チュートリアル3
現れたテーブルには剣から槍、はたまた使用方法が分からない謎の物体までずらりと並んでいた。
「それでは初期武器を選択してください」
「これ全部の中から……?」
「はい!」
ふむ……。
私はテーブルの手前にすべての武器……花?まぁ武器なのだろうを集めテーブルを思いっきりひっくり返す。言わばちゃぶ台返しだ。
「えええぇぇぇ」
テーブルから盛大に散らばっていった武器たちの中から一番遠くまで飛んだものを拾ってみる。
「箱…?」
「あのそんなやり方でいいんですか…?」
「いいのいいの」
「分かりました」
ミレーヌがパチッ、と指を鳴らすと私が持っている箱を残して散乱していたほかの武器とひっくり返ったテーブルが消えた。
「こういうところは現実とは違うんだね」
「いえ、これはまh……いえ!なんでもありません!ゲームですから!」
このアホの子本当に大丈夫か……
「それよりこの箱のこと教えてよ」
「あ、はい。その箱はえーっと…スルクの箱ですね。剣などに毒を付加する効果があります。といっても強化してない段階ではそれほど強い毒は出せません。また強化によって出せる毒の種類が増えます」
「え、初期武器なのに強化できるの!?」
「はい。それと初期武器には直接的に敵をダメージを与える物と間接的にダメージを与える物の二種類がございます。どちらも強化可能ですが作成及び購入された武器にはやや劣ります」
「チ…ジ…」
「はい?」
「チェンジ!初期武器チェンジ!もっかい選ばせろ!」
「えっともう決定してしまったのでそれは無理です。ヒッ…そんなに睨まれても無理なものは無理なんですぅ!」
このアホっ子…!そういうのは最初に言うべきことなんじゃないだろうか。…詳しく聞かなかった私も悪い……か?
「はぁ…チュートリアルはもうこれだけ?」
「あ、はい。今のところこれだけです。正式サービス後に公式ウェブページにチュートリアルが載りますのでそちらを参照にしてください。それではサービス開始までこちらのカカシ君を相手に時間をお過ごしください」
ミレーヌの横にひょこっと妙にちんちくりんな案山子が生えてきた。
「なにこれ……」
「カカシ君です」
「…は?」
「カカシ君です!」
「これをどうしろと」
「話しかけたり殴ったりします」
殴っていいのか……
「カカシ君にアクションを繰り返すとスキルがもr「だっらっしゃああああああああ」
全力でぶん殴る。カカシ君?の首が取れるが知ったものかスキルの犠牲になれ。OLOではスキルが命だ。少なくともPC版ではそうだった。
「か、変わり身早いですね……ってちょっと待ってくださいまだカカシ君のターゲティング設定してませんから!あ、ダメですって!ヤダ!やめて!いやあああああ!!!」
【格闘】【暗殺術】【即死】を習得しました。
よし、格闘術は意外だったけどそれ以外はゲットできたな。steebenのときは戦い方ある程度決まってたから素手で攻撃することなんてなかったもんなぁ…。
「ダメだって言ったのに…ヤダって言ったもん……私のせいじゃないもん…」
「なんかそのセリフだけ聞くと私が悪役っぽいからやめてよ」
「悪役どころか悪そのものじゃないですか!あぁぁ…習得を難しく設定してた暗殺術と即死スキルが……」
「アクティブモンスターに五メートル以内に近づいてなおかつタゲられずに百匹倒せなんてこうでもしないと習得できないでしょ」
「ですが…ですがぁぁぁ……」
「ま、途中でタゲいれなかったミレーヌのせいだと思うけど。私としては嬉しいからお礼言っておくよ。ありがと」
「どういたしましてぇぇ…あと説明終わらないとターゲティングの設定できないので説明続けさせてもらいますね…」
「分かった。その間に攻撃続けてるから説明よろ」
「……カカシ君ひっこめますよ?」
「おとなしくしておきます」
せっかく安全なチュートリアルでスキルがゲットできるチャンスなのになんてこと言うんだこの子は。
「では、続きを。カカシ君にアクションを繰り返すことによってスキルを会得できるかもしれません…ってもう三つも会得してらっしゃいますね……消して大丈夫なんじゃ……」
「消したらミレーヌの素顔を掲示板に張るよ」
「消しません!はい!コホン、とりあえず習得できる『か・も』しれません!ただしカカシ君をいくら倒したところで経験値は一切入らないので注意してください」
さすがにレベリングは無理か。まぁ、スキルが手に入るだけましか。
「経験値が入らないためスキルレベルはゼロのままですが正式サービス開始時にスキルレベルLv1となりますのでご安心ください。また、チュートリアル内で死亡した場合そのままキャラ削除されるようになっていましたがクレェ……ゴホン、問い合わせが寄せられたためチュートリアル内ではHPが全損しないようになりました」
「へぇ、それで死んでご意見を下さった間抜けな人たちは?」
「ゲーム開始前でしたので蘇生処置を施しました。あ、今死ぬ方法を考えようとしてらっしゃいますけどHP全損しない措置はもう取ってありますので無駄ですよ」
それは使えそうだな。
「チュートリアルはそれだけ?」
「はい!あとはカカシ君を殴るなり燃やすなり愛でるなりご自由にどうぞ!それではチュートリアルを終了させていただきます。また、OneLifeOnlineではGMコールはございませんのでもし何かありましたらこのフードをかぶった人物に話しかけてください、このフードがGMである印です。それでは良き第二の人生をお楽しみください」
「チュートリアル担当です。一つだけ言い訳をさせてください。
1万人強を同時に案内しているのです!脳内リソースが不足しても仕方ないじゃないですか!
私は悪くない。私は悪くな―――え、弁明はいいからさっさと説明しろ?
・・・はい。
今回はチュートリアル用カカシ君について説明します。
まずカカシ君自体はOLO内の町に絶対に存在している冒険者ギルドに置いてあります。
ただし一殴り1000Ly払わなければなりません。Lyというはゲーム内通貨のことですね。
カカシ君自体のHPはすべて1です。ただし防御力などが違うため破壊できるのはほぼチュートリアル用とS1ランクのカカシ君だけですね。S1というのは説明が長くなりますのでギルド内ランクと考えてください。
基本は立っているだけのカカシ君ですがGMが設定したときのみ別の行動をとることを許されます。
つまりカカシ君を動かしたければ私に跪いてくださ―――せ、先輩!?え、お仕置きですか!?なんで!?
私そんなに重要なミスは……!いやああああああああ」