チュートリアル2
気づいたら私は草原のど真ん中で寝ていた。
「どこだ、ここ……。たしかOLOの機械かぶって……てことはここがOLOの中?」
『ようこそ、【One Life Online】へ、ここはあなたの新しい人生です』
「いや、人生とは大げさな…ってどこから声が…?」
ボケーっとあたりを見渡していたらいきなり声が聞こえた。しかしどこにも声の人物らしきものは一切ない。
「なるほど文字で表せばよかったのがフルダイブになったから音声になったのか」
『まずはメニューを見てみましょう。メニューと発言するか念じてください』
メニューとつぶやくと『ピコン』と軽い音共に視界にアイコンとシステムログ、チャットログが映った。システムログのほうには先ほどの歓迎の言葉とチュートリアルの文字が流れていた。
「なんか現実とあんまり変わらないものなんだね…」
ホログラム技術など私が生まれる前から存在していたものだ。今更この程度は驚くほどではない。
『この世界は現実であっても現実ではありません』
意味が分からん。というかなんかツッコミ入れられた。ツッコミが入ったことに驚いていると目の前で小さな光が光った次の瞬間まるで人形のように可愛らしい女の子が立っていた。
「可愛らしいなんてそんな」
なんか照れてるけど、普通なら同性のこんな姿見たらぶりっ子がって思うところなんだろうけどこの子がすると妙にしっくりくるから困る。
「ところでなんで私の顔が分かっているんですか?私が担当した一万六千七百二十七名のプレイヤーが似たような反応しているんですよね」
顔が分かるも何も認識阻害もフードも何もかぶってないじゃないか。アホなのかこの子は。
「えっあれっ少々お待ちくださいっ!」
女の子がぱっと消えたと思ったらフードを目深にかぶったおんなじ背丈の人物が現れた。
「えー、コホン。それではカナデさんあなたのチュートリアルを担当させていただきます、【ミレーヌ】と申します。……それとさっきの件は内緒にしておいてください」
「内緒も何もすでに一万以上の人に見られてるんじゃないの?」
「それを言わないでくださいぃぃぃ……」
アホだこの子…。まあチュートリアル担当という事はNPCかAIだろう、ここまで精巧なAIは見たこともないが。
「あ、この世界ではNPCにAIだとかNPCだとか言うのはNG行動です。好感度が下がります。というかぶっちゃけ生きているんです、この世界の人間も、あなた方プレイヤーも」
人の心を読んで会話してくる存在が人間だというのか。
「現在、脳のスキャニングの真っ最中なのでこうやって思考を読んでいますがスキャンが終了するとできなくなりますのでご安心ください」
「なら安心なのかな」
「それでは僭越ながらチュートリアルを進めさせていただきます。まだメニュー画面を開いていらっしゃいますね。ではギアのアイコンをタップするか開くと念じてください」
ギアのマークを言われた通りタップしてみるとログインIDとパスワードを入力する画面が出てきた。
「新規で始める方は新しいIDとパスワード、パスワード確認を入力してください。PC版から引き継ぐ場合はそのまま既存のログインIDとパスワードを入力してください。なお死亡して破棄されたアカウントでもすでにゲーム内では二百年たっているため問題ございません」
サブアカ禁止なのにサブアカのこと知ってるのか……
「こちらとしても想定内でしたので、ちなみに引き継ぎ特典もございます。スキルとゲーム内貨幣だけですが、なので最後にプレイしていたもしくは一番いいところまで行ったアカウントを引き継ぐことを推奨します。なおスキルレベルは初期化されますのでご了承ください」
「質問、複合スキルの場合どうなるの?」
「アップデートにより新スキルとして実装及び付加しておりますのでご安心ください。またスキルレベルがポイント割り振り制から熟練度制に変わっておりますのでご注意ください。新スキルは既存スキルと同じように会得することができます」
「という事はスキルレベルにはポイント不要になったけどスキル会得にはポイントが必要ってこと?」
「その通りでございます」
「スキルポイントは今まで通りスキルレベルが上がったらもらえるの?」
「それが今協議中でございまして……どうなるかわかりません!」
「は?」
ふざけてんのかこいつは。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!正式サービス開始には間に合うと思いますので!あ、スキャンが終了いたしました。これからは口頭のみで意思疎通が可能です」
「りょーかいって正式サービス開始までにって今鯖開いてないの?」
「はい、現在チュートリアルと引継ぎ作業のみ行っております。正式サービス開始は現実の日本標準時間、0時よりサービス開始です」
「引継ぎキャラのキャラメイクのやり直しってできるの?」
「いえ、そもそもキャラメイク自体がありません」
は?
「脳に負荷を与えないためキャラクターはほぼ現実と同じ外見、性別になります。あ、ステータスに影響はないのでご安心ください」
は?私の一番気合入れて作ったイケメンキャラ、Stevenはどうなんだよコラ。
「そんなに睨まれてもこれは正式決定されていることでしてぇぇぇ………」
「名前はどうなるのよ」
「そ、それは付け直しができますはい!」
はぁ…仕方ないか…。スキルが一番多くて金も持ってたsteebenのアカを引き継ぐか…。IDとパスワード入力してっと。
「ほら、これで次はどうすればいいの?」
「あ、はい。この世界に慣れていただくためチュートリアルをってその前に名前の変更をしますけどどうします?」
「苗字なしの本名でいいよどうせリアルの顔だし」
「ではキャラクターネーム【カナデ】さんですね。チュートリアルを開始します」
ミレーヌがそう宣言した瞬間何もなかった草原にどでかいテーブルがドンっと出現した。
???「というわけでチュートリアル担当のミレー―――え?あとがきだから名乗らなくていいのですか?はい、分かりました。
では、今回はOLOでのスキル習得について説明します。
OLOは基礎スキル、複合スキル、隠しスキルに分かれています。初期スキルなどはありません。
基礎スキルはその名の通り基本となるスキルのことです。例を挙げますと【大剣】【格闘】スキルなどです。こちらのスキルは簡単に習得することができます。大剣で100回斬る動作をする、100回殴る蹴るなどの動作をする。といった感じです。
複合スキルは2つ以上のスキルを組み合わせて行動を行うと習得できます。2種類以上の剣類スキルを所持で【剣術】スキル、2つの剣類を使い斬る動作を200回以上すると習得できる【二刀流】などです。
最後に隠しスキルですがこちらは基礎スキル、複合スキルと同じような習得方法ですが条件が厳しくなっております。どんな条件かは、秘密です。
以上スキル習得の説明でした」