VSカカシ君
ミレーヌがお辞儀をして消えた草原にぽつりとカカシ君と二人っきり(?)というこの状況。現実時間じゃログインしたときは20時くらいだったからチュートリアルの無駄な時間も合わせても大体ゲーム内時間で丸一日はカカシ君と二人っきりという事になる。
「とりあえずカカシ君、スキルの犠牲になってくれ。とはいっても欲しかったスキルはもう手に入れちゃったしsteebenのスキル構成は短剣二刀流で補助に投擲があったくらいだったはず。スキルレベルがリセットされるならこの辺はすでに習得してると考えていいか、というか会得済みスキルは見れないのか」
メニューをざっと眺めてみるとスキル一覧があったので開いてみる。
【格闘】【暗殺術】【即死】【短剣】【二刀流】【投擲】【採取】【罠】【状態異常耐性】【大剣】【剣術】【範囲増幅】【火魔術】【回復魔術】【回避】【弓】【毒合成】【薬合成】【合成剣】【解体】【強靭】
ふむ、見事にPTプレイするにはいまいちなスキル構成だ。まぁ、ランキング載るために激選した結果という言い方もあるが。何を隠そうこの私こそがレベルと討伐数ランキングに名を載せたsteebenなのである(ドヤァ)。……ランキングに名前を載せるのに必死過ぎて交友関係が少なかったのはあるけど……。背に腹は代えられないと割り切るしかない。
なんかイラっと来たのでカカシ君をぶん殴る。あれ…?さっきまで一撃で首がポロリと落ちたのにそのままぴんぴんしてやがる。
「さては暗殺術取られた腹いせにHP設定いじって消えやがったなミレーヌめ……」
こうならやけくそだ、首が取れるまで殴ってやる。
-----
2時間近く殴り続けてるのに一向に折れる気配が無い。
「くっそカカシ野郎めぇ!」
勢いをつけてぶん殴る。
【悪足搔き】を習得しました。
「うっるせぇ!チュートリアルの敵が死なないくらい硬いって詐欺だろ!こうなりゃGMコールを…ってGMコール無いって言われてんじゃん!」
えー…2時間もぶん殴っても壊れないカカシとあと22時間くらい一緒に居なきゃだめなの……。あ、ログアウトして時間潰すって考えは無い。OLOの基本は死なない時にレベル上げってのが基本だから。経験値入らないらしいからここじゃレベル上げってよりスキル習得ってことになるけど。
さてこれだけ殴っても習得できたのが【悪足搔き】って謎スキルだけだってことはこれ以上は無駄なんだろうな。殴ってる途中でメニューを確認しけど今のところ、インベントリは開けない、ステータス割り振りできない、スキルポイントがないからスキル振りもできない、GMコールが無いから文句も言えない、とナイナイずくし。あるのはミレーヌがいたときに折りまくったカカシ野郎の頭がどっさりと。折ったら生えてくるんだもん、しょうがないじゃん。今じゃ頭の数も増えないけど。
カカシの頭をムンズと捕まえてお手玉をしてみる。
「カカシのあったまがひーっとつ、ふたーつ、みーっつ………」
カカシの頭は見た目より軽くふわふわと綿のように軽くしかし、しっかりと飛ぶのでとてもお手玉がしやすい。
「………ひゃくろーく、ひゃくなーな、ひゃくはーち」
お手玉ってここまで多くするものじゃないと思う。というか全力で投げなきゃいけないから疲れてきたんですけど……。
【曲芸】を習得しました。
わーい…うれしくない……。
「…それにしても暇だ。カカシは倒せないし見渡す限りの草原だから他に何があるってわけでもない―――「ごめんなさいいいいいいい!!!」」
「うわっ!?ってミレーヌじゃんどうしたの?」
「えっとぉ……大変申し訳にくいのですが……こちらの手違いで初期装備を渡すのを忘れていました!」
は?
