪の人はいなかった。
「話進めていいか?メニューウィンドウは心の中で念じたらでてくるぞ。それでな……」
ステータスウィンドウのようなものはアイテム、スキル、ステータスポイントを複合的に管理するメニューのようなものだった。
簡易的な説明をしてくれたこの熊さんはかなり優しいのだろう。と思っていたら次は説明しないからちゃんと空に浮かんでいる神のいうことを聞けと凄まれた。
怖すぎて私はまた祈りのポーズをする羽目になった。次話しかけたら殺される。とんでもない奴の隣にきちゃったぜ。
熊さん「飛んでもねえ奴の隣にきちまったぜ」