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レベリング 1

 動き難い体を引きずり、私は冒険者登録をするべく道場の受付にいる。

 オッサンが言うには職種は何でも良いとの事。

 だったら短剣二刀流!アオリと職種は被ってしまうんだけど、短剣二刀にかける想いは止められない!

 「ファイターで登録お願いします!」

 順番が来た瞬間希望を伝えると、受付にいる人物はなにやら真剣な表情で私を眺め始めた。

 まだ闇の女神が中に入っていないのだから、私はそんじゃそこらの町人よりも遥かに弱い一般人。可笑しな所など何処にもないし、レベルを1に戻す必要だってない筈なのに、どうしてこんなにも時間がかかっているんだろうか?

 「冒険者経験は1回もないですか?」

 アオリのプレーヤーとしてなら長い間冒険者をしていたけど、この体は全くの未経験。色々とシステムの事は分かるし、世界観すら完璧に分かっているのに完全なる素人。

 「ないです。レベルも1ですらなくて0です!」

 こうして登録を無事に終えた私は、冒険者ならば誰もが持っているブレスレット型通信機を受け取った。

 「プレーヤーが決まるまで自由になさっていて結構です。ただし、レベルが上がってしまうとレベルを下げなければなりませんので、狩場には出ない方がよろしいかと」

 長々とした注意事項を聞き流し、光の神殿に向かった。

 正確には、光の神殿の階段の裏にある扉の前まで。

 そこにはオッサンだけではなく、アオリも、マーヤもいて、ヨタヨタと歩いて行く私を眺めている。

 冒険者になったのだから、これからの事を聞きたいんだけど、こんな重たい体で受付まで行って、順番待ちして、ここまで歩いて戻って来たんだ。体力が持たないわ。

 「オッサーン、これから何したら良いのー?」

 ドカリとその場に座り込んで声を上げてみると、四方八方からの圧力を諸共せずに声だけは普通に出せた。そう言えば、冒険者登録の時も声に不自由はしなかったっけ。

 余程オッサンと言う単語が気に入ったのだろうか、マーヤは笑い出し、アオリは困った顔してオッサンと、笑っているマーヤと私を順に見ている。

 ソウルテイカーにとってあのオッサンは偉大な人物なんだろう。儀式の時だって真ん中で呪文唱えたりして、中心人物っぽかったし。

 しかし、とんでもない事になってるわ。

 始めはただ闇の女神を復活させて、光の女神と対峙させて、新しい世界を新しい神の元でーとか考えてたのに、その闇の女神が私の体を使って復活するとはね。

 今の私は魂半分状態で、後の半分はアオリの中。

 闇の女神が復活したら冒険者達の魂は戻らないって事だから、闇の女神が復活しても私の半分はアオリの中で生きてる事になる・・・果たして私は完全に消えてしまうのか、存在を示せないだけでアオリの中に残るのか、それとも闇の女神の中に残るのか。

 なんにしたって次のメンテまでは何も分からない。

 可笑しいよね、全然怖くないってんだから。

 「サヤ。今から出来るだけ多くの経験を摘み、冒険者として成長して欲しい」

 オッサンは大袈裟に杖を振りながら、それっぽい言い回しでレベル上げをしろと言ってきた。

 ついさっき受付でレベル上げはするなとの注意を受けたばかりだと言うのに、正反対の事をしろと?それで強くなって、プレーヤーが現れたらどうすんのさ!結局レベル1に戻されるだけでしょ?

 今までプレーヤー側だった私に、レベルを下げられる経験をさせようって悪趣味な目的でもあるのだろうか?

 それなら、まぁ・・・受けて立たなきゃならない。でも、最大の難関がある。

 「こんな体でまともに戦えると?こんな弱者にやられてくれる心優しい敵でもいるの?」

 受付まで行って、帰って来るだけの散歩ですら途中で体力が切れる程。それなのに剣を振り回せって?

 闇の女神復活の前に私を殺したいのか?

 「俺がヘイトしますので、初期村周辺の狩場へ行きましょう」

 顔を伏せるアオリがそう言いながら私の手をとり、フワリと抱き上げると、

 「転職に必要なアイテムは私が調達してくるわ」

 と、マーヤがゲームのルール無視発言をした。

 普通、転職に必要なアイテムは取引不可だし、転職をしたい本人でしかクエストを受注できないようになっている。それに、私を憎んでいる筈のマーヤが協力してくれるのは、なんだか不自然だ。

 「手伝いたくないなら、無理しなくて良いよ」

 手伝う事は闇の女神の為なんだろうけど、今はまだ私。ソウルテイカーは他にも沢山いたし、アイテム調達は別にオッサンでも出来る・・・のかな?

 「無理なんかしてない」

 え?

 「私を恨んでるんでしょ?」

 だって、私はたった1時間でマーヤを破棄した。この世界を知った今なら、その行為がどれだけの罪になるのか理解できる。

 私が闇の女神になるから?だから無理してないって言ってるだけなんでしょ?

 かなり重たい頭を起こしてマーヤを正面から見つめると、真っ直ぐな視線で見返される。そして近付いてきて、私の手を握ったんだ。

 「・・・アオクンとしての貴方は見せてもらった。だから、次はサヤとしての貴方を見せて欲しいの」

 私として?そこ闇の女神じゃないの?

 メンテまでのレベリング、どこまでやれるか見せてみろ。そう言いたい訳か。残り1週間もない時間・・・良いだろう、私の全力を見せてやろうじゃないか!

 「マーヤ。2次転職で使う分のアイテムも頼んだからな」

 元廃人神プレーヤーの実力、思い知るが良い!

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