Chapter-67
結婚3日目の朝。
「どうだった、お2人さん♪」
私、キャロは、朝食の準備を待つリビングで、ニヤニヤしながら2人に声をかけた。
「その………………すごかった」
「あ、ああいうものとは……はい」
2人は顔を真赤にして、私から視線を逸してしまう。
ま、結婚の当日の夜、文字通りの「初夜」は、当然と言うか、正妻である私が独占した。
それが大変だったのよねぇ、アルヴィンは前世でも経験なかったって言うし、現世でも当然初めてでさ。
当たり前だけど、私も初めて。
まぁ、初めてにしては……うん、丁寧にやってくれたと思うわ、正直にね。
私は、言われてるほど痛くなかったんだけど……
出血が思ったより多かったらしくて、アルヴィンが取り乱しちゃったのよね。
実を言うと、私も、それを見て、パニック起こしかけてたんだけど……
アルヴィンがあんまり取り乱すのものだから、なんか途中から私が吹っ切れちゃって。
「ええい、こんなもの、どうってことないわよ、大丈夫だから、続きしなさい、続き!」
とか、色気もへったくれもないこと言っちゃったのよねぇ
まぁ、それがあって、アルヴィンも落ち着いたみたいで。
その時取り乱した事を除けば、概ね紳士的だった……と思う。
アルヴィンは、なんか、初めて同士でうまくいくのは、虚構の中の出来事だけ……とか思ってたらしいけど、うーん……
私は最後の頃は痛みも引いちゃってて、もう逆に必死なアルヴィンを微笑ましく見てた。
もちろん、場合によっては、結果が残ることもしちゃったわけだけど……
それも含めて、私にとっては、まぁまぁ、の初夜だったかな。
それで、なんか私が切った啖呵、廊下まで聞こえちゃってたみたいで。
「なかなかのリードっぷりだったようですわね」
「さすがキャロ、いい度胸してる」
とか、昨日の朝から昼にかけては、ミーラとエミに、散々からかわれた。
というわけで、今朝は、そのお返し。
昨晩は、序列夫人同士ってことで、エミとミーラが、一緒に相手したみたいなんだけど……
昨日の今日でそんな事やって大丈夫なのかしら、とは思っていたんだけど、結果的にそれが良かったみたい。
というのも、エミが、私とは逆に、出血はあまりないんだけど痛みが激しかったらしくて。
ミーラがそばについていて、介抱? してあげるような感じで、なんとか致すことが出来たんだとか。
「なんだか、キャロの話聞いて、油断してた。あんなに痛いとは、思ってなかった」
まだ異物感が残るっぽいらしい動きをしながら、エミは言う。
「私自身はそれほどでもなかったんですが……」
ミーラは、少し困ったような感じで言う。
ミーラは、痛みも出血も、ほどほど、だったらしい。
極端な私とエミの後だったから、アルヴィンもだいたいどうすれば良いのか解ってたみたいで、意外とすんなり致せたとのこと。
もっとも、ミーラ自身がそうされたように、エミが介添?してくれたらしいけど。
「まぁ、でもこれで、文字通りするべきこともしたんだし……」
「ん」
「ええ」
私が言うと、エミがこくんとうなずき、ミーラが苦笑する。
「結婚したゃったのねぇ、私達……」
なんかうっとりしちゃう……
良いのかなぁ、こんなに幸せで。
「んー……キャロ、幸せそう」
「エミは……違うの?」
私をじーっと見てくるエミに、私は問いかけた。
「もちろん、今はすごく幸せ……」
あ、エミにしては珍しく、なんかうっとりした表情してる。
それなら良かった。
「それは良いことです」
「そうは言うけど、ミーラは?」
「え」
穏やかな猫っぽい笑みをしたミーラを、私は振り返って、問いかける。
私の傍らで、エミもコクコクと頭を上下させている。
「それは……その、幸せに決まってるじゃないですか」
