Conclusion
[ショ'ーリィ・ファ'ヴド]05・Conclusion
【あなたのSFコンテスト・参加作品】
しばらくの間、僕は真っ暗闇の中で漂っていた。
どれくらいの時間、そうだったかは全く憶えていない。
憶えていないというよりも時間の経過自体が全く感じられなかったような、そんな気がする。
しかし、その漂流感は突然に断ち切られた。
視覚的にはずーっと真っ暗闇のままなのだが、忘れていた身体の感覚、特に重力や加速度に対する感覚器、それが動作している感じだった。
右へ曲がったり、下ったり上がったり、緩いカーブかと思ったら直角に曲がったり、加速度が加わったり、急激に止まったりを何度か繰り返した後、ようやく『ヒトのカタチ』に収まったと感じられるところに辿り着いた。
それは一種のカプセルみたいだった。
そこには同じようなカプセルが並んではいたが、たくさんあるという訳ではなかった。そして、このカプセルはちょうどヒトが一人ずつ入れる大きさのように感じられた。並んでいる他のカプセルを見渡してみると、なるほど、どのカプセルも一人ずつで収められているようだった。
それらのカプセルに視線を走らせていると、同じようにカプセルに窓があり、その窓から顔が見えるのだが、いくつかのカプセルの窓から見える顔に見覚えがあるような……。
「あれは尾崎部長!」
「こっちには白木課長が!」
「あそこに見えるのは一課のやり手イケメン男!」
彼らはカプセルの窓から僕に手を振っていた。
「ど、ど、どういうことなんだ、これは?」
僕の疑問を他の三人に伝えるべく、手段はないかとカプセルの中を見回してみた。
カプセルの中にはそれらしい装置は一切なく、カプセルの内壁には凹凸さえもなく、更に窓の透明部分とそうでない部分はシームレスで開閉すらも出来ないようだった。だから、彼らに何かを伝える手段は「窓から手を振る」ことくらいしかなかった。
途方に暮れていたその時だった。
突然、一方向が明るくなって、その方向に向かってカプセルが整然と並び始めた。
カプセルが整列して、明るい方向が大きな十六対九の矩形になった瞬間、そこに『牧博美』が映し出された。
「えーっと……OKね。ちゃんとデータの転送は出来ているわね」
牧博美の後ろにもう一人、美人の女性が映っていた。
「なぁに、博美ちゃん。また新しい男をお気に入りに登録したの? ……あらら、今度の男はあんまりイケメンじゃないわねぇ」
「いいじゃないの! お姉ちゃんには関係ないわ。これは私の趣味なんですから!」
「そうですか、そうですか。でもね、データ構造が簡単でゲットが容易だからって、安易に四次元時空からお気に入りを登録しちゃダメよ。ほどほどにしとかなきゃ」
「はいはい、分かりましたよ、お姉様」
「博美ちゃん、ホントに分かってる?」
その後すぐに、牧博美とお姉さんが映し出されていた十六対九の矩形の大型画面は消えてしまい、最初の暗い世界になった。
そうか。
そうなんだ。
僕らは牧博美にファボられたのだ。
お気に入り男として。
最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございました。
【Appendix】
『SF』=「Shawty Faved」
【Outline】
Shawty just Faved that man and me and so on.
魅力的な女の子があの男や僕などをキッカリとお気に入りに登録した。