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邪神騎士は大人気?

 どうしよう。領都チュチュール、行きたくない。馬車に揺られながら、俺がピューラファイでどう思われているか聞いてみたんだけど……。


「邪神騎士様は今でも人気者ですよ。うちでも数多くの邪神騎士グッズを取り扱っていました」

 グッズか。今までの話から察すると昔俺が使っていた装備とかだと思う。当時の俺は装備を黒一色で統一していた。ベーロウは黒龍だから元々黒かったけど、鎧や盾も黒をチョイス。

 そして孤高の騎士を気どり、ニヒルなキャラを演じていた……素の俺はいじられズッコケキャラなんだけどね。


「グッズなんて大袈裟な、剣や鎧のレプリカでしょ?」

 そりゃ、ザンサーラ商会の奴等もコスプレおじさんだって思うよな。


「とんでもございません。邪神騎士グッズは多岐に渡っております。お守りに名言集、邪神騎士人形に邪神騎士クッキー。ありとあらゆる邪神騎士グッズが出回っております」

 なんでも邪神騎士とつければ、どんな商品でも売り上げが上がるそうだ。

俺が関わっていた店も人気らしい。常宿にしていた宿屋は邪神騎士マニアで連日満員との事。


「その前に俺のグッズを売ったら、まずいんじゃないんですか?俺を守護しているのは、セリュー様ですよ」

 セリュー様は邪神と恐れられ、ピューラファイでは信仰する事を禁じられている。

ピューラファイの国教は、太陽の女神ソレイユを崇めるソレイユ教。そのソレイユ教の連中が、セリュー様を蛇蝎のごとく嫌っているのだ……真実を知ったら、どんなリアクションするんだろうな。


「……サークレを救ってくれたのは、間違いなく邪神騎士様です。説教だけして何もしなかったソレイユ教の連中は何も言えませんよ。何より王様が“邪神騎士は、俺のダチだ。あいつの功績を後世まで伝えるのが、せめてもの報いだ”そう言って騒ぐソレイユ教の司祭を黙らせたんですよ」

 相変わらず熱いな。俺のパーティーは……。


戦士カイル・ピューラファイ 種族は猿人。当時ピューラファイ王国第二王子で、俺が日本へ戻る前に王位を継いだ。俺と同い年で親友といえる存在だ。


神官ライネ・ルイネ 種族は猿人。カイルと結婚したから今はお妃様。カイルのお付きの生真面目な神官。ライネさんの回復には何度助けられた事か。


魔法法使いアイリーン・エリャ  種族はエルフ。確か冒険者ギルドの会長になった筈。パーティーの知恵袋的存在で、俺の魔法のお師匠さんでもある。パーティーを組んでいる時は、無鉄砲なカイルと俺をいさめてくれた。師匠に独身だとバレると雷を落とされると思う。


重戦士ギーノ・ジョーノ 種族は鬼人、現ジョーノ商会会長。鬼人なだけあり力が強く、とにかく頼もしい存在だった。ギーノの兄貴、俺まだ独身です。


スカウトミー・カーゲ 種族は猫人。確か王宮騎士になった筈。猫人だけあり、とにかく動きが俊敏。そしてスカウトだから、手先が器用。優しくお姉さんみたいな人だった。


そして邪神騎士おれ。現サラリーマン(平)独身……俺以外みんな出世してるんだよな。


「王様公認で、どんなに使っても手数料は取られない。当の本人は異世界にいるから、許可はいらないし、真偽の確認も出来ないと……そりゃ、使いたい放題になるわな」

 なにより今は名言集の中身が気になる。リアル中二病発言録を朗読されたりしたら、深酒確定である。


「森を抜けましたね。馬を休ませたいので、馬車を停めますよ」

馬車の中を漁ってみたら結構な額の金が出て来た。馬と現金は退職金って事で薬師さんに渡そう。


「カイ、こやつはどうするつもりじゃ?会長と同郷では、実家にも帰れまい」

 ベーロウの言う通り、薬師さんは無断退職して、現在無職。ザンサーラ商会に帰れば、死は免れないだろうし。


「邪剣様ありがとうございます。悪霊にそそのかされたとはいえ、悪事に加担したんです。当然の報いですよ」

 さて、どうしよっか。このままだと、ザンサーラ商会に狙われる危険性がある。あの手の連中は、権力者と繋がっている可能性があるから危険だ。


「ジョーノ商会の経営はどんな感じですか?」

 ジョーノ商会の会長になったギーノの兄貴には、前回召喚された時もとてもお世話になった。あの頃でも大手だったから、今でも残っていると思うんだけど。


「ピューラファイだけじゃなく、サークレ全土に支店を持っていますよ。凄いですよね」

 収納空間から紙とペンを出し、手紙を書く。

ザンサーラ商会を潰すのは簡単だ。悪事を調べて、怒気術をぶっ放せば良いだけ……でもそれをしたら、路頭に迷う従業員や損害を被る取引先が出て来る。

金に対抗するには金の力が必要だ。


「これを持って行って、ジョーノ商会の会長を訪ねて下さい。あの人なら悪い様にしない筈です」

 ギーノの兄貴なら、ザンサーラ商会を買収とかして被害を最小限にとどめてくれるだろう。なによりザンサーラ商会でもジョーノ商会には、うかつに手を出せない。薬師さんの安全を確保するには、うってつけの場所なのだ。


