「第零幕︰Prologue」
タイトルはだじゃれ。ろーふぁんたじーな作品を創りたかったんです。
テンポ良く更新していきたいと思っています。ぜひお付き合いくださいませ。
「日脚伸ぶ 煤一筋を 後れ毛に」
暗く冷たい夜を進むきみへ。どうか、あたたかな陽の下で春を迎えられますように。
影を繰り 一章
浮遊する。
――それは大きな優しさを伴って――
浮遊する。
――それは全てを包み込むように――
浮遊していた。
――それは彼を浮遊させて見せた――
意識が明瞭になる。
ぼくは、浮いていた。
浮いていないと思っていたわけではない。今、たった今になって、ぼくが浮いているという事が実はとってもおかしな話なんだと気付いたところなのだ。
あたりを見回してみる。やはり、みんな浮いている。いつから一緒だったとか、そんなことはまるで気にしていなかったから覚えていなかったけども。ああ、これはぼくのせいか。
それにしても、これはなんだろうか。
まわりに居るのはぼくとたいして年の変わらない子ばっかりで、なんなら学校で見た子だって居る。でも誰も気がつかない。ぼくが、ぼくたちみんなが、こうして浮いていってるってのにさ。
ほんとさ。みんないる。みんな。
みんな。みんな。みーんな。
…なんだろうか。
安心、してないか?ぼく。
おかしなものを見てるはずだ。おかしな目にあってるはずだ。なのに。
みんなここにいるからだろうか。そうだ、ここにはみんないるんだったね…。
――「大丈夫だよ、みんなでおなじところに行くんだ」――
――「大丈夫だよ、みんなであなたを導いてあげるわ」――
ことばが。
ことばが、あたまの中をまわる。ぐるぐる、ぐるぐる。それはもうぐるぐるぐるぐるしてるんだ。
あたたかくは、ない。ないなぁ。おかしいな。
でも、それでいいんだろうな、たぶん。分からないけど。きのうなら分かったきがした。
――「さぁ。いこうよ。」――
――「さぁ。行きましょう?」――
あはは。
れ、れれ、わらってる。なんでかな
ふかふかのべっと
あたかいふとん 。はいる みたいな
いっしょだよ みんな 、ねむ
みんないっしょなの。
いま なんじねむ
そろそろ、ねるじかん だから
たす、け
「極めて有意義な投資だとは思わんかね?無為に生き、本来無尽蔵に使い捨てられるような朽ちゆくだけの歯車を、私はこうして人類に奉仕できるだけの素材に作り替えてやっているのだ。」
昏く、どこまでも広がる夜の世界。
流れゆく人の営みの、そのことごとくが眠りにつく月明かりの中に、突如としてそれは現れた。
雲を裂く天蓋は月光をも飲み込み、渦を巻く紫影は無垢なる魂を絡めて逃さない。
天蓋に座す男はただただ夢見心地に、ここには居ない誰かへ向けて、決して届かない言葉を投げかけ続ける。
「ねぇ、せんせいは何を言っているのかしら?だれと話しているのかしら?」
「さてね。僕たちにそれを考えるおしごとは無いよ、イヴ?」
「あら、そうだったわ。ごめんなさいアダム?」
おもむろに、男が立ち上がる。今宵も時間が来たようだ。
男は夢を与える聖人でもなければ、善人を誑かしては悦に入る悪人でもない。
運命として、手段として、夜が訪れては餌場に繰り出す。
そんな、獰猛な魂喰らいに過ぎないのであった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は緊張感のかけらもない主人公登場シーンです。お楽しみに。
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