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イベント 1

 メンテナンスが明けると、新しいイベントが始まっていた。

 プレイヤーズサイトの観覧が不可能な私に代わり、イベントの概要を説明してくれたレオナによると、イベントは大きく2種類あるようで、どちらかにしか参加出来ないらしい。

 1つは各地に赴いてソウルテイカーの痕跡を見付けようツアー。そしてもう1つはレベル80以上で3次転職済みの人しか参加出来ない大会。

 ソウルテイカーを見付けよう☆なんて軽いノリで良いのか?けど楽しそうなイベントでなければプレーヤーは参加しないだろうし、これは別に良いとして。2つ目の大会ってなんなんだろう?どんな事をするのかと言う詳しい説明はないらしいが、その報酬はソウルテイカーを見付けようツアーよりも遥かに豪華なアクセサリーボックスだ。

 アクセサリーボックスと言うのは、簡単に言うと宝箱なんだけど、その中身が必ずボスからドロップするアクセサリーと言う超高級品。レア運も、ドロップ運もない私にとっては、またとないチャンス到来だ。

 ソウルテイカーは見付けて倒さなきゃならない。それは分かってるんだけど、それには装備品もしっかりとしたのが必要になる筈で・・・だったらこのアクセサリーボックスは欲しい。

 「強制はしないから、どっちか好きな方を選べ」

 だったら本当に大会の方に行こう!

 「アオリさんはどっちに行くんです?」

 細かいイベントの情報が掲示板に出たと言うのでメニューを見ていると、チョコンと私の前にしゃがみこんだアカネが見上げて来た。

 メニュー画面から少し視線を下ろすと目が合い、ニコリと笑い合った。

 「大会に行くつもり」

 プレーヤーがログインしている間も皆の意識はある、だったらプレーヤーには分からない方法でコミュニケーションはとっていこう。そんな話し合いをメンテナンス中にしていたんだ。

 「え?そうなんですか?けど、報酬はアクセですよ?」

 なに、そのアクセサリーをかなり軽く見た発言。

 そりゃー皆は良いよ?ボスに行ってアクセサリーが手に入るんだから。けど、だけど私は・・・今現役で使ってるアクセサリーは、2次転職後に全員がもらえるボーナスアクセサリーなんだよぉ~!

 確かに2次転職直後はそこそこ使えるが、目立った特化性がないから3次転職後にもなると、全体的にちょっと魔法防御は強くなるけど、属性が乗っかった攻撃は知りませよ?でもナイよりはマシでしょ?と言わんばかりの性能しかないんだ。

 「アクセサリーボックスでしょ?なら行くしかないですよ!」

 参加すれば必ずもらえるんだ、1番しょぼいのが出たって今のよりは格段に良い物なんだから、行って損する事なんて1つもない。

 「そんなにアクセが欲しかったんですねぇ・・・良い物がもらえると良いね☆」

 もちろん欲しいさ!むしろ、いらない人なんかいないでしょ。あ、でもアカネはソウルテイカーツアーに参加する感じだ。

 「その言い方だと、アカネはソウルテイカーツアー?」

 アクセサリーボックスを蹴ってまでソウルテイカー探し・・・この世界を本気で救おうと言う強い意思を感じさせる。

 本当ならこっちの世界に連れて来られた私がそうあるべきなのに・・・いやいや、でもドラゴンアクセサリーが出れば闇魔法の防御がドンと上がるんだ。この世界の敵は闇の女神、だったら闇耐性のアクセサリーは必須!

 「はい!ツアーの報酬は武器強化成功率プラス30%ですよ!この杖を強化したいと思っていたので、物凄くラッキーです!」

 ソウルテイカー関係無しですか、そうですか。

 キラキラと目を輝かせている所申し訳ないけど、武器強化成功率20%アップならインスタントダンジョン報酬の宝箱から結構出るだろ?それを使ってもガンガン失敗してるって嘆いてたじゃないか。それが、たった10%アップしただけのアイテムで、果たして成功するのかどうか・・・けど、価値観は人それぞれだし口を挟むのは止めとこう。