「どうして、ここまでしてくれるんですか?」

 同じサラリーマンだからってのもある。でも、これは俺の為でもあるのだ。


「王様、ギルド長……前に召喚された時にお世話になった人は大勢いますけど、みんな簡単には会えない人ばかりです。それにいきなり訪ねていっても、怪しまれるだけでしょ。そろそろ出発しませんか?」

 ザンサーラ商会が来る前に、ここから離れたい。


「そうじゃな。ここで分かれるとしよう……カイ、修行の再開じゃ!」

 確かに別々に動いた方が安全だけど……ベーロウに抗議するも受け入れられず。証拠隠滅の為、悪趣味馬車はアイテムボックスに仕舞っておいた。

 

やっとチュチュ―ルに着いた。もう全身筋肉痛で辛いです。

宿屋探しを兼ねて、チュチュ―ルを散策する事にしたんだけど。まさか、こんな事になっているなんて……。


「あれはキングオーガを倒した時の装備じゃな。あっちはヒュドラを倒した時の装備。カイ、随分と人気者じゃな」

 ベーロウの言う通り、昔の俺と同じ格好をした奴がそこら中にいた。あの漆黒の鎧って、汚れが目立つからお勧めしませんよ。


「お土産屋も邪神騎士尽くしかよ。一回しか泊まっていない宿屋が常宿みたいな謳い文句だしているし……これは正体を隠さないと面倒な事になるな」

お土産屋では、邪神騎士クッキーや邪神騎士ワインが売っている。

 俺が泊まったことがある宿屋はまだ良い方で、邪神騎士が足繁く通っていたとされる娼館まであった……あの頃の俺は童貞だったんですが。

ちなみにお土産屋に飾ってあった俺の似顔絵なんですが、全然似ていませんでした。だって、お土産屋の邪神騎士、凄いイケメンなんだもん。美化し過ぎだって。

(無料で許可もいらない広告塔なら、嘘をついてでも使いまくるよな)

 ベーロウを持っていても目立たないのは、有り難いけど。

 ブラブラと歩いてみたら、色っぽいお姉ちゃん達と遭遇した……ここは娼館通りらしい。


「娼館か……もう通える歳じゃろ?儂は宿屋で待っているから、行って来ても良いんじゃぞ」

 昔は興味津々だったけど、、今はパスだ。


「そんな金ないって。先に依頼主のとこに行くよ」

 金がないし、病気も怖い。何より本当に邪神騎士が通った娼館なんて看板を掲げられそうで怖い。


 お目当ての食堂は、直ぐに見つかった。

「ここだよな……開いているんだよな」

 名前は青い森亭……俺の故郷から、パクったんじゃないよな。見た目は小奇麗な食堂なんだけど、開店休業状態だ。


「宿を見つけて、もう一回来てみるか?」

 今俺が持っているのは、カーターさんからもらった銅貨だけ。飯代になるかもしれないけど、全額使う訳にはいかない。


「そうだな。買い揃えたい物もあるし……なんか売れる物あったかな」

 出来れば売って目立たない物が良い。でも鑑定使われると異世界にほん産ってバレるしな……待てよ、あれならバレても平気だ。


「ベーロウ、俺に鑑定偽装魔法を掛けられるか?」

 上手く行けば当分の生活費を稼げる。宿代は必須だし、ベーロウのメンテナンスに使う道具も欲しい。

 今の体力だと金属鎧はきついから、頑丈な革鎧も買っておきたいし……娼館に行く気はないけど、もしもの為にデート代を確保しておきたい。


「どの程度の偽装を掛ければ良いんじゃ?」

 あまり作り込むとかえって怪しまれる。この世界にはネットどころか、電話もない。個人情報を確認する術がない。


「そうだな……ルーベ村出身の農夫って事にしてくれ。」

 ルーベ村は昔ヒュドラ退治の時、長期滞在した事がある。のどかな村でみんな優しかった。あそこなら又行きたい。


「ルーベ村か……懐かしいの。ほれ、完成じゃ」

 相変わらず、規格外な剣だよな。カーターさんからもらった銅貨で、革袋を購入。収納空間から黒いハンカチを取り出す。

 そして向かう先は買い取りもしている道具屋。


「これは昔邪神騎士様から頂いたハンカチです。家宝として大切にとっておいたのですが、まとまった金が必要になりまして」

 道具屋の店主は訝しんだ顔で俺を見ている。多分似た様な奴がよく来るんだろう。


「この世界じゃ邪神騎士様関連は偽物と思えって言葉があるんだぜ。そして俺の鑑定はSきゅ……おい、本物じゃねえか!」

 うん、それ本人おれのだもん。出産祝いのお返しでもらった高級ハンカチです。

 きっと鑑定結果はカイ・クラコのハンカチと表示されている筈……邪神騎士時代の物ではないけど、嘘ではない。


「おいくら位になりますか?」

 あの時確か一万は包んだから、銀貨三枚にはなって欲しいな。日本円に換算すると銅貨が大体千円、銀貨が一万、金貨が十万って感じだった……筈。

 後は百円や十円に相当する石貨ってのもあったけど、そこまで下回らない筈。


「ソレイユ様の保証もついているし、なにより保存状態が良い。金貨五枚でどうだ?これはうちの看板商品になるぜ」

 まじか……お祝い送っておくもんだな。それとソレイユ様、お気遣いありがとうございます。


「飯食いに行きたいんで、細かくしてもらえますか?さっき、青い森亭って店があったんですが、評判はどうですか?」

 青い森亭の名前を出した瞬間、店主の顔色が変わった。


「怪我したくなきゃ、あそこは止めておきな……ほれ、金だ」

 怪我をする……どんな食堂なんだ?

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