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光と闇 1

 右手で力いっぱい握り締めたローブ姿の人物の腕、絶対に逃がさないと左手でローブも掴み、思い切り睨みをきかせる。

 本当は睨むんじゃなくて聞きたい事がいっぱいあるんだけど、とにかく頭がパニックになっていて何も言葉が出て来ない。そんな頭でも確実に分かっているのは、逃がしては駄目だという事。

 何の根拠もないが、コイツがソウルテイカーだと思うからだ。

 「申し訳ないが、私の仲間を離してくれないか?」

 何の気配もなかった所から不意に声がして、慌てて視線を向けると、コイツと同じローブを着た40代位の男が立っていた。

 男は、仲間から手を離してくれと頼んでくるばかりで、私の手を無理矢理にでも離させようという動きもせず、両手を後ろに組んで立ったまま動かない。

 フードを被っていないのでいくらか信用できるか?いや、顔が見えるってだけで警戒を解いてどうする?しかし穏やかな表情のこの男が悪い人に見えない。

 しっかりしろ私!コイツを仲間だと言ったのだから、この男もソウルテイカーである可能性は高いんだ!

 「駄目だ、逃げる気だろ」

 折角見つけた手がかり、そう易々と手放してたまるか!

 こいつが私に一体何をしたのか、アオリをどうしたのか。それを聞くまでは戦闘不能になってもこの手を離すものか!

 「この子はあまり体が丈夫ではない。日陰に連れて行きたいのです。貴方もご一緒に、それならば良いでしょう?」

 日陰に?あぁ、確かに日差しがきつくなってきた。

 体が弱いのか・・・だからフードを深々と被って?それに掴んでいる腕は華奢だ。

 ソウルテイカーって魔法職だもんな、直接敵を殴ったりしないからこんなに細くても問題ない・・・にしたって体が弱いのは駄目なんじゃないか?

 こちらへ、そんな言葉で案内されたのは町から死角になっている木陰で、スグ後ろは庭園になっていた。この2人は普段庭師として生活しているのか?いや、それなら直射日光が駄目なこっちの子は無理だよな。寧ろ体が弱いんなら家帰って寝てなさい!

 しんどいだろう体で何をして・・・盾に映っていたチームルームの入り口を見ていた?何の為に?まさか、皆の魂を全部奪おうとしている訳じゃないだろうな!?もしそうなら、体が弱かろうがなんだろうが私が相手になるぞ!何の呪文も唱えられないように口を塞ぎ、杖が持てないように指を全部頂く!

 「そんなに怖い顔をせずとも、その子にはまだ何の力もない」

 何の力もない?それはソウルテイカーではないという事か?

 まだ、と言っているんだからソウルテイカー見習いって所か・・・それとも、まだ冒険者でもない?

 冒険者になった時点で魔法職ならヒールが、近接職ならヘイトが使えるようになる訳だから、何の力もないという説明は可笑しい。

 体が弱いらしいし、病気か何かだろうか?だったら元気になるまでは冒険者にもなれないと?

 私は一体なにを考えているんだろう。ソウルテイカーかも知れないコイツの事を深く考えるなんて無駄。力がないからといって見逃せる訳がないんだから、力をつける前に倒す。それがこの世界の為でもある。

 「先に私達の話を聞いてくれませんか?それで貴方の意思が変わらなければ、その子の代わりに私を、どうぞ好きにしてください」

 物腰は柔らかい癖に、男は私の腕を掴みあげると体が弱いと言うフードを被った奴を自分の後ろに隠してしまった。この男にとってアイツは大事な存在と言う事か・・・。

 待て、先に確認したい事があるのは寧ろ私の方だ。

 話を聞けだの、意思が変わらなければ好きにしろだのと言ってる時点でほぼ間違いはないんだろうが。

 「お前らはソウルテイカーなのか?」

 私の問いに対し静かに頷いた男の案内で光の神殿の入り口まで続く階段の、丁度真下に連れて来られた。

 こんな体育館裏みたいな場所で話しをするのかと思ったらそうではないらしく、階段の裏手には1枚の古い木製の扉があった。どうやらこの奥に部屋があるようだ。

 闇の女神を復活させようと言う集団が、まさか光の女神を祭った神殿の裏にいるとは・・・。

 どうぞと言われて中に入ると、そこは古びた部屋でも、豪華な部屋と言う訳でもなく、ただ真っ白な空間が広がっていた。

 階段の裏手にあった扉の中に何故こんな空間が存在している?いや、そうじゃない。これは、この空間は私がこの世界に来る時に通った場所だ。

 この空間の何処かに元の世界に戻る出口が?

 元の世界に戻ってどうする?この世界に起きている事を全て知って、何も解決出来ないまま帰るのか?そしたらアオリはどうなる?この体にアオリの魂は残ってないんだ。

 出口を見付けても、今は帰る訳には行かない。アオリを見付けるまでは、帰らない。

 「ほぅ、走り出すと思っていたが」

 走り出す?元の世界に帰ると思っていたのか。という事は、この男は私がどのようにしてこの世界に来たのかを知っているんだな。

 話を聞いてくれとここに連れて来たのはこの男。なら、全ての説明をしてもらおうじゃないか!全てを聞いて、それで私の意思が変わらなかった時はお望み通り倒してやる。この男も、フードを被ったアイツもだ!

 「まず始めにありきたりな事を言わせてもらう。光があるから闇がある。闇があるから光は輝く、と」

 うん、ありきたりだわ。

 それで自分達を正当化出来るとでも思っているんだろうか?冒険者の魂を半分抜いてる行為は、誰がなんと言っても悪だ。まさか、またありきたりな“完全な悪がいてこそ完全な正義が生まれる”とか何とか言い出すんじゃないだろうな?

 「闇のない光は、ただの暴君である」

 おっと?なんかちょっと違う。

 闇の女神が封印されているこの現状を嘆いているだけ?闇の女神を封印した光の女神を暴君と呼んでいるだけか・・・。

 この世界にとっての正義とはなんなんだろうか?いやいや、だからって魂を半分奪って良いって事にはならない。

 「前置きは良い。本題を聞かせろ」

 何を聞いたって私の意思は揺るがない。何を言われようとも、この場でこの2人のソウルテイカーを仕留めてやるんだ。

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