第一話 ソフィア・オーガスト
新しい主人公かな?
―第一話―
ソフィア・オーガスト。
「ソフィア、今日はどこ行く?」
「んー、そうねぇ… マナはどこがいい?」
ソフィアと私は家も近くで幼馴染。いつも一緒に過ごしていた。歳は私の方が2つ上だけど。自己紹介が遅れたわね、私はマナ・エレンアルト。戦場を中心に活動しているジャーナリスト。
私の幼馴染、ソフィア・オーガスト。私たちは平和すぎる街、エデンガルドで生まれ育った。のびのびと何不自由なく育ち、このまま平凡な人生を送るものだと思っていた。
あの時が来るまでは。
五年前の戦争で敗れ去ったアソシエイトの残党が、ネオ・アソシエイトを名乗り、各地でテロリズムを始め、私たちの街、エデンガルドをもその標的にしたのだ。
「一度帰って、着替えてから行くわ。ソフィアは先に行ってて。」
「じゃあ、いつものカフェにいるね。」
「また後で。」
いつもと変わらない日常がまた来るはずだった。
「おい、何だあれ!?」
「GAが何故こんなところに!?」
街の人々が騒ぎ出す。戦争なんて幻想だと思っていた。GAがむやみやたらと街を破壊いだす。わけがわからないまま逃げ惑う人々、がれきまみれになる街、徐々に目立ちはじめる屍の数々。
ソフィアは? 家族は? 私はパニックになっていた。
「マナ!!」 一番聞きたかった親友の声。
「ソフィア! ソフィア!」 泣きじゃくる私を抱きしめながらも、彼女はこう言った。
「落ち着いて、マナ。とにかく逃げよう。避難所へ行くよ。」
こんな平和な街にも、シェルターはあるのね。と彼女は軽口を叩く。自分も怖い思いをしているのに、私を落ち着かせようとしてくれている。
「マナ!! ソフィアちゃん!!」 懐かしい母の声。
「お母さん!」 よかった、無事だった。父も一緒になって泣きながら再会を喜ぶ。
しばらくして母が重い口を開く。
「ソフィアちゃん、ついてきてもらえるかしら?」
母がソフィアをつれて避難所の一室に来た。ここには毛布やシーツなどにくるまれた遺体が安置されていた。
「嘘… お父さん…? お母さん…? ねぇ、嘘なんでしょ? みんなで私を驚かせようとしてるだけなんでしょ? ねぇ、起きてよ! 起きてってば!! 嘘よ… こんなの嘘よ… どうして、どうして、こんなことに…?」 その場に泣き崩れるソフィア。
ソフィアのご両親はテロの犠牲となってしまったのだ。
泣きじゃくるソフィアになんて声をかけていいかわからなかった。何も言わず、泣きやむまで抱きしめ続けた。一緒に泣きながら。
気付くと朝になっていた。ネオ・アソシエイトはもう撤退したみたいで、街はがれきまみれで荒廃しきっていた。
「マナ。私、地球連合軍に入る。」
「え? どうしていきなり…」
「街も家族も奪った、ネオ・アソシエイトに復讐するの。」 その時の彼女の眼は今まで見たなかで、一番暗かった。氷よりも冷たい眼だった。
それ以来、ソフィアは私の家で暮らしながら、軍人を目指し始めた。
そして二年後。
「マナ。そしてみなさん。いままでお世話になりました。ソフィア・オーガスト、地球連合軍第二師団に配属となりました!」
久しぶりに見た眩しい笑顔を浮かべ、嬉しそうにしている。私は彼女の希望が叶ったことに祝福したい反面、戦火に身を投じようとしている彼女をとても心配していた。
これを記念した祝勝会の時も浮かない顔をしていたことに彼女は気付いたのだろう。
「マナ、大丈夫だよ。私は死なない。必ず生きて帰ってくる。心配いらないわ。」
「ソフィア。 絶対よ? 約束だよ?」
「うん、約束。マナはどうするの?」
「私は、ジャーナリストになって戦争の現状を世界の人々に伝えたい。」
「そっか。じゃあどこかで会えるかもね。」
ソフィア・オーガストは、エデンガルド戦争の中心へと飛び込んでいった。