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第5話 別荘にて

「うはー、でっけえー!」


 アカリちゃんが別荘を見上げて言う。本当にとても大きくて立派な別荘だ。お屋敷って感じ。


「結構したからねー」鍵を開けながらそう言う、世界ランカーのビロウドさんは、どこか誇らしげに見える。「さ、中にどうぞ。皆の泊まる部屋に案内するよ」


 外観通り広くて高いエントランスホールの、大きな階段から二階に上がると、客間に面した通路はすぐだった。


 一人に一部屋与えられた部屋に入ると、私は荷物をベッドの上に置き、窓を開けた。外の空気を吸い込みながら、んんーっと伸びをする。胸を満たす空気、緑に囲まれた景観、そして小鳥たちのさえずり。なんて心地いいんだろう。普段はとても味わえない感覚に、身も心もすっきりした気分になれた。


 さて、念のため荷物の確認をしておこうかな。まぁ忘れ物に気づいたところで、今更どうしようもないけれど。


「おーい、シロー!」


 窓の外から、私を呼ぶ声が聞こえる。荷物を開けていた手を止めて窓から顔を出すと、隣の部屋の窓からアカリちゃんが身を乗り出していた。……ってかなりがっつり身を乗り出している。危ない危ない。


「大丈夫だって」アカリちゃんは大きく息を吸った。「……はー。……ここ最高だな! 空気が旨いのなんのって! こんな自然に囲まれた場所にこんな立派な別荘建てられるなんて、世界ランカーパねぇわ」


 それは確かに。


「危ないですよアカリ」


 後ろから声。振り向くと、ミドリコちゃんも自分の部屋から顔を出していた。


「何々、皆でおしゃべりしてるの?」


 今度はアカリちゃんの向こうの部屋から、アオイちゃんが顔を出した。


 そのまま談笑していると、不意に下から声をかけられた。ビロウドさんだ。


「皆楽しげね。もう準備はいいの?」


 私たちは一度顔を見合わせると、はいと答えた。いつの間にか、ミドリコさんの向こうの部屋の窓から、クロナちゃんも顔を出していた。ビロウドさんが、うんと頷く。


「じゃ、皆自分のデッキ持って降りといで。プレイルームに案内するから」




「それじゃあ着いて早々だけど、まずみんなの今の力量を見せて貰おうかな」


「どうやってっすか?」


「それはもちろん」ビロウドさんは親指でくいっと、背後のエンカウンター・スフィアを差す。「一人一人私と手合わせだ」


「そう来なくっちゃ」


 アカリちゃんはずいぶん嬉しそうだ。世界ランカー――世界で活躍するトップクラスの人と、こうして手合わせが出来る機会なんてそうないだろうから当たり前か。


 ――私は正直、怖いなぁ。こうして面と向かってるだけで、ビシバシとヤバイ感じが伝わってくるし。


「じゃあ皆で、私とやる順番を決めてちょうだい」


「よっしゃ、じゃあ総当たり戦で勝ち星の多い順に……」


「却下です。ビロウドさんと手合わせをするまでにどれだけかける気ですか」


「冗談だって」


「じゃんけんで勝ち抜けた順でいいんじゃない?」


「そうですね」


「じゃあやるか」


 アカリちゃんが拳を構えると、私たちもそれにならう。


「最初はグー。じゃんけん……」




 じゃんけんの結果、アカネちゃん、アオイちゃん、クロナちゃん、ミドリコちゃん、私の順番になった。


「じゃあ一番手、行かせて貰うぜ」


 アカリちゃんはぐるぐると腕を回すと、腰のホルダーからデッキを取り出した。


「あ、ちなみに私は、ガチのデッキじゃなく昨日色々縛り考えて組んだデッキで戦うから」


 ビロウドさんもホルダーからデッキを手にして、そう言った。


「なんだ、ちょっと残念……って言うのは生意気っすかね」アカリちゃんは苦笑して頭をかいた。「ところで、縛りって例えばなんすか?」


「んー、レア以上のカードとか、今のガチデッキに入れてるカードの禁止とかかな」


「それは結構な縛りっすね」


 確かに。レアカードなしの縛りだけでもかなり厳しそうだというのに。私のデッキからレアカード抜いたらとても戦えない……というか、勝ちに行けない。まぁ私は、まだ初心者だから当たり前かもしれないけれど。


 世界ランカーともなると、高校生にそのくらいのハンデを与えても勝てるのだろうか。


 二人はそれぞれスフィアの前の椅子に座り、システムにカードを読み込ませる。私たちも観戦モードで二人の戦いを見るために、スフィアの前に座る。


「ハンデ貰ってることなんで、倒す気で行きます。よろしくお願いします」


 アカリちゃんがぺこっと頭を下げた。


「ふぅん、まぁかかってきなさい」


 ビロウドさんは自信に満ちた表情を見せる。はっきりと、プレッシャーが増した。おっかないなぁ。


 カードの読み込みが終わり、二人はスフィアに手を置いた。私たちもそれにならう。


「アカリちゃん、頑張って!」


 アオイちゃんの激励の言葉に、アカリちゃんは片手をあげて答えた。


「さ、行こうか」


 ゲームが始まる。私は、もう大分慣れた、スフィアに心が取り込まれるような感覚を覚えた。

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