一度も海へ行かないサーファー
この作品はフィクションです。登場人物は特定の個人をモデルにしたものではありません。
とある有名人の話。
彼はタレントとして有名になり、そこそこ売れた。
しかし、己の不祥事が原因で芸能界を引退する。
その後、SNSで名声を集め、そこそこの知名度を誇るようになった。
情報商材にも手を出し、成功を収めていたようだ。
彼の成功を羨んだ多くの人がお金を払ってコミュニティに参加。
毎日のように豪遊するさまをSNSに投稿する。
しかし……ネットの匿名掲示板で、彼の行動がおかしいとささやかれ始める。
きっかけはサーフボードだった。
彼が毎回SNSに投稿するサーフボード。
仲間に囲まれて楽しそうに映る写真。
どうも腑に落ちないと、とあるユーザーが掲示板に書きこんだ。
彼のサーフボードは特徴的で、有名デザイナーに頼んで制作したもの。
一度見たら忘れられないようなインパクトがある。
彼が○○浜へ行ったと書き込んだ翌日、会ったことがないと地元のサーファーが書き込んだのだ。
騒ぎが大きくなったのは、その数日後。
匿名掲示板の書き込みがブログに転載され、さらにSNSなどで情報が拡散。動画サイトや画像投稿サイトにも飛び火。
最終的にネットニュースに取り上げられるまでになった。
それでも彼は沈黙を守り、淡々とサーフボードの写真を投稿し続ける。
途中で引いたら負けだと思ったのだろう。
しばらくして彼は海外へ逃れた。
世界のあちこちを転々としつつ、写真の投稿を続ける。
さすがに海外までは追跡できないと肩を落とすネット住人たちだったが、意外なところでぼろがでる。
目撃されてしまったのだ、日本国内で。
それも、よりによって週刊誌に。
彼はコンビニに酒と煙草を買いに行く様子をすっぱ抜かれてしまった。
記事の煽り文句は『一度も海へ行かないサーファー』
瞬く間に嘲笑の的となった。
さて……諸君らは彼がどうなったと思うだろうか?
実は、この後がちょっと怖い話。
彼はその後も投稿を続けたのだ。
サーフボードと共に映る自分の写真を。
コミュニティの会員は減少したが、一定数下がったところでキープを続けている。
いまだに数千人の人が彼を支援し続けている。
多くの人が彼の嘘を暴いた。
それでも彼の嘘を信じ続ける人がいる。
いったい何故なのかは分からない。
信じる者は、たった一人の男を救う。
今日も彼はその人たちのために虚構を映す。
一度も使われたことのないサーフボードと共に。