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レベリング 2

 アオリに抱き上げられた格好のまま初期村にやって来た所で、激しく緩和された内容の初心者クエストをササッと終わらせた。

 次は1次転職だが、それにはレベルを上げなければならない。

 武器は初心者のソードと言う初期装備、防具は皮の鎧。

 その鎧ですら物凄い重量だと言うのだから歩けるだけでも奇跡に近い。だったら、いっその事外してしまおうか?

 ヘイトはアオリが取ってくれると言ってるんだから、攻撃力皆無の私がターゲットにされる事はまずないし、ここには遠距離攻撃をして来るような強敵もいない。

 後は、初心者のソードも外そう。

 剣を持ち上げる事すら出来ないんだから、持っていたってしょうがない。それなら重たい体での踏み付け攻撃の方が余程の攻撃力になる。

 「なっ!どうして装備を!?」

 はっ!私とした事が!こんな若者の前で装備品を全て取り去ってしまうなんて!

 じゃない。

 ちゃんと普通のシャツは着ているんだから、装備品を外した所で一般人と変わらない姿になるだけ。恥ずかしくもなんともないわ。

 「さ、ヘイト頼んだよ!」

 ウサギのような可愛らしい敵を踏み付けるのは心が痛むけど、これはこの世界のモンスター。1匹村に入り込むだけで大変な事になってしまう。それに、良く見ると牙とか爪とかが恐ろしく尖っているし、反撃をして来る素早い動作は可愛らしい小動物ではない。

 ピローン♪

 ブレスレット型通信機から聞き覚えのある音が聞こえた。

 これはレベルが上がった時の音に間違いない。

 「ちょっと、休憩」

 丁度良い切れ目になったので、ドサリと倒れ込むと、アオリは集まってきていた敵をたったの1撃で一掃してしまった。

 私も、あんな風に強くなる事が出来るのだろうか?それも次のメンテまでに・・・いや、少なくとも2次転職までは行かなければ!

 まだレベル1桁だから、果てしなく遠い・・・休憩なんかしてる場合じゃないのに、動けない。

 動かなくても敵が倒せる方法はないものか?

 アオリとパーティーを組んでしまうとレベル差の影響を受けて私に経験値は入ってこない。だからこうしてパーティーを組まずにヘイトだけかけてもらっているんだけど、それじゃあ敵1匹倒すのに時間がかかるし、時間がかかるから疲れるし、効率が悪い。

 動かなくても良い戦い方?石でも投げる?いや、投げているなら結局動いてるか・・・もっと簡単な方法はないものか?

 あ、そうだ!

 「アオリ、乗り物でバイクがあっただろ。手に入れられるか?」

 ゲームシステムを完全無理出来るんだから、なにも全うに戦わなくたって良い筈だ!用は私が敵を倒せば良いのだから、バイクで轢くだけでも倒した事になるかも知れない。

 「ちょっと、待って下さい・・・あ、先に村に戻ります」

 村に戻り、広場に腰を下ろして通信機で喋るアオリの背中を眺める。

 ああやってピシッとしてたらただのイケメンなのに、どうしていつも俯くのかねぇ?表情だって暗いし、もっと笑えば良いのに。

 この世界に絶望して闇の女神を起こそうって考えたんだから、明るく出来る余裕がないのかな。だとしたら、今の私はなんだろうか・・・。

 絶望しなきゃならないのは寧ろ私の筈。それなのに、このザマだわ。

 真面目にレベリングしていた筈なのに、少し自由時間が出来ただけで全く関係のない事を考えてしまっている。

 次のメンテで自分の命が消えるって言われているのに。

 「他人事、なのかなぁ」

 完全に自分の事なんだけどね。

 この世界の事が現実だって受け止め切れていないのかも?いや、これだけ長期間こっちにいて、今更それはないわ。

 「サヤさん。バイクの調達が出来ました」

 休憩時間は終わりだ。早速バイクの改造に取り掛かろう。

 村の外でバイクを召還して見ると、それは想像していた以上に巨大な乗り物だった。

 そう言えば、乗り物として呼び出した馬も物凄い大きさだったっけ。

 これなら改造しなくても充分殺傷能力が高そうだ。

 「行くぞ、アオリ」

 「え!?あ、はい・・・どこへ?」

 よじ登るようにしてバイクに乗ってハンドルを握ると、ポーンと後ろに飛び乗ってきたアオリは、何処を持てば良いのかを相当な時間悩み、結局私を後ろから支えるように抱きしめた。

 始めはゆっくり、ゆっくりと安全運転だけを考え、運転に慣れてきた頃敵の殲滅を開始させる。しかしゆっくりなのでサッと避けられる事が多い。

 「ヘイトしてみて」

 私が何をしようとしているのか、早い段階から気が付いていたアオリは、コクンと頷くとヘイトを唱えてくれた。すると、バイクに向かって敵が集まる事集まる事!

 私は、ただゆっくりとアクセルを握っただけでレベルが1つ上がった。

 軽いな。

 何がって、レベル上げもそうだけど、体が。

 レベルが上がると筋力も上がり、四方からかかっていた圧力に耐えられる体になっていくようだ。なら、もっと、もっとレベルを上げて、普通に歩ける位までにはなろう!

 今日中にだ!

 「わっ!ちょっ・・・サヤさん!?」

 ブォォォン、ブォォォォン。

 ふふ、良い音じゃないか。私は免許は持っていないが、バイクに憧れを持っていたんだよ。それを、こうして乗り回せる日が来るなんて・・・大声で叫んじゃっても良いかな?無性に叫びたくなったんだ。本当に1回だけで良いから、心の奥底から!

 「ヒャッハー!」

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