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緊急イベント 1

 緊急イベントを開始させてから30分。

 レベル1のままゴーレム材料のクエストを受ける冒険者が続出している。

 取り敢えずスキル振りを考えながら材料集めを5回して、そこから道場に篭ってスキルを振って、それからレイド。と言う流れなのだろう。

 元々冒険者の準備には数時間かかると思っていたんだから、予想通り。

 クエスト時間いっぱいゴーレム材料クエストをする冒険者も出てくるだろうし、結局戦える人員はある程度集めておく必要があるか・・・。

 防御型ゴーレムと、攻撃型ゴーレムの2体を各町に召還するには、一体どれだけの材料が必要になるんだ?

 全ての町を守る事は新しく世界を任された闇の女神の仕事。ここをしっかりとしておかなければ冒険者だけではなく、冒険者以外の人の信用まで失う事になる。しかし、全ての町を同時に守る事は不可能。優先順位を、決めなければならない。

 「首都を中心にゴーレムの配置を。初期村にいる村人を首都に非難させて!」

 村を見捨てる訳じゃない。

 初期村周辺には弱い敵しか湧かないから、村を守る警備兵のレベルは他の町に比べると低いし、人数が少ない。初期村にいる冒険者のレベルも低いからレベル70のレイドが襲い掛かって来たら戦うよりも逃げた方が被害を抑えられる。

 だけど、一旦村を捨ててしまったら・・・闇の女神に対する不満や反感が生まれるだろう。

 光の女神の迷惑な置き土産を、闇の女神バンザイな雰囲気にするには、襲い掛かってくるレイドを全て倒し、全ての町や村を出来るだけ無傷で、被害者も限りなく0でしのがなければならない。

 どんな無理ゲーだよ!バカ!

 「女神様は俺が守ります!」

 何か他に良いアイデアが出ないものかと忙しく動き回っているマエストロ達を眺めていると、急にそんな男前な台詞が少し下から聞こえてきた。

 視線を下げると、私の足元には跪いているアオリがいて、物凄く熱い視線で見上げてきていた。

 こうしてみると、本当にイケメンだわ・・・いつもそうやって力の宿った目をしていれば良いのに。

 「私も、この町を守ります!」

 そんなアオリの隣に跪いたのはマーヤ。

 この2人は本当に闇の女神を心待ちにしていた・・・私が私だってバラしちゃいけない子達。だけど、闇の女神らしい返答ってどんな感じ?

 いや、私の中にいるんだから予想する事は容易い。

 どうせ、熱い視線を向けられても、深い信頼を寄せられても、出来る奴が出来る事をしろ。とか言うに違いないんだ。

 現に私がそう言われてるからね!

 アサシンになれば良いなんて、よく言えたものよ・・・まぁね、冒険者が好きなように強さを求められる世界を見守る女神様。だから、なにも可笑しくはないんだけど・・・。

 いや、それにしたってよ?初めから、何から何まで人任せ過ぎない!?これじゃあ私が本当に闇の女神になったみたいじゃない?

 依り代なんだからそうなんだけど!主人格?ってのは普通闇の女神が持って行くんじゃないの?

 それとも、この置き土産をどう凌ぐか見るつもり?

 世界が最大の混乱に陥っている時に・・・だからこそ?

 あーもう駄目だ。アサシンになりたい私は力押し好き。考えてたって良いアイデアなんか出ないわ!

 だったらレイド討伐に繰り出すのみ!

 「アオリはレイド討伐に。マーヤはプレーヤーがログインするまで村人を非難させて。オッサンは?」

 自分の経験値獲得チケットとスキルポイント獲得チケットを全て使用し、スキル振りをしながら道具袋の中から装備出来る防具と武器を取り出す。

 「オッサン・・・?」

 将来はアサシンになるつもりなので、選んだ職はグラディエーター。防御は少しばかり弱いし、短剣か短剣二刀流しか装備出来ないけど、それを凌駕する程の攻撃特化クラス。スキルを防御系に振ればそれなりには硬くもなるけど、そこを全攻撃振り!

 「お呼びですか?」

 やっと来たオッサンのレベルは90のソウルテイカー。今までスキル振りやらで忙しかったと見える。

 「光のレイドは何故襲い掛かって来てるの?」

 光の女神を封じた冒険者が憎いから襲い掛かって来ているのか、それとも光の女神の意思が存在しているのか。

 なんにせよ、少しでも光のレイドによる破壊行動が成功してしまうと私の信用はガタ落ちだ。

 「今町に向かって来ているのは、光の女神がイベント用に作らせたレイドです。インスタントダンジョン用とお考えください」

 あぁ、分かりやすい説明で助かったよ。

 作られたレイドがダンジョンではなく外でウロウロしているんだから異常事態ではあるけど、イベント用と聞いて少し安心したわ。

 イベント用は、例外なくHPが低い。

 「インスタントダンジョン用で、闇属性のレイドは作れる?」

 「可能ですが、緊急メンテが必要になってしまいます・・・」

 却下だわ!

 ただでさえメンテ時間が延びているのに、緊急メンテなんて混沌しか生まない。

 急いでスキル振りをしている冒険者だって少数ながらにもいるだろう。それに、イベント中に緊急メンテなんてしたら、イベントのやり直しは免れない。

 そもそも、スグそこに迫ったレイドを前にメンテなんて自殺行為も良い所だわ。

 「じゃあ、倒した光属性のレイドを闇属性にして操る事は?」

 倒した屍を操るのはネクロマンサーの得意技、そのネクロマンサーの上位職であるソウルテイカーに出来ない訳ないよね!だけど、属性まで変える事が出来るのかどうか・・・魔法職に興味がなかったから、全く分からないわ。

 「操っている時点でその者の属性はアンデット。闇属性に間違いないです」

 あぁ、確かにそうね。

 なら何の問題もない。光のレイドを倒し、それを操り闇属性に変えて戦わせる・・・物凄く派手な演出。

 光の女神の時代から、闇の女神の時代に変わったと視覚的にハッキリと知らしめる事が出来る。

 こんな大掛かりな宣伝、世界の平和をかけたイベント、失敗に終わらせる訳には行かないわよね?

 だったら、さっさと行こうじゃないか。

 「町中にレイドの侵入を許すなよ?」

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