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Introduction

[ショ'ーリィ・ファ'ヴド]01・Introduction

【あなたのSFコンテスト・参加作品】

 いつもならば人々の喧噪で騒がしいプランニングセンターの広いオフィスフロア。それがふいに喋り声が聞こえなくなり、しーんと静まり返ったオフィスフロアの空気に気が付いて、僕は顔を上げた。

 みんなの視線はフロア中央の通路を歩いている五人に注がれていたので、みんなの視線に合わせて僕のそれも同化させた。フロアの入り口から見覚えのある顔がこちらに向かって歩みを進めていた。

 先頭は、このフロアを仕切る藤堂事業部長。

 二人目は、我々の企画部を仕切る尾崎部長。

 三人目は、我々の企画二課を仕切る千葉課長。

 四人目は、事務系専門派遣会社の女社長である緑川。

 最後の五人目は見たことがない女性だった。だが、その女性が既に我が社のユニフォームを着ていることと同行する他の四人の顔ぶれから考慮すると、五人目の彼女は恐らく新しい派遣社員なのだろうと判断することは間違っていないように思う。

 それにしても、その女性はものすごく魅力的に僕の目に映った。

 少し丸味を帯びた三角顔で、薄い唇に小さな鼻、少し大きめの目で眉が少し濃くて、パーツの配置と大きさとバランスはこれ以上ない組み合わせに思えた。髪型はセミロングで緩くウエーブしたストレートの黒髪、歩く度に毛先が揺れてしなやかに髪が光った。

 身長は百六十センチメートルくらいに思えたが、実際はもう少し小さいかもしれない。何しろ「これがナイスバディというモノなのか!」と云いたくなるほどの素晴らしいプロポーションで、ユニフォームのベストがその胸のボタンをはじけさせないように必死に堪えている様子や、タイトなスカートもファスナーがとても苦しそうだった。そのくせ、ブラウスのウエストに「これでもか」という程のだぶつきがあり、ベストからチラリとはみ出しているブラウスが妙にエロチックに見えた。タイトスカートの下端から覗かせている膝は細くて小さく、更に細い足首にはハイヒールのスナップがピチッとフィットしていた。

 五人は我が企画二課のミーティングスペースに来ると一列に並び、尾崎部長が我々に声を掛けた。

「プランニング事業部企画部企画第二課の諸君、今日から君達の仕事に加わってもらう新しい仲間を紹介しよう。えーっとまき君だったね、前に出てください」

 尾崎部長に『牧』と呼ばれた五人目の女性が一歩前に出た。

「えーと、彼女は『まき 博美ひろみ』さんで、主に企画二課の経費事務を担当してもらいます。それじゃ、牧君、あいさつを」

 尾崎部長に促された牧博美は、ためらいながらコクリと頭を下げた。

「牧博美です。よろしくお願いします」

 鈴が鳴るような可愛い声が、これ以上の無音は存在し得ないだろうという程の静寂なフロアの隅々にまで響き渡った。

 言い終ると牧博美は深々とお辞儀をして、更にゆっくりと顔を上げた。その時に、サラサラの髪が牧博美の顔に後れ毛を形作った。それが牧博美を更に綺麗に美しく妖艶に魅せた。

 その瞬間に、何処からともなく、誰彼となく、拍手が起こった。それは我々の企画二課だけでなく、企画部全体、いやフロア全体から沸き起こっていた。

 周りを見渡すと、フロアに居る全ての男性社員がこちらに視線を投げ掛けて、牧博美を注目していたのだった。

ここまでお読みいただきまして、感謝申し上げます。

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