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陽キャに絡まれる邪神騎士

 Fランクが受けられる依頼は、かなり限定されている。畑でのゴブリン退治とか近場での薬草採集などだ。高ランクの冒険者パーティーに加入するって手もあるけど、俺の立場上それは避けたい。

(怪しまれない為にもゴブリン退治でもするか……青い森亭からの依頼だと?条件はアイテムボックスを使える事……剣苺ソードストロベリーの採集か。あれ、傷みやすいんだよな)

 なんて運が良いんだと思ったら、受注資格がEランク以上である事でした。


(それでどの依頼を受けるんじゃ?採集に行って強い魔物を倒せば、ランクを早く上げられるぞ)

 ベーロウがテレパシーで話し掛けて来る……そう言って、また修行させるつもりなんだ。簡単に騙されるおじさんだと思わないでね。


(畑の番兵は疲れるし、正体がばれる危険性が高い。オークをニ、三匹倒せばランクを上げられるもんな)

 まあ、運よくオークと遭遇出来ればの話なんだけどね。


「おい、おっさん。その年で新人なのか?はずかちいでちゅねー」

 二十代前半位の青年が絡んできた。装備を見ると戦士なんだと思うけど、剣や鎧に無駄な装飾が多い。


「よせよ。俺達の強さに圧倒されて、なにも言えないみたいじゃん。」

 派手なローブを着た魔法使いが嘲笑っている。居酒屋で大学生に絡まれた時を思い出してしまう。派手な服装にちゃらい態度、こいつ等は陽キャだ。


「そんなキモいおっさん相手にしていないで、早くオーク退治に行こうよー」

 ……君、神官だよね。ピンクのローブにミニスカって、キャバ嬢かと思ったぞ。露出多めの服=キャバ嬢とか言うとセクハラおじさんとか言われるんだろうな。

 この時期にあの恰好でオーク退治……大丈夫なんだろうか?


「待ってよ……仲間が失礼な事を言ってすいません」

 深々と頭を下げて来たのは、アーチャの青年。さっきの奴等と違って好感が持てる。おじさんが花丸あげちゃいます。


「気にしていないから、平気ですよ……お友達が待っているみたいだから、早く行った方が良いですよ。それとおじさんから一つアドバイス。お友達、地味な恰好に着替えさせた方が良いですよ」

 あのパーティーがピンチに陥っていたら、この子だけ助けてあげよう。


(思いっきり気にしているではないか。若い頃は怖い物知らず……まるで誰かさんみたいじゃの)

 いや、俺はもう少し礼儀正しかったぞ……まあ、彼等を叱れる程、品行方正ではなかったけど。


(装備の手入れが行き届いていたのも、足回りがしっかりしていたのも弓使いの子だけだったな。鍛えれば良い弓使いになると思うぞ)

 まあ、あのパーティーにいたら、成長は難しいと思うけど。


 ◇

 ……ここ冒険者ギルドだよな。混んでいるのに若い女の子が受付けしている所にわざわざ並ぶなんて、お前等は会社帰りのおっさんか。

 ちなみに俺はキモいと思われるのが怖くて、若い子がいるレジは避けるタイプです。


「すいません。薬草採集の依頼を受けたいんですけど」

 俺が選んだのは、ごついおっさんが受付けしているカウンター。どう見ても元冒険者で、色んな情報を持っていそうだ。


「受け付けたぞ。何か質問はあるか?薬草の見分けは付くのか?」

 この依頼に関してはない。だって、この薬草には凄くお世話になったので、見間違う事はない。


「薬草は前の仕事で取り扱っていたので、大丈夫です……ただ、青い森亭の依頼の事でお伺いしたい事がありまして……」

 これぞリーマン生活で鍛えた交渉術。上司や顧客に鍛えられたお陰で、今では土下座もへっちゃらだ……頭を下げて解決するんなら、いくらでも下げてやる。


「それはEランク案件だぞ。Fのしかも新人のお前が受けられる依頼じゃねえ」

 取り付く島もない態度だ。この人は信頼出来る。応募者がいないからって、実力に見合わない依頼を許可していたら、死人が続出してしまう。


「いえいえ、依頼を受けたいんじゃないんですよ。実は青い森亭の主への言伝を預かっているんですが、兵士に追い返されて会えず仕舞いなんです」

 嘘は付いていない。預かったのは言伝じゃなく、木片だけど。

 俺の話を聞いた職員は大きな溜め息を漏らした。


「あいつは騎士ヨーキャの息子なんだけど、青い森亭の娘に一目惚れしちまってな。仕事そっちのけで通い詰めているんだよ」

 なんでも二人の時間を楽しみたいからって、他の客が入るのを邪魔させているそうだ。日本だとネットで叩かされそうな話だけど、この国では騎士の権力が強い。面と向かって非難出来る庶民はいないと思う。


「父親は何も言わないんですか?邪神騎士様と一緒に戦った方だと聞きましたが」

 でも俺はケメン・ヨーキャなんて奴しらないんですが。


「邪神騎士様と一緒に戦ったって言うが、ヒュドラ退治の時に荷運びをしただけだっての……全く領主様が忙しいのを良い事に、好き勝手しやがって」

 あの戦いで王様は頭を悩ませた事があった。褒賞をやろうにも土地がないし、金にも限界がある。

 だからあげる物がない奴には、民に感謝する様に命じたのだ。この者共は命懸けで戦った名誉の士だ。感謝せよと……人は褒められたら嬉しい。でも、褒められ続ければ、それが当たり前になってしまう。

 ケメンは息子ソーレに俺との逸話を自慢しまくったんだろう。結果、鼻の伸びまくった勘違い小僧が出来たと。


「一緒にいたガラの悪い奴等は、ヨーキャ家の兵士なんですか?」

 ヤンキーみたいな態度だったけど、装備は兵士の物だった。


「正確には兵士の次男や三男だ。その中でも出来の悪いのが、ソーレにくっついてるんだよ。周囲もトラブルに巻き込まれたくないから注意も出来ず、調子に乗りまくってんだ」

 大体の事は分かった。それじゃ邪神騎士様おじさんが責任をもってきついお灸をすえてやるとするか。

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