腕のキズ
VeGamerについて語りたい#184
70:名無しのVeG民
【悲報】筑紫みや、内なる力が溢れる
71:名無しのVeG民
右腕の古傷はもう完全に包帯巻いてるそれ
72:名無しのVeG民
右腕に傷アリであのエイム!?
73:名無しのVeG民
つまり俺たちは、けが人よりエイムが悪い……ってコト?
74:名無しのVeG民
毎日感謝のbot1万体撃ちやらないと
75:名無しのVeG民
訓練場の主でもやらんわそんなこと
76:名無しのVeG民
横槍いれるけどさ、ezが出た世界大会の最後、腕でガードしてたよな
77:名無しのVeG民
なにそれkwsk
78:名無しのVeG民
2位だった奴がチート疑惑ふっかけてリアルファイト勃発。殴りかかってきた相手の拳を腕でガードしたところで生放送中断
79:名無しのVeG民
探せばまだ映像残ってるで。一応は1位2位が日本人っていうすげえ世界大会だったから。
80:名無しのVeG民
前世確定、今回は早かったな
81:名無しのVeG民
これって本人が認めたってことなんかな?運営的にまずくない?
82:名無しのVeG民
つぶやきが消えてないってことは運営もノータッチってこと?
83:名無しのVeG民
明言はせずに匂わせ程度だから大丈夫なんかな
84:名無しのVeG民
萎えるわ、なんか
85:名無しのVeG民
前世バレ程度でなえるやつまだ生きてたんや
86:名無しのVeG民
このスレルール読まずに紛れ込んだ迷子さんかな?
87:名無しのVeG民
とりあえず、運営と筑紫自身の発言待ちかな
❍✕△❑
身バレだのなんだのっていうのは、意外と需要があるものだ。そういった情報サイトが消えないのが、何より物語っている。
『筑紫さん。さすがに無視できないレベルになってきました』
「そうですよね。マネージャーさん的にはどうしたらいいと思いますか?」
『そうですね。何も言わない、触れないことでしょうか』
「まあ、そうですよね」
『……不服そうですね』
「すみません。言われっぱなしは嫌な性分で。ただ、運営側に迷惑をかけるつもりもないので、何も言わないようにします」
『助かります』
人の噂も七十五日と言う。しばらく騒げば、いずれ静かになるだろう。
と、私もマネージャーさんも思っていた。
『筑紫さん、あの……すみません』
「いえいえ。こうなる可能性を考えてはいたので」
掲示板から発生した私の前世の情報は、新人Vtuberとは考えられないほどの可燃物となった。FPSの実力に納得したなどの意見もあれば、大会等には出ないで欲しい、前世バレについて話してほしいなどの否定的な意見もある。酷いものでは、デビューを取り消してプロゲーマー界隈に帰れなんてものもある。
『運営側としてもコメントに困っている状況です』
「そうですよね。でも、このままではマズいですよね」
最近では私以外のVeGストリーマーのコメント欄まで荒れてきた。営業妨害レベルとまでは言わなくとも、ストリーマーの中には私に関する話題をNGワードに指定して微炎上してる人もいる。
「私からコメントを出さない限り、このボヤ騒ぎが収まるとは思えません」
『ですが、前世の存在を認めるというのは、さすがにVtuber運営として認可できませんよ?』
「認めなければいいんですよね?私がezであると明言しなければ」
『……この場合、仕方がありません。しかし、くれぐれも直接的に言わないでくださいね』
通話を切って、ふうとため息をつく。これは、私の静かな戦いだ。
❍✕△❑
「はい、おはようございます。画面と音、問題ないですかね?」
<わこつ>
<待ってた>
<見えとるで~>
「はい、大丈夫みたいですね。それでは今日も初めていきたいと思います」
今日は少し前にリリースされた、5対5のタクティカルシューターゲームをプレイする。キャラの固有能力と純粋な撃ち合いの力の両方が必要で、競技性はとても高い。
