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それからたったの1時間で、森の中にワンルームの小屋が建っちゃいました。
これが私たち3人とマッシュ30体が入っても広くて快適なの。
壁と屋根と床だけで、家具とかはないんだけど、休憩するには十分ね。
どう考えても1時間で作ったクオリティじゃないのよ……。
あっ、ちなみになんだけど、マッシュたちって魔法も使えたみたい。
魔力が欲しいって近付いて来たから渡してあげたんだけど、きれいなキノコ型の魔方陣を展開して木材の水分を抜き始めたわ。
器用貧乏なのかもしれないけれど、何でも出来るのは良い事よね。うんうん。
ってことにしておいて、深くは考えないことにするわね。
考えちゃうと、常識が行方不明になるのよ……。
「さてと、やっと落ち着いけたわね。今日はここに泊まりでいいかしら? マリーを明日の朝まで寝かせてあげたいのよ」
「あっ、そうですね。わかりました!」
不安そうな表情を浮かべてマリーの顔をのぞき込んでいたリリが、深くうなずいてくれた。
日はまだまだ高くて時間はいっぱいあるんだけど、今日はここまでね。
窓から差し込む日差しを浴びながら目を閉じて、体内の魔力に力を込めていく。
そうしてゆっくりゆっくり魔力を増加させていたら、膝の上でおとなしくしていたマッシュが、突然トテトテってリリの方に走って行った。
「ん? マッシュさん? どうしました?」
「きゅー!」
彼女の手を取ったマッシュが、フワフワの傘を彼女の手にぶつけてる。
小屋の建設中にも見たその仕草に、リリもピンと来たみたい。
「えっと? 魔力が欲しいんですか?」
「キュ!」
どうやら当たりみたいね。
「えーっと、こんな感じかなぁ?」
不安そうな表情を浮かべて、リリが手に魔力を集めていく。
そうして集められた魔力をマッシュが体の中に取り込みはじめた。
リリの手のひらから直接魔力を吸い上げているみたい。
そしてまたトテトテ走り出す。
んーっと? 行き先は玄関?
傘の中に手を入れてゴソゴソしたら、金属製のヤカンが出てきたわね。
「きゅきゅ!」
床にキノコ型の魔法陣が表れて、ヤカンが宙に浮く。
どこからとなく現れた水の塊で中が満たされた。
最後には、フワッとした炎がヤカンを温め始めるオマケ付きね。
「3属性の同時展開!?」
浮遊に水と炎。ただお湯を沸かしも一般常識の外側ね。
魔法は1度に1属性まで。同時に扱える人なんて聞いたことないもの。
扱うのが私の魔力じゃないってところも驚きよね。召喚主以外の魔力を帯びるなんて聞いたことないわよ?
これもマリーと爺に意見を聞かなきゃ……。
(まぁでも、増え続けていることに比べたらささいなことかしら?)
そんな事をぼんやりと考えては見るけど、答えなんて出てくるはずもない。
いつの間にか周囲には茶葉のふわりとした香りが広がっていて、カップを抱えたマッシュがトテトテと駆け寄ってきた。
「お茶を入れてくれたの? ありがたくいただくわね?」
「きゅ!」
小さな手からカップを受け取って、ふわふわモチモチの傘をなでる。
うれしそうに体を震わせたマッシュが、次はリリの元へと駆けていった。
「え? 私の分ですか? ありがとうございます!」
「きゅきゅ!」
そうして最後に自分の分をいれたマッシュが、床にペタンと座って優雅にカップを傾け始めた。
1口飲んでは不思議そうに首をかしげる姿を見る限り、私たちのまねをして飲んでみたかっただけみたいね。
「コンロがなかったから魔法で対応したよね、多分。あっさりと常識を越えたんだけど、誇って良いのかしら?」
「あはははー……」
結果だけならお茶を作っただけなんだけど、筆頭魔導師なんかにバレたら国をあげての大騒ぎになるわよね。
リリの方が魔法に精通している分、私よりも複雑な気分みたい。
(まぁでも、誰かに見られたって訳でもないし、大丈夫でしょ)
さっきマリーが見せてくれた魔法と合わせて、リリには良い刺激になったんじゃないかな、なんて思うわね。
「さてと、なにはともあれ、リリの課題は魔力操作ね。私は魔力の増加。ゆっくりやりましょうか」
「はい! 頑張ります!」
元気いっぱいに返事をして愛用のつえを胸に抱いたリリが、ゆっくりと目を閉じる。
ふと窓の外に目を向ければ、襲ってきた赤いトカゲをマッシュたちが返り討ちにする瞬間だった。
ここでまた新たな発見なんだけど、マッシュたちって、スライムじゃなくても増えるみたい。
倒したトカゲを食べた子が、2体に増えたわ。
(相手が魔物なら良いのかしら? 何はともあれ、彼らが増えるスピードに負けないように私も頑張らないとね)
そう気合いを入れて、私は体内の魔力と見つめ合った。




