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レア運 2

 「毒蜘蛛討伐、職不問っと。これでよし」

 パーティー募集用掲示板に書き込む前に最終チェックして読み上げ、書き込むボタンを押す。すると間もなく2人パーティーに参加してきた。

 「今日もよろしく」

 挨拶をくれたのはレオナと言う女性キャラで、私が募集をかけた時には毎回参加してくれているナイト職。

 毎日盾役をしてくれるから他にどんな人が来たって安心してタンカーを任せられる“頼れる姉御”って感じの人。

 「こちらこそ、毎日ありがとうございます。今日も現地集合でお願いします」

 一応現地集合と声をかけ、毒蜘蛛がいる霧の沼地から1番近い町に向かう。

 パーティーメンバーの現在地は見えるんだけど、初めから霧の沼地にいると「そこの最寄り町は何処ですか?」なんて質問を受ける。だからこうして町で待つ。だったら現地集合じゃなくて町に集合でも良いんじゃないか?って事なんだけど、そうはいかない理由がちゃんとある。それは、テレポーター。

 チームに所属していれば、そのチームの功績に応じてテレポーター使用料が割り引かれたりするんだけど、何処にも属していない人は結構な金額を取られてしまう。

 安く霧の沼に飛べる人はテレポーターを使えば良いし、そうでない人は現地まで走る。だから現地集合と言う形が1番平和という訳だ。

 「いや~、昨日ようやく素材が揃ってね。今日、これが終わったら鍛冶屋だよ」

 と、ケントと言う男性キャラがパーティーチャットで喋りかけてきた。

 この人も毎日参加してくれているんだけど、もう素材が集まったのかぁ良いな・・・コレが終わったら鍛冶屋に行って合成か。着いていって見せてもらおうかな。

 「合成見せてもらって良いです?」

 「勿論良いですよ。そう言えばアオリさん、このダガー欲しいんでしたっけ」

 勿論ですよ!欲しくないならこんな毎日パ-ティー募集して毒蜘蛛討伐に行ってません。しかも私はまだ素材を1個も手に入れてないから、下手をすればわざと死に戻ってレベルが上がらないように調整する必要があるくらい。

 「かなり欲しいんですよ。とは言っても素材なんかまた1個も出てませんけど」

 その他に必要な鉄とか、研磨剤とかは、他のクエストのクリア報酬だったりするから余るくらい揃ってるんだけど、肝心な素材だけが延々手に入らない。

 「1個もか!?」

 既に現地に向かって徒歩移動を開始させていたレオナが、かなりビックリした風な発言をする。やっぱり私のレア運はかなり低いようだ・・・。

 だったら、毒蜘蛛退治が出来ないレベルになった時は大人しく個人商店に並んでいる完成品を買うとしよう。そうだよ、このボス討伐で手に入るのはなにも素材だけじゃない。かなりゴミだけど他の物だって出るから、それを売れば多少は儲けられるし、お金もドロップするんだから完成品を買える位稼げている筈だよね!

 「アオリさん、レオナさん、ケントさん、こんばんはー。今日もよろしくですぅ」

 そう全員に挨拶をしながらパーティーに参加してきたのは、これまた毎回参加してくれているアカネと言う魔法職の女の子キャラ。

 このいつものメンバーで盾とヒーラーがいるんだから、後は本当に職不問で構わない。ヒーラーが増えると少々火力は減ってしまうが、このケントってのが極端なまでの火力重視スキル振りだから、そこも大丈夫。だったら・・・後5分位待って誰も来なければ4人で行ってしまおうかな?

 「こんばんはー。今日も現地集合でお願いします」

 こうして10分後、更に2人がパーティーに参加してくれた所で募集を打ち切った。

 後から来た2人は完全に始めて組む人で、レベルも低い事からきっと今日が始めてのボス退治なんだと思う。少なくとも毒蜘蛛討伐は初めての筈だ。

 「では、今から霧の沼地に向かうので、着いてきて下さい」

 こうして無事に霧の沼地入り口に全員集まる事が出来たが、ここから毒蜘蛛のいる場所までが少し厄介だ。私やレオナ、アカネ、ケントの4人だけなら問題はないのだが、後の2人はきっとこの狩り場さえ初めてだったんだろう、アクティブな敵に近付いて攻撃を受けていた。

 攻撃を受けているからと反撃しようものなら、傍にいる敵が一斉に向かってくると言う惨事になる。今はレオナがヘイトを使ってくれたからなんとか誰も戦闘不能にならずに済んだが、これが狩場の真ん中だったら?と考えると恐ろしい。

 先にそう説明しなかった私の責任ではあるんだけど・・・。

 「雑魚敵に攻撃されても無視して走りましょう。一定距離離れればタゲは外れるので、一気にボスの所まで行きますね」

 少し遅かった説明をすると、MPの回復がしたいとアカネが座り、レオナもHP回復の為に座り込んだ。

 全員のHPとMP、SPの回復を待つ間、道具袋の整理をしておこう。とは言っても、あまり物を拾わないので整理すべき物が見当たらない。

 これ、レア運ってより、ドロップ運自体がないんじゃないだろうか?

 「アオリさんって、チームに入らないんですかぁ?」

 暇なので掲示板の確認をしていると、隣に座っていたアカネが喋りかけてきた。

 チームに入らないのかって聞いて来ているアカネも、今はどこにも属していない。その理由は前に聞いた事がある。チーム員がある日を境にアカネを無視し始めたらしい。なにが切欠となってそうなったのかまでは知らないけど、それが原因でチームを抜けたと言っていた。そんな話を聞くと、人間関係って面倒だなぁーなんて思えて、だったらこのままソロでも良いかって。だけどこうしてパーティー募集したら毎回来てくれる知り合いがいてくれる。これはもしかするとかなり幸運な事なんじゃないだろうか。

 「俺はレオナやアカネやケントがいてくれるから、それで充分だよ」

 完全に本音だけど、言った瞬間に物凄い勢いで恥ずかしくなる。

 なにを私は堂々と臭い台詞を吐いてしまってんだぁ~~~!

 「私も、アオリさんがいるから今は毎日楽しいよ!」

 今はって所が少し引っかかるけど、楽しいなら良い事だ!私も楽しいよ~!これでレア運が少しだけでもあれば、もっと楽しいんだろうけどね。

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