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同性フラグは遠慮したいんですけど

 スピアゴートの肉は料理屋で重宝される。つまり、これを持って行けば、リカーナさんの好感度アップ確定なのだ。

 名目上、コペル君がパーティーのリーダーになっている。それでも俺のポイントも上がり、もう少しでEランクになる。


「お前等、どんな手を使ったんだ?低ランク二人でストーンボアまで倒すなんて」

 冒険者ギルドの職員が疑いの眼差しを向けて来た。それだけ異例の事なのだ。


「そこは企業秘密ってやつで。次の依頼を決めてきますね……コペルさん、どれにしますか?」

 出来れば山以外での仕事が良いです。


「モブさん、アイテムボックスを使えますよね……これを受けても良いですか?」

 コペル君が持って来たのは、青い森亭の依頼……これはもう偶然で済まされない。まさに運命だと思う。


「剣苺ですか……取り方は分かりますから、採れる場所を調べておかないと駄目ですね」

 にやけそうになる顔を抑えながら、答える。


「場所は僕が知っているので……それじゃ、明日の朝ここで落ち合いましょう」

 コペル君と別れて向かったのは、大衆浴場。汗臭いまま女性と会うのはマナー違反である。

 アイテムボックスからボディーシャンプーとシャンプーを取り出し、身なりを整える。

(リカーナか……ちと高望み過ぎないか?向こうから見たら、お前はただのおっさんなんじゃぞ)

 ウキウキ気分でいたら、ベーロウが厳しい現実を突きつけて来た……リカーナさんは十九歳、しかもかなりの美人である。

(ゆ、夢くらい見たって良いだろ!)

 歳の差カップルは結構多いんだぞ。なにより動く前から諦めるのは、駄目だと思います。

(夢より現実を見るんじゃ!お前、もう三十過ぎてるんじゃぞ)

 まだ二歳しか過ぎていないもん。四捨五入すれば三十なんだし……夢見たって良いじゃん。

 適当にぶらつきながら、気になった食堂に入り晩飯を済ませる。


「ご馳走様。美味しかったです」

 食い終わったら、即退散。ちなみに大概の食い物は美味しく頂けるタイプだ。

(忙しないの。もう少し休んだら、どうじゃ?)

 文化というか育ちの所為だろうか。俺は飯を食べ終えて、長く居座るのが苦手だ。ゆっくり一服とかありえない。


(飲食店にとって回転率は死活問題だからな。デートならともかくおっさんの一人飯なんて、早いに越したことないだろ)

 桜や夏音を飯に連れて行くと、長くなるんだよな。俺が先に食い終わってスマホを見ると夏音が“マナー違反だ”って怒る。

 おっさんが会話に加わる方がマナー違反だと思うんだけども……最近桜と夏音の事を思い出す事が増えた気がする。

 頭の中で、桜達との想い出を回想しながら一路青い森亭へ。


「これはじゃ……ボッチさん、ご苦労様です」

 おかしいぞ。あれだけフラグを立てたのに、リカーナさんの姿が見えない。


「いえいえ、今日は珍しい物が手に入ったんで持って来たんですよ。スピアゴートの肉です」

 もしかしてフラグが立っていたのは、主人の方?……ない、ない。


「スピアゴートの肉?やはり、邪神騎士様のお陰だったんですね。ありがとうございます」

 リカーナさんが出て来るまで、粘りたいけど流石にそれはキモい。今日は大人しく帰ろう。


 ◇

 時間はまだ早い。体感では夜の八時くらいだと思う。コペル君もいないし、ここから大人の時間だ。

 ようやく永年の夢が叶う。


「すいませーん。ビール下さい。つまみはチーズとサラミで」

 前に来た時は年齢の関係で入れなかったけど、今は堂々と酒場に入れる。

(酒ならさっきの店で飲めば良かったじゃろ……お主、青い森亭で酒を飲ませてもらえると期待していたんじゃな……ないわー)

 ……勘のいい剣は嫌いだよ。流れ的にリカーナさんがお酌パターンもあると思ったのに。

(うるさい。酒場の方が情報を拾えるんだよ)

 やばい。これはテンションが上がる。運ばれて来たのは木製のジョッキ、雰囲気満点です。でも温いので、魔法でキンキンに冷やしておく。


 ビールを飲みながら、周囲の話に耳を傾ける。

 上司の愚痴に嫌な客の話……なんだろう。異世界なのに大衆居酒屋に来た感じがする。


「しかし、ヨーキャの餓鬼も困ったもんだな。気に入った女を自分の物にする為なら手段を選ばないんだぜ」

 ……って事は、リカーナさんの前にも被害者がいたのか。身分制度が厳しい国だけど、胸糞が悪い話だ。


「今は青い森亭の娘を狙っているんだろ。部下も増長する一方だし……早く領主様の耳に入らないかな」

 大丈夫、邪神騎士の耳には入ったから。

(さてどうやってミーさんにアポを取るか……ランクを上げるまで、ソーレが大人しくしていれば良いんだけど)

 いや、その前に青い森亭が潰れたら意味がない。それにソーレを追い払っても、客足が戻らなきゃ依頼は失敗だ。

 昔は魔物や悪者を倒せば、そこで終わりだった。アフターフォローまで気にする様になったのは、リーマン生活の所為だと思う。


 ◇

 待ち合わせ場所に来たけど、コペル君が来ない。いきなりレベルの高い魔物と戦ったから自信を無くしたんだろうか?


「良かった。ここにいたんですね」

 現れたのはコペル君じゃなく、鍛冶屋のおっさん。かなり走り回った様で息が乱れている。


「どうしたんですか?」

 二度目の転移で野郎としか絡めていない気がする。


「お願いです。コペルを助けてやってください。コペルがソーレに連れられていったんです。貴方にしかお願い出来ない事なんですよ」

 コペル君がソーレに?一体なにがあったんだ?

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― 新着の感想 ―
[一言] お?w そろそろオジサン切れるかな?(期待)
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