ミーラは、少し恥ずかしげにしつつも、口元の笑みを隠さずに、そう言った。
「うん、うん。みんな幸せ。それでいいじゃない」
私は、腰に手を当てて、うんうんと頷きながら、笑って、そう言った。
「こんな美少女……いや、美人の嫁さん3人ももらって、オマケに陞爵か……こんなにトントン拍子で良いのかな、って思っちゃうんだけど」
朝食の席、アルヴィンが苦笑しながらそう言った。
「美少女でいいわよ、アルヴィン」
わざわざ言い直したアルヴィンに、私はそう言う。
「そうですね、アルヴィンからすれば小娘のようなものですし」
「いや、小娘って、そんなことはないけどね?」
ミーラの言葉に、アルヴィンは苦笑しながらそう答えた。
ちなみにリリーさんとジャックは別の場所で朝食を摂ってもらってる。
今日の夜までは、新婚気分、ってことで、家族4人で過ごすことに決めた。
「それに──」
アルヴィンが苦笑したまま言う。
「最近じゃみんなに元気づけられることの方が多くて、どっちが精神年齢大人なのやら」
「そんな事ありませんよ、アルヴィンは、立派にみんなの、心の支えになってます」
少しきまり悪そうなアルヴィンにミーラがそう言った。
「ただまぁ、こうトントン拍子だと、ちょっと、以前言った言葉がなぁ、やってること違うじゃねぇかって話になるんじゃないかなと思ったりはするんだよね」
「以前言った言葉?」
私は、アルヴィンの言葉に、軽く首を傾げる。
「ひょっとして、ユリアとルイズのこと?」
エミが、気がついたようにそう言った。
「うん、まぁ、あの2人には、自分でのし上がれ、とか言っといて、結局自分はホイホイ出世しちゃってさぁ、良いもんかねと、ちょっと考えるんだよね」
アルヴィンは、きまり悪そうに笑って、そう言った。
「じゃあ、今からでも、あの2人を妾にするとか、序列夫人に加えるなり、する?」
「いや、そう言うのは考えてないよ」
あら。
ちょっとは動揺するんじゃないかと思ったけど、アルヴィンはさっぱりとそう言った。
「以前さ、最初に受勲の推薦状をブリュサンメル上級伯に書いてもらった時、勲功を割るのも自分でやれ、って言われただろ」
「ああ、言われてたわね」
「私は……初めて聞きますが……」
「そういうことが、前、あった」
ああ、そうか、ミーラは知らない話なのね、これ。
エミが、それを説明する。
「ミーラと出会う前のやる気のないアルヴィンで、授爵を渋っていたら、上級伯にそう言われた」
「なるほど……」
「でさ、今回の陞爵も、エンシェント・ドラゴンの時はミーラいなかったら全滅してたし、サラマンド・ドラゴンもみんなで倒したろ? だから、俺が陞爵を受けて、皆を引っ張り上げる、こうするのが筋なんじゃないかと思ったわけ」
「なんだ、意外に割り切っちゃってんのね。心配なかったみたいだわ」
アルヴィンの言葉に、私は穏やかに笑いながらそう言った。
エミもこくこくと頷いている。
「何を言っても今更だろ、だったら、今はきちんと皆を守って、皆を幸せにする。それが俺の、努めじゃないかと思ってね」
アルヴィンは、私達を指差すようにして、そう言った。
「うん、それはありがたいし、こうなった以上、そうしてもらうつもり、でもね……」
私は、そこまで言って、一度、エミやミーラと顔を見合わせる。
「私達も、アルヴィンを幸せにするつもりよ」
「前世で苦労した分、現世では、しっかり幸せになってもらう」
「現世では、アルヴィンの心の安寧が傍にありますように」
私達が、口々に言うと、アルヴィンは、照れたような顔をしつつも、満更でもないように、笑った。
「なんか、一本、とられちゃったかな。でも、まぁ、そういうことだから、皆、改めて────
「──よろしく」