「えー、このゲームを配信するにあたって先に言わなければいけないことがありまして」
<なに?>
<つよつよ期待>
<vcの件かな?>
「コメント欄にもあるとおり、ボイスチャットの件ですね。なんとか設定ができたので、私自身が味方のボイスチャットを聞くことはできるんですが、その音を配信にのせたり、私がvcで話したりということができないんです。そこだけは予めご了承ください」
<まあ、しゃあないな>
<vcなしだとキツくない?>
<一応、チャットとかピンとかでなんとかなる>
「そうですね。少し手が忙しくなりますけど、頑張ってみます。ランクもできれば回したいですね」
タイトル画面をクリックし、そのまま射撃場へと入る。初めて触れるゲームということもあって慣らしが必要だ。
「こういう武器購入制のFPSをするのは久しぶりです」
購入画面を見て、だいたいの銃を触ってみる。裏でかけている音楽が鳴り止み、ほんの少しの間、射撃音のみの配信になる。
<無言で草>
<似たようなゲームやったことあるなら期待だな>
<てか何歳だよ、ゲームやりすぎだろ>
<そりゃ永遠の18歳よ>
<ソレ以上はいけない>
集中して無言になったからか、コメント欄同士で会話して騒がしくなる。
「すみません、ついこういう練習だと無言になっちゃうんですよね」
配信者として無言の時間というのはよろしくない。しかし、もう少し撃ち感を慣らしたいので、練習を止めたくはない。
私はおもむろに視聴者数を見て、十分な人数が集まっていることを確認する。
「ウォームアップはもう少しかかるので、この間に雑談でもしましょうか」
例の件に関するコメントもちらほら見えてきたので、ちょうどよいだろう。
「実は先日のですねぇ……『右腕がー』というツイートが物議を醸し出してるらしくて、厨二病だとか言われてるんですけどね?実は本当に怪我したことがあって、それが原因で一時期ゲームができなかったんですよね」
<ほんまに古傷だったんか>
<ゲームできないってやばくね?>
<どんな怪我?>
「簡単に言うならば骨ですね。ヒビがはいっちゃって、利き腕だったので大変でした」
<ezって骨折だっけ>
<確定ezで草>
<引退理由判明ってかんじ>
普通の心配コメントにまぎれて流れてくる前世に関するコメントを流し見しつつ、話を続ける。
「おかげで長い時間ゲームをすると、たまに腕が痛むんですよね。この怪我で夢も諦めることになりましたし」
<大事にしてもろて>
<夢?>
「世界一のゲーマーになりたいって思ってた時期がありまして。ただ、怪我でゲームができなかった期間のせいで感が鈍りましてね」
<まるで大会に出てたみたいな言い方だな>
<ガチのプロゲーマー志望とは恐れ入った>
<まだ目指せるんじゃないの?最近は選手年齢も上がってきたし>
「いやいや、さすがに無理ですよ。練習も前ほどはできませんし」
<前はどれくらいやってたの?>
「どれくらいですか……。えっと、多分寝て食べて以外の時間ほとんどですかね」
<学校にも行ってもろて>
<授業中もゲームしてたってこと?>
「さすがに中学までは計算して休んでましたよ?」
<中学までは>
<高校……>
「……えっと、私まだ高校生です」
<設定ではね?>
<ダウト。昔のゲーム触りすぎ問題>
<何歳?>
「次の話題に行きましょうか!何か聞きたいですか?」
高校生というのは本当なのだが、年齢の話はNGだ。全日制に通っているわけでもないので、信じてもらえるとも思えないし、触れぬが仏である。
その後は、当たり障りのないコメントだけを拾って質問に答えていった。でも、さすがにゲーム遍歴やゲーム内設定の質問が多すぎたので、そっとマネージャーさんに相談チャットを送っておいた。
「さて、それじゃあ試合に入ってみましょうか!」
大体の感覚は掴んでから、私はPLAYのボタンを押した。




