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スキル 1

 ここまでのストーリーを何とか見終え、それだけなのになにかをやり遂げたかのような清々しさの中、ボンヤリと個人商店をし続けている。

 世界のどこかにはまだソウルテイカーがいて、そいつらか着々と闇の女神復活儀式を行っている。それが大きなストーリーの内容。

 冒険者の目的は、そんなソウルテイカーを見付け出して退治する事・・・ただのゲームだって思っているのと、こうしてこの世界に入ってからだと、同じストーリーでも全く別物に感じてしまったよ。

 復活した闇の女神でも、魔王でもなんでもなくて、元々は同じ冒険者だった人を相手に戦う物語。いや、物語じゃなくて現実な訳だけど。

 職種として選べなくなったと言うのに、どうしてまだソウルテイカーが存在しているのかは、ストーリーを全部見ても分からなかった。そして、魂を全て奪われた人がどうなるのかも・・・アオリの事だってなに一つ分からなかった。

 「あ、アオリさん。見て下さい、私ウォーロードになっちゃいましたよっ!」

 これからどうしたら良いのかを考えていると、満面の笑顔で目の前から走って来るマーヤが視界に入った。

 ウォーロードになっちゃったって、良い事なんだからそんな言い方しなくても良いだろうに。

 あ、装備品が一新されている。

 防具は皮の鎧セットと、武器はブロードナイフか、でも強化済みだからそこそこ良い物だ。レベルはまだ12だけど、装備が充実してるから森の遺跡ダンジョンの攻略なら問題なく行けそう。魔法耐性のアクセサリーは高いし、この際出るまで森の遺跡に篭っても良いかも。

 「森の遺跡ダンジョンのリベンジ行きましょう!パーティーは組まずに行くので、マーヤさんにも経験値が入りますよ」

 始めの何回かは私が完全にヘイトで敵を引き付けて行って、徐々にマーヤ1人で攻略出来るまでに鍛えていこう!

 「ふぇぇ!?良いんですか?」

 あぁ、なんかもうこの鳴き声好きかも知れない。

 不思議だ・・・文字だけだとブリッコしやがって、なんて全く別の感情を抱いていた可能性が高いってのに。

 声とか仕草ってのは大事なんだなぁ。

 「良いんですよ。マーヤさんが育ってくれたら俺も楽出来ますし」

 本気で楽がしたい訳ではなくて、早く一緒にパーティーが組めるようになったら楽しいだろうな~と。でもそれをそのまま言ってしまうと必要以上にレベリングをやりそうだったと言うか・・・。まぁ、森の遺跡まで着いて行きたいのは、単純に私が一方的に心配しているだけなんだから気にしないでもらいたい。

 「アオリさぁ~ん。今からインスタントダンジョンですよ?」

 個人商店の店じまいをしていると、いつの間にか隣にいたアカネがしゃがみ込んで私の顔を覗き込んでいた。

 「え?そうだっけ!?」

 「そうだっけ!?じゃないだろ、ログを見ろログを!」

 チームチャットで喋っているレオナの声がメニュー画面からする。

 ホログラム的で、タッチパネルで、マイクやスピーカーまで内臓なのか・・・恐るべしこの世界!じゃなくて、ログか。

 マーヤと喋っている時の会話の少し前にレオナとレモンの会話がある。この時私はまだストーリー確認していたから聞こえてなかったんだな。だったら掲示板の情報も確認しておこう。森の遺跡ダンジョンに行くんだから初期村近くで戦争が起きていたり、PKキャラがいたら厄介だ。

 PKと言うのはプレーヤーキルと言って、戦争でもないのに他プレーヤーを狙って攻撃して倒してしまう事。そんなPKを専門にしているキャラはカンストやカンスト間際である場合が多く、暇だからとか言う理由で低レベルプレーヤーを倒して遊んでいるらしい。

 そんな暇があるならソウルテイカーを探せよ。と思うんだけど、ゲームだって思ってるんだからそこまで真面目に取り組んでいる人は少ないんだろう・・・下手をするとストーリーを進めていない人までいそうだ。

 あ、インスタントダンジョンのボス強化バグが修正されたのか。って、これは一体どんな原理なんだろうか・・・そもそもここも1つの世界として現実なんだからバグなんか起こり得るのか?

 キャラメイクで男しか作れない~とかいった現象と同じようになにかがあるんだろうが・・・それをちょいちょいと調節してしまえるんだからこの世界の技術者は物凄い天才なんだろう。

 「じゃあ私はソロの方をやっておきますね」

 店じまいを終え、マーヤとアカネの2人を連れてインスタントダンジョン管理人前に行くと、そこには昨日よりもかなり立派な盾を持ったレオナが立っていた。その隣には何故か今日も黒ビキニ姿のブラックがいる。

 「傷薬買いに行ったレモンが戻り次第入るぞ。準備は出来てるな?」

 そんな緊張しなくたってボスの強化は解除されてるのに。いや、でも何があるか分からないんだよな・・・現に昨日は何の前触れもなくボスが強化されていた。今日が通常だと言う保証なんか何処にもない。常に気を張っている位で丁度・・・それは流石に気疲れが半端なさそうだから、そうだ、毎回ボスが強化されてるかも知れないって思っていれば良いかも。

 もし、今日のボスが通常の強さだったら、少し試したい事があるんだけど・・・まぁ、入ってみない事にはなにも分からないか。

 「それじゃあ、ソロ行ってきますね」

 昨日1回クリアーした事で自信がついたのか、特に緊張感も何もなくインスタントダンジョン管理人に向かって歩いて行くマーヤ。

 大丈夫なんだろうけど・・・もし今日ソロの敵が強化されていたら?なんて縁起でもない事が頭を離れない。別に戦闘不能になった所で経験値が減らされるだけで消滅って事にはならない・・・よね?そんなバグなんか実装しないよね?

 はぁ、考え過ぎだって。ソウルテイカーを見付けて倒さなきゃならないんだから、冒険者を減らすような事をする訳ないんだ。だとしたら昨日の無告知ボス強化も、イザと言う時の為に冒険者がどの程度の実力を持っているのかを抜き打ちチェックされただけとも考えられる。

 なんか、そう考えたら一気に肩の力が抜けてしまったよ。

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