目覚め
起き上がって辺りを見渡すと、美しい花の咲いた木が周囲を囲うように並んでいて私はその下の芝生に寝ていたようだ。中央は綺麗に土が均された広場だった。広場の外ではどこまでも続く黒い地面とそれを挟むように様々な色や形をした建物が立ち並んでいた。すると、黒い地面の上を荷車が駆け抜けていった。
「今のは一体…馬もいないのにどんな馬車よりも速く、どうやって?」
どこもかしこも不思議な光景に囲まれているが、一旦冷静になって記憶を辿ってみる。
「私は確か村で魔物の襲撃から唯一生き延びた。それから街に向かおうとしたが、飛龍の大群に襲われていた街と共にブレス攻撃を受けた。」
『よし、ちゃんと覚えている。』
しかし、あんな攻撃を受けて死なない筈がない。なのに生きている、どういう事だろう?ふと自分の体を見ると下着姿になっていた事に今更ながら気付いた。周りの光景に気を取られ過ぎて自分の状態を把握するのが疎かになってしまっていた。
武器や鎧などの装備はなくなっており、よくよく見ると魔力までも完全に失われていた。しかし、体には傷一つなく疲労感などの異常も全くなかった。私の知っている世界ではないし、死後の世界に来たのかもしくは異世界に生まれ変わったのか、そうでもなければこんな事はあり得ない。
そんな事を考えたが、私のすぐ横にさっきまで持っていた財布もあった。中身を確認すると、持っていた通りの枚数の金貨や銀貨が入っている。妙に現実的な部分もあった事に違和感を感じた。
『ここは一体どこなのだろうか…』
不安に怯えて頭を抱えていた。すると、
「あ…あの…」
どこか聞き覚えのある声が聞こえ、見上げると不思議な服装をした男性が目の前に立っていた。
プロローグの延長みたいな話になってしまいましたが、ご了承ください。