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そうしてそのまま夕方になるまで小屋の中でトレーニングを続けんだけど、マッシュたちは想定以上に増え続けてた。
今では総勢80体を超えたのかしら?
私の魔力も着実に増えてはいるのだけどスピード負けしちゃってて、20体以上は帰ってもらっているから正確な数がわからないのよ。
まぁでも、マッシュが増えるのは良いことよね。
良かったことはそれだけじゃなくて、絶え間なく姿を見せていたトカゲが、最近は1時間に1体くらいに減ってた。
敵の限界が近いのかも、なんて思っているのだけど、どうなのかしら?
(門が閉まる前に帰る予定だったんだけど、この分なら明日は見回りも出来るかも知れないわね)
どうしましょう? もう1泊する?
なんて思っていたら、隣に座ってずっと頭を悩ませていたマリーが、突然ハッと立ち上がった。
「なるほど!! 魔力を体内で分けているのですね!?」
2種類の魔法を同時に展開していたマッシュを抱き上げて、マリーがパタパタと駆けていく。
その瞳はどこまでも輝いていて、大きな胸に潰されて苦しそうにしているマッシュの様子には気が付いていないみたい。
「リリさん。体の中に2つの容器があるイメージで、片方ずつ別々に使えませんか?」
「え? 体内に容器? えーっと……」
「いまある魔力を左と右に分ける感じですね。……無理そうですか?」
「えーっと…………」
マリーは確信に満ちた表情を見せているけど、肝心のリリは困り顔。
憶測でしかないけれど、マリーは多分、体内で分けれたんじゃないかしら?
「まずは容器を思い浮かべてみましょう。今は大きい物が1つ。それとは別にもうひとつ作ってください。中身は空っぽ。……どうですか?」
「…………ごめんなさい。もう少し時間を……」
「あっ、いえ、大丈夫ですよ。ゆっくりイメージを固めて行きましょう」
悔しそうに目を伏せるリリの髪をマリーが優しくなでる。
「容器をふたつ……、右と左…………」
気合いを入れ直したリリがもう1度チャレンジしているみたいなんだけど、表情を見る限りあまりうまくは行かないみたい。
「リリさん、魔力を手のひらに集めれますか? それをお腹の中から伸びている魔力から切り離して孤立させることは出来ますか?」
「孤立ですか? 切り離す……。独立、孤立、…………出来ました!!」
表情を一転させたリリが、うれしそうにマリーのことを見上げていた。
「1歩前進ですね。その方向でやってみましょう」
「はい!」
マリーも指導に興が乗ったのか、優しい言葉の中に熱が入り始める。
(これはあれね。帰りましょう、なんて言える雰囲気じゃないわね)
ってことで、静かに見守っていたんだけど、2人の勢いが衰える様子は見えてこない。
これはもう一泊するしかないわね。
「今日もお泊まりにしましょうか。気が済むまでトレーニングに明け暮れるわよ!」
「はい!」「かしこまりました!」
ってことで、今日も南の森で1泊する事になった。
普段じゃ考えられない時間まで夜更かしをして、魔力を増やし続けて、翌朝には80体を召喚出来るようになっていた。
今までの増加具合から考えると段違いなんだけど、夜の間にマッシュたちもその数を増やしちゃったから、全員を同時に呼び出せるのはまだ先の話ね。
だけど、大分追いついたんじゃないかしら?
最大8時間で3交代なんだから、3分の1で良いんじゃない? なんて思いが頭をよぎるのだけど、せっかくなら全員そろって召喚してあげたいのよね。
「さてと、それじゃぁ、周辺の調査を始めましょうか」
「「「キュ!」」」
木々の隙間から差し込む朝日を浴びながら、広間を埋め尽くす80体のマッシュに声をかける。
さすがにこの数は多すぎるわね。なんて思っていたら、リリもマリーも苦笑いを浮かべていた。
「偵察の子は、敵を見つけたらすぐに逃げて攻撃部隊を呼ぶこと。良いわね?」
「「「キュ!」」」
私の指示に従って武器を持たない子が森の中に入っていく。
その後ろから遅れるようにして武器を持った子たちが4体1組に進み始めた。
盾を持つ1体だけを残してみんなが木々の向こうに消えていく。
「さてと、私たちも行きましょうか」
「はい!」「かしこまりました」「キュ!」
武器のない子たちからかなり遅れて、私たちも森の奥へと進み始めた。
今日の目標は、トカゲが増えた原因を探ること。
時折離れた場所でマッシュの大きな鳴き声が聞こえてきて、周囲の小鳥たちが騒がしく飛び立っていく。
武器の無い子が敵を見つけたのかしら? なんて思っているうちにマッシュの数が1体増えた気がした。
憶測にはなるのだけど、人海戦術はうまく機能しているみたいね。
「1体だけならどこにいてもわかったんだけど、この数になるとぼんやりとしかわからないわね。そこも訓練が必要かしら?」
「そうですね。姫様の場合は特殊なので断言は出来ませんが、召喚魔法をきわめた者は、視界までもを共有出来たと聞きます。努力次第では不可能ではないでしょう」
「視界、視界ねぇ……」
物は試しって事で、近くに居たマッシュの視界をのぞこうとしたんだけど、何も起きないわね……。
「魔力を増やしながら、そっちも磨かなきゃいけないのね。先は長いみたい……」
だけどその分やりがいもある。
なにも出来ずにただ貴族に陰口をたたかれていた時と比べたら、毎日がワクワクするわね。




