握手
「やってまいりましたっ!………なんていう町でしたっけ?」
「ガジェだガジェの町」
ふむ…記憶にない町だ。PC版とやっぱり変わってるのかな。
「ところで助けたときは確か五人だったはずですけど残りの一人はどちらへ?」
「あぁ、あいつか今一人が付き添って宿で介抱している。この人はギルドの酒場で救助を求めたら来てくれた人」
「俺ぁグラスカってんだ。チェ…チェリオムなんたらってこいつらの緊急依頼を受けたBランクだぁ」
「【初めの一歩】だ。リーダーのオレと壁役、斥候、弓兵、術師の五人のクランだ」
グラスカさんと【初めの一歩】ね。グラスカさんはたぶんOLOの住人として【初めの一歩】は私と同じプレイヤーなんだろうな。
「グラスカさん、私のこと異邦人とか言ってましたけど私のほかにも異邦人っているんですか?」
「おう、三日前くらいに【魔王の領地】周辺の【赤の森】付近に異邦人達が一斉に現れる現象が起こったんだ。そこの【初めの一歩】のやつらも異邦人でぇ」
「混乱とかしなかったんですか?たぶん相当な人数が一気に現れたと思いますが」
「【赤の森】は大国を百集めてもすっぽりと入るくらいでけぇんだ。それに町に異邦人が来ても一人から六人くらいで金を落としてくれるから逆に来てほしいくれえだぁ。―――っと門についたぜぇ」
グラスカさんからできるだけ情報を引き出していると私が4人縦に重なっても門の上には届かないくらいのでかい門が待ち構えていた。……私が小さいわけじゃない……小さくないもん。
「嬢ちゃん以外は身分証もってだろ。オレぁ嬢ちゃんの付き添いしてくっからおめえらまたギルドでなぁ」
グラスカさんがそう言うと【初めの一歩】と別れて門の詰め所に向かっていったのでグラスカさんについていく。
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門の詰め所に行くとグラスカさんに向かって門兵さんたちが敬礼した。
「お疲れ様です!グラスカさん!」
「おーぅ、お疲れぇ。早速のところで悪りいんだがこの嬢ちゃんの仮身分証発行してくれ、あれば金属製でなぁ」
「金属製ですか?少々お待ちください」
グラスカさんってひょっとして重要人物?私の毒手のことにも気づいていそうだし。
私の毒手は動植物限定で効くみたいだし。【初めの一歩】の人たちの武器借りたとき金属製の剣だけは毒で煙が出るということもなかったし。さて、ここまでの会話で重要だったのは【魔王の領地】、【赤の森】、この二つはPC版でもあった中央エリアでチュートリアルでもあったしエンドコンテンツでもあった。
「おい嬢ちゃん、手ぇだしてみな」
「ん?はい」
ジュウゥゥゥゥゥゥ
「うわっ!?」
グラスカさんからいきなり渡されたのでつい握ってしまったが毒手のせいで煙が出た。
「ほぅ……」
「ほう……じゃないですよ!いきなりなんですか!」
「いんや、嬢ちゃんの手の毒の強さを知りたくてだなぁ」
「それならそうと言ってくださいよ……いきなりは驚きますので……」
「聞いたら教えてくれたのかぁ?」
特に隠しているわけでもないし……。むしろ毒手をどうにかできる方法があるならこっちが知りたい。
「じゃあついでに聞くが……殺人クランの奴じゃねえだろうなぁ?」
そう聞いてきた瞬間グラスカさんから冷たい背筋が凍るような気配が襲ってきた。
―――だけどこれくらいじゃ…ね?
「違います」
はっきりと否定の意を唱える。グラスカさんは一瞬きょとんとした表情の後ニカッと笑い手を差し出してきた。
「そりゃ疑ってすまねえなぁ」
ふむ……ここは友好の証なんだろうけどあいにく私は毒手持ちなんで握手したら大変なことになりそう。……面白そう、よし握手しようじゃないか。
私はにっこりと笑顔でその手を取った。
「この手は大層あやしいと思いますので仕方ないですよ」
グラスカさんの手をしっかり握った―――はずなのに毒手の毒が効いたふうでもなくお互いにっこりと握手している。
……このおっさん毒無効スキルもってやがるな……
「・・・初期毒、なんに、したっ・・・け?」
「えーと持続ダメージ2分以内、金属製には効かない、ダメージ30未満という条件でしたのでコロジアの若葉ですね」
「・・・それなら、・・・セー、フ・・・?下級の、解毒薬で、・・・治る・・・し」
「あ、でもコロジア草なのでB4ランクくらいですね」
「・・・訂正、ちょっ・・・と、強・・・かった・・・」