 「3次転職済みのキャラだけなんて、酷いですよ・・・私、アオクンと一緒に行きたかったよ~」

 イベントの概要を読み終えたらしいマーヤが私とアカネの所に走ってくるなり嘆いた。

 報酬がこんなに良いんだから、きっと3次転職を終わらせていなければ耐え難い何かをさせられる事になるんだろう。だから大会として内容は伏せているんだと思う。

 この世界にとって重要なのは闇の女神の復活阻止。それを行おうとしているソウルテイカーの排除は、何よりも優先的にしなければならない筈。そのソウルテイカーツアーの参加報酬が武器強化率プラス30%と言う消耗品であるのに対し、大会はアクセサリーボックス。ソウルテイカーよりも更に危険な者の調査かなにかとするなら、それは闇の女神自体の捜索だろう。

 「その気持ちは分かるよ、マーヤちゃん。でもね、アオリさんはアクセが欲しいんだよ・・・装備した所、見たいよね」

 装備した所と言ったって、アクセサリーなんて細かい装備品、画面越しだとそんなに見えないだろ。リング系なら間違いなく見えないし、ピアス系も髪で隠れて見えない。ドラゴンアクセサリーの首飾りならゴツイから見やすいかも。って事は、ドラゴンアクセサリーを引き当てろって事ですか!?ハードル高っ!

 「私も欲しかったんですー」

 そりゃードラゴンアクセサリーはかなりのレア度だし、他のアクセサリーと比べたって性能が断トツで良い。今ある全アクセサリーの中で1番良い物なんだから、誰だって欲しいだろう。

 まぁ、それを蹴って武器強化率アップ30%を選ぶ奴も中にはいるんだけどな。

 「イベントが終わったらきっと安く個人商店に出してる人がいるよ。後で一緒に首都までお買い物行こ!」

 何でそうアクセサリーをかなり下に見てるんだ!そりゃー出土数に応じて値段は多少安くなるかも知れないけど、それでも億単位の値段はすると思うぞ?ソレを後で買えば良いよとよくもまぁ軽く言えたもんだな。

 「はい!あ、あの。アオクンも一緒に・・・」

 あぁ、ここで嫌ですよ、とか言ったらきっとあの声が聞けるんだろうな、とか思いながらも、

 「うん、行こう」

 と答えたのには少し理由がある。

 マーヤは、プレーヤーがログインしている時はこんなにも明るく喋る子なんだけど、プレーヤーがいなくなると・・・目付きが少し鋭くなる。まだ私達に慣れてくれていないせいだと思うから、わざとビックリさせるのは止めておこうと自粛したんだ。

 「だったらアタシも行こう。アオリと同じアクセを買うのも良いな」

 私達の輪に、またもやアクセサリー軽視発言を繰り出す奴が入ってきた。でも、文句が言えない。ニヤニヤと私の隣に立っているレオナのアクセサリーは、あの最高級品だと説明したばかりのドラゴンアクセサリーだからだ。

 盾職に対する責任感が物凄く強いレオナは、あのインスタントダンジョンボス強化バグ以降、アクセサリーだけじゃなく防具も現存しているシリーズの中でも最高級品を装備している。しかも、フル強化済み。カンストのタンカー本職スキル振りな上にこの装備だ、私が全力で攻撃したってビクともしないだろう。

 「黒ビキニで良いなら俺も行くぜ」

 ここにきてやって来たのは黒ビキニ姿のブラック。しっかりと腰に手を当てるポーズをとっている。するとブラックの後ろからやって来たレモンが空かさずに、

 「あんたいつまでソレ着てんのさ」

 と、話に加わった。

 「5千円使って出たコスがコレだけだったのー。勿体無いから5千円分着続けてやるんだ!」

 なるほど。しかし5千円分と言うのは時間に直すとどれ位になるんだろうか?いや、それよりも恐ろしい運のなさだ。5千円分もスクラッチを回して、金策に使える女性物水着が1枚も手に入らなかったなんて・・・リアルマネーが絡んでの運のなさは、泣いて良いと思う。

 「はいはい、金策大失敗談は良いから、さっさとイベント行くぞー」

 サラッと酷い発言をしたレオナがイベント参加に向けての最終準備に取り掛かると、レモンも倉庫に向かって行った。こうなるともう全員が準備に向けて倉庫にぞろぞろと向かう事になるのだが、気になるのはズバッと切られてしまったブラックだ。

 「ハッキリ言われちゃったね」

 アカネよ、それはフォローになっているのか?

 「ちきしょ~~~!」

 ブラックの雄叫びに見送られ、私は1人大会イベントに参加するべく初心者村に向けて移動を開始させた。

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