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 爺の言葉に若者たちが首をかしげる。

 次いで聞こえてきたのはいら立ちの声。


「ふざけるなよ。平民姫の亡命で我が国が滅ぶ!? じじいの妄想に付き合ってる暇はねぇんだよ!! たった3人で何が出来るってんだ!!」


「ほっほっほ。それじゃよ」


「あ゛ぁ゛??」


「おぬしらの認識がその程度じゃから、ワシらがこうやって出てきたんじゃ。もう1度言おう。我が国の第2王女であさせられるミリアン・フィリア様を敵に回せば、王国は滅びる」


 真剣な表情を崩さないまま、爺が1度言葉を句切った。


「姫様はいま、10体の召喚獣を呼び出された。御前試合では50体近く。そのお力で兵士たちを打ち倒された。果たしてその上限は何体なんじゃろうか?」


「それは……」


 若者がなんとか言葉を紡ごうとするのだけど、肝心の言葉は出てこないみたい。

 まぁ、当たり前よね。だって、本人である私ですらわからないんですもの。


 なんて思っていたら、爺の視線が私の方を向いた。


「姫様。申し訳ないんじゃが、剣を持ったマッシュ様に出てきてもらますかな? 数はお任せしますぞ」


「剣の子? わかったわ」


 この流れで50体じゃ面白くないわよね。


「マッシュー、出てきてくれるー?」


「「「キュ!!」」」


 って事で、100体のマッシュに出てきてもらった。


 部屋を囲うように壁に並んでもらって、みんなで一斉に剣を構える。


「ついでに短剣の子も出すわ。おいでー」


「「「キュ!」」」 


 50個くらいの小さな魔方陣を無造作に並べて、部屋の至る所から短剣を持ったマッシュに出てきてもらった。


 剣100。短剣50。合計150体のマッシュが貴族たちを取り囲む。


 周囲を守っていた兵士たちが慌てて剣を抜いたのだけど、守ろうとしていた若手の貴族から制止の声が飛んだ。


「待て!! ……そのまま、待機だ。こいつらを、……王女様を刺激するな」


 顔を青く染めた男の手足が恐怖に震えてる。


 周囲にいる男たちも、ひきつった瞳を周囲のマッシュに向けていた。


「ほっほっほ。わかったようじゃな。じゃがのぉ、姫様はこれでも控えめに召喚されたようじゃぞ? こやつらは召喚獣じゃ。どれだけ倒そうが翌日には前線に復帰する」


 爺が言葉を重ねれば重ねるほど、貴族たちの顔に緊張の色が増えていった。


 短剣を片手にトテトテと歩くマッシュを見詰めて、誰かがゴクリと息をのむ。


「無限に増え続けるキノコ……」


 そうつぶやいた誰かの声は、恐怖に震えていた。


「王家追放に成れば、この国はキノコに攻め滅ぼされる。キノコに埋め尽くされる……」


「そうじゃ、ワシらはそれを恐れておる」


 全員がマッシュから距離を取って、身を寄せ合うように離れていった。


 いやいや、さすがに国を埋め尽くしたりはしないわよ!!

 なんて思ったのだけど、マッシュたちがこのまま増え続けるたら不可能じゃないのかしら?


 マッシュ 対 国軍 


 ……10,000体くらいのマッシュなら、勝っちゃうかもしれないわね。


「もう1度言おう。よく考える事じゃ。彼女にも王家の血は流れておる。心優しく、知恵も知識もある。今見たとおり武力もじゃな。国にとって何が最善かをもう1度考えることじゃ」


 そう言って爺が部屋を出て行った。




 その後行われた貴族たちの投票と結果の発表。


「ミリアン・フィリア。投票数268票。ミルヘルンの土地と、ミルヘルン伯の称を与える」


「謹んでお受け致します」


 すべての兄弟たちを抑えて、私の投票数が1番多かったみたい。


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