表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/52

<14>

 枝の隙間から見え隠れする太陽が傾き始めた頃。


 森の中に行って貰ったマッシュたちを呼び戻したんだけど、予想以上に増えてたのよ。


 今日の成果は、6体増加の合計12体。

 薬草を3本と、魔力の回復に効果のある青いリンゴ3つもあるみたい。


(結局、今日も私の負けね)


 なんて思いながら、2体の召喚を解除して、大きな葉っぱの上に載せてもらう。

 昨日の5体と比べると私の魔力も増えたのだけど、今のところは10体が限界なのよ。


 今日もトレーニングルームに行かなきゃ、マッシュの増えるスピードに追いつかないわね。


「リリ。光の玉をそのまま維持することは出来そう?」


「はい! がんばります!」


 そんなマッシュたちと同様に、リリも大きく成長してるわ。


 大きさは手のひらくらいにまで縮小出来ていて、継続時間も大幅アップ。

 次は動きながらの維持、ってことで、マッシュに乗せてもらっている間も彼女にはがんばってもらう。


(この葉っぱも3人だとちょっとだけ小さいかしら? 10体で頑張ってもらってるけど、持ちにくそうに見えるわよね?)


 額に大粒の汗を浮かべながら頑張るリリの隣に腰掛けて、お尻の下で頑張るマッシュに視線を向ける。


 専用の荷台でも購入しようか?

 いっそのこと、森に住んでしまおうか?


 さすがにそこまでは出来なくても、あの森に小さな拠点を造るのもありよね?


「ちょっと思ったんだけど、あの森に家を建てないかしら? ちょっとした休憩所には良いと思わない?」


「そうですね……。良い案だとは思いますが、我々だけでは不安が残ります」


 確かにそうね。本で得た知識はあるのだけど、それだけじゃ無理ね。

 人手は沢山のマッシュに手伝って貰うにしても、専門家は必要よね……。


「そこはあれかしら、ギルド長に斡旋してもらうとか?」


 他に候補もないし、薬草を売りに行った時にでも聞いてみようかしら。


 なんて思っていたら、街へ向かう分かれ道を通り過ぎた。

 これで残りは半分。


「昨日と比べて早くなったかしら? もうちょっとだから頑張ってね」


「「「きゅ!」」」


 足元から聞こえるマッシュたちの声は、普段よりも元気そう。


 その代わりに、前方を照らす光の玉が時折いびつに揺れていた。


「部屋についたらケーキと紅茶で休憩ね。リリも一緒にどうかしら?」


「けーき、……いいんですか?」


「もちろん。マリー、リリの分もお願いね?」


「かしこまりました」


 ケーキなどの甘みは貴族だけに許された贅沢品。

 飴とムチじゃないけど、真面目な彼女へのプレゼントね。


 マッシュたちへのご褒美は、魔力のおすそ分けなんだけど、さすがにこの人数相手だと厳しいのよ。


(それにしても、私の魔力が有効に使われる日が来るなんてね。これがうれしい悲鳴って事なのかしら?)


 最大量を増やしても意味なんてなかった3日前と比べると、すっごく楽しいわね。

 こんな日々がずっと続いてくれたら良いんだけどな……。


 なんて、無理な願いをぼんやりと思い浮かべていたら、私の部屋の入り口が見えてきた。


「それじゃ休憩ね。リリはベッドにでも腰掛けててくれるかしら?」


「はわっ! はっ、はひ!」


 突然ギクシャクとし始めたリリが、壊れたおもちゃのようにベッドに腰掛ける。


 私の部屋の様子に驚いているのか、恐る恐ると言った様子ながらも、彼女の瞳がキョロキョロと周囲を見渡していた。


「ベッド、ふかふか。お姫様の部屋だ」


 なんて言葉が、彼女の口から漏れ聞こえてくる。

 無能姫である私の部屋は、母違いの兄妹と比べると控え目なんだけど、それでも彼女には刺激が強かったみたい。


 そんなリリを尻目に、マッシュたちはテキパキと動き出していた。


 テーブルを拭く者、お湯を沸かす者、マリーが切ったケーキを運ぶ者。


「私の仕事のほとんどがなくなりましたね」


 あっという間にお茶会の準備が整って、苦笑いを浮かべたマリーが呼びにきてくれる。


 扉の前にはナイフを持った2体が警備員のように立っていて、私たちの背後に1体ずつ。


「「「きゅっ!」」」


 残りの子たちは敬礼のようなポーズをしたあとで、元の世界に帰って行ってしまった。


「……うちの子たち、ちょっと優秀すぎじゃないかしら? 私はそんなこと教えたりしてないわよ?」


「さすがはマッシュ様、と言う事ですね」


「…………まぁ、そう言うことにしておきましょうか」


 なんとも釈然としないけど、優秀なことは良いことよね。


 わからないことは1度頭から放り出して、お茶会の席に着く。


「リリ、今日の主役はあなたよ。遠慮なんてしなくて良いんだからね?」


「え? はい……」


 戸惑いながらもちょこんと席に座った彼女の前に、背後に控えたマッシュがすかさずナイフとフォークを差し出した。


「えぇっと……」


「大丈夫。そのまま、ガブッといっちまいな」


「はい……」


 見よう見まねなのか、幼い手つきでケーキにナイフを入れる。


 はむ、って小さな口にクリームを付けながら、リリがケーキを頬張った。


「おいしい……」


「でしょ? どんどん食べちゃって良いからね。明日も魔法の訓練だから、今のうちにいっぱい栄養を確保しとくのよ?」


「はい! がんばります!」


 とろけていた笑みも、魔法の訓練と聞いて引き締まる。


 結局その日は、ケーキを食べて終了。

 眠そうに目をこするリリを私のベッドに引っ張り上げて、一緒に眠ることにした。


 マリーのことをずっと姉だと思っていたのだけど、仲の良い妹ってこの子みたいな感じなのかしらね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