「は?」
「現在カナデさんの姿ってその…下着姿じゃないですか…」
「下着姿も何もOLOじゃ初期アバターは下着姿だったじゃない」
「ゲーム版One life Onlineじゃそれでも良かったんですけどこっちのほうでは現実といいますか……つまりそのままの姿で町に行ったりしますと衛兵さんに捕まっちゃう……なんてことに………」
「……ミレーヌ」
「は、はぃ……」
「チュートリアルはこれだけ?って聞いたよね」
「…はい」
「あとはカカシを好きにして時間つぶせって言ったよね?」
「…はい」
「初期装備ってことはそれが無いとゲーム始まらないわけじゃないの?」
「…そのとおりです」
「ふっざけんな!喰らえカブ頭マシンガン!」
ずっとジャグリングしていたカブ頭をミレーヌに投げつける。
「あああ!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいいいいいいい!!!」
「今すぐ初期装備出してカブ野郎の設定を七秒に一度頭を投げてくる設定にしやがれ!ダメージは0!」
「します!しますから!カカシ君の頭投げつけないでくださいいいいい!!」
【命中】を習得しました。
ミレーヌが器用にカカシ頭を避けながら片手で何かを操作するように動かすと「The・布の服」というような服が草原にきれいに置かれてその上に木刀が1本出現した。そしてミレーヌは私が初期装備を見ている一瞬で消えてしまっていた。
「まったく。ポンコツにもほどがっ―――」
何かが頭に当たり途中で舌を噛んでしまった。飛んできたほうを見ると頭が無いカカシがきれいな投球ホームをして止まっていた。
「バッティングセンターか!」
そうしている間にもニョキっとカカシ頭が生えてきて自分の頭を引きちぎると再び投げるモーションをとった。
「こわっ!?」
とりあえず次投げてくるまでの数秒の間に木刀を構え迎え撃つ姿勢を整える。カカシが頭を投げてきたのでバッティングセンターと同じ要領で打ち返す。
チュートリアルが終わった瞬間捕まりたくはないので次弾が来る間に急いで布の服に着替える。が、途中で2発ほど当てられよろけてしまった。
「意外と威力たけーぞこんちくしょう!」
布の服に着替えてからは頭を投げてきたカカシに向かって頭を打ち返すのを繰り返し行った。
-----
【反撃】を習得しました。
「よし、目標は達成した……!」
あとゲットできそうなスキルあるかなぁ…?
「そういえばスルクの箱…だっけ?これ使ってなかったな……」
使用方法は確か剣とかに毒をつけれるとか………。合成剣スキルあるから大体は何とかなるし……。つかえないぃ……。
「……………………別に剣じゃなくてもよくね?」
えーっとこれ半分あたりから回せるのか。
スルクの箱を開けてみると接着面がハケのようになっておりしっとりと濡れていた。おそらくこれがスルクの箱の毒だろう。
「試しに腕に…あいっだあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
腕に毒を塗ろうとしたときカブ頭が頭に当たり思いっきり顔面に毒が付着した。毒が付着した部位(特に目と口の中)から針で刺されたような痛みが襲ってきた。
耐性スキルどうした!?全状態異常の耐性スキル持ってたはずだろ!?
耐性があるだけで痛みはそのままなのかそれともスルクの箱の毒が強いのか……。
-----
【頑強】【毒無効】を習得しました。
毒無効スキルが手に入るまではぶすぶすと遠慮ない痛みが襲ってきたが無効スキルが手に入った瞬間から痛みが嘘のように消えていった。
「あぁ……死ぬかと思った……」
痛みに悶えている間にHPバーを探したがどこにも表示されてないから本当に焦った。
それにしてもカカシ野郎も毒状態のときに遠慮なく攻撃してきやがって……。地味に衝撃強いんだぞ…。
今度はカカシが頭を投げれないように木刀をカカシの頭が生えたタイミングで上から串刺しにしピン止めしておく。
「よし今度こそ腕に……あ、ひんやりする。気持ちいいかも」
何というか虫刺されの薬を塗った時とか汗拭きシートで体をふいたときと同じ感じがする。調子に乗って手どころか腕全体に塗っていた。
「あー気持ちいい。だけどこれをこう!」
毒を塗りたくった腕をカカシに思いっきりぶっ刺す。
「おらおらおらおらおらあぁぁぁぁ」
刺しては抜いてを繰り返す。顔面に毒を浴びせてくれたお礼だ、遠慮なく召し上がれ。
しばらくブスブスと刺して抜いてを繰り返しているとカカシの胴体から煙が上がってきた。どんだけ強い毒なんだこれ……。初期武器って実はめっちゃくちゃ大切なものなんじゃないのだろうか。しっかりと選んでおけばよかった……。
なんてことを思っていると煙を上げていた部分からカカシがへし折れた。これはあれだ。
「勝ったぞ、おらぁぁぁぁぁぁ!って生えてくるのかい!」
へし折れた部分が千切れ落ち、そこから無傷のカカシが何事もなかったように生えてきた。そしておもむろに頭を自分でちぎり投げつけてきた。
生えてきたときに何となく予想してたけどさ。結構グロいよね、この光景。
武器も持っていなかったので普通に避ける。そして打つべし!打つべし!!打つべし!!!
【毒手】を習得しました。
やっぱり合成剣と同じ習得方法か。でも合成剣と違って1種類だけの属性ぽいなぁ…。
サービス開始まだかなぁ……。そろそろネタが尽きてきたんだよ。
カカシ君は頭を投げてくる以外のモーションは無いし。スキル入手もこれくらいが限度だろうし。スキルのレベルアップができたら永遠とそれをやるんだけどそれが封じられている今、とてつもなく暇だ。
しょうがない、ログアウトしないでおこうと思ったけどログアウトして電屋のとこにでも……今何時だ……?
「・・・ミレーヌに変わり・・・、わたしが・・・あとがき担当になっ・・・た
よろ・・・しく?
・・・質問、あれば・・・答える・・・」