だから、お願い
この書き出し、締めいかがですかその弐
から書き出しと締めをお借りして居ます
ボーイズラブのタグは保険です
ボーイズのラブは出て来ません
期待した方ごめんなさい
主人公がハイテンションな腐女子です
此の設定に嫌悪感を抱かれる方は読まない事をお勧めします
血が紅いことを初めて知った。
否、うん。人間の血が赤いって事は知って居たよ?ただ、魔族も血は赤いのかなって、ね。
目の前では、二人の美形魔族が、ひしと抱き合って居ります。
二人とも、息は荒く、蝋の様に白く滑らかな肌に一筋、汗が滴って。
腐へへへへへへ。眼福、眼福。
あ。ごめんて。うん。現実逃避だから。怒らないで。
正確には、致命傷っぽい怪我を負った金髪魔族君を、彼方此方切り傷だらけでぼろぼろの黒髪魔族君が、ふらふらしながら支えているんですよ。
服装と顔立ちからの推測で行くと、金髪魔族君は年若い王侯貴族で、黒髪魔族君は少年従者って所かな。
いやー、主従愛。美味しいね!
あはは。ドン引かないでよ。冗談冗談。一割位ね。
あ、待って待って。真面目にするから。
取り敢えず二人は怪我をして居て、怪我からは止め処無く深紅の血が溢れて居る訳でして。
其に対する感想が、冒頭の一言ってぇ事だ。
魔族の血も、紅いんだねぇーって。
光景とわたしの間での温度差が異常って?
其も仕方無いと理解して下さいな。
目の前と言っても二人が居るのは遥か前方で、わたしの前には所属する王国軍の軍勢がずらり。彼等は我等が王国軍の魔法騎士の攻撃で、たった今攻撃された所なんですから。
敵で在る彼方さんはたったの二名、此方は衛生兵含めて其の数、千。
正直、始まる前から勝敗は見えかけて居た。もし、彼方さんが強大な魔族だったら危なかったけど、そんな強かったらちまちま後方支援部隊襲ったりしないでしょうよ。
まあ、不安要素を挙げるとしたら、此の軍勢は後方支援部隊で、大半を新卒兵が占めるって事だけど、様子を見る限り問題は無さそうだ。寧ろ、新兵に緊張感を与え、戦の何たるかを知らしめる良い機会になったんじゃないでしょうか。
ああ、わたし?わたしは新卒の衛生兵ですよっと。
騎士様歩兵様に守られて、危機感の一つ抱いて居ませんとも。
抱いてない、んだけどね。
こりゃあかんわー。
何がって、絵面がね。
何て言うか、もう、此方が美青年と美少年を虐めてる、悪役にしか思えない。
そりゃ、彼方さんの瞳にはばりばり敵愾心見えるし、魔族って言えば人間にとっちゃ問答無用で敵、なんだけどねぇ…。
だって、血、赤かったし。
耳が尖ってるとか、爪が黒いとか、犬歯が鋭いとか、人間と違う所を挙げれば切りが無いんだけどね。因みに、わたしの視力は6.0です。草原育ちなもんでね。良く見えるよ!
でも、概ねヒトガタをした存在が、其も美形の男二人が、血を流して苦しんで居るんだ。美形が、二人も!!(大事な事なので強調しました)
もしも相手が魔族じゃなく人間や妖精族や半妖精族なら、誰で在ろうと十中八九手を差し伸べるなり、拘束して捕虜にするなりしてるね!何てったって、美人だからね!あわよくば、美味しく…、うん、そんな生ゴミを見るみたいな目で見ないで?自重しますからぁ!
でも、魔族だから、殺すんだ。
敵愾心抱いてるったって、きっと此の二人はお互いをとても大事に想って居て、敵を如何にかしないと大事なひとが死ぬから、諦めてないだけなんだ。
其を、大軍で寄って集って攻撃するわたし達。
駄目だろ、其は。
何を隠そう、全く隠せてないけれど、腐女子のワタクシ。美男子が死ぬのは、世界の損失で在ると思って居ります!!
願わくば、彼等には生き残って欲しい。
んでもって、あぁ、今頃二人は仲良くちちくり合って居るんだろうなとか、妄想させて欲しい。
しかし哀しきかな、現状、彼等の生き残りは絶望的だ。
…敵を故意に逃がすのは、勿論軍規違反なんですよ。
しかも、わたし衛生兵。何で衛生兵かと言ったら、治癒系の魔法しか使えないから。
…表向きは、ね。
実は色々使えますとか、バレたらヤバイっすよ、冗談で無く、色々と。あはは。
敵逃がした上に、新米とは言え魔法騎士を欺いた、しかも、使えないはずの魔法で、と来りゃ、今後どーなるかはわからんね。否、マジで。
悪けりゃ処刑、運が良くても投獄、最悪は、洗脳後、殺戮兵団行きって所ですね。
殺戮兵団ってのは、別名化け物軍団の、殲滅部隊さんですよー。洗脳されて自我を亡くした兵士や、狂った戦闘狂がぶち込まれる、国内外共に評判がよろしくない軍団。
専用に育てられた少年兵とかも居るし、何てったって洗脳で自我崩壊だからね、妄想のオカズには美味しいんだけど、自分が入るのは御免ですよ御免…。
笑えないよ。ホントに。
だって今、当に、美形達が命を散らそうとしてるんだ。
助ける力は、有るよ。正直言って、此の隊の魔法騎士も魔法使いも魔力弱過ぎてクズにしか見えないからね、わたしから見ちゃうと。
でも、其を知られればわたしの人生は終わりだ。
申し訳みたいに二年間衛生兵を勤めて徴兵義務全うしましたとか、言わせて貰えない。
わたしは…、わたしは…。
溜め息を吐いて苦笑した。
残念ながら、かわいこちゃんと美人さんには弱いんだ。面食い系腐女子だからね!
絵面が良ければ百合でも薔薇でも、美味しく頂きます。
目標は前方約半ヤード。魔法により拘束されて居り、目標破壊の為の攻撃魔法が詠唱開始された。攻撃発動迄の猶予は凡そ、一分。
随分と、強力な魔法を使おうとしていらっしゃる。
オーバーキルってもんじゃないですかい、其は。
最早、乾いた笑いを上げちゃうよ。
わたしは傍らの同僚に、治療器具を預けた。
因みにロリ系美少女ですぜ。ぐへへ。
「ん?何?」
「ちょっと、逝って来る」
衛生兵、服は自前だけど装備は官給品だからね。置いて逝くよ。
ん?行くじゃないかって?其処は突っ込んじゃ駄目だ。
わたしは可愛い同僚に半笑いで手を振って、魔法を発動した。
詠唱?んなもん、魔法式理解してれば省略可能なんすよ。
前線の魔法騎士が詠唱無しで攻撃出来ないとか、マジウケる。
長々と呪文を詠唱して居る騎士に、わたしは対面した。
風の中位術式、瞬間移動ってやつですよ。寝坊した時に目覚めないかなって思う、便利能力!
後ろで美男二人が唖然として居る。そんな顔もイイね!
手を挙げて、指揮者みたいに、振る。
周囲の音を、掴んで、止める。
詠唱禁止術式
指定範囲内を無音にする魔法だ。無論、効果範囲で詠唱なんて出来なくなる。
術者本人だけは、喋れるんだけどね。
前後からの、視圧に苦笑い。
うん、使える人、ほぼ皆無の、風の高位術式だからね。無詠唱とか、気狂いだね。しかも無駄に広範囲。変態的だね!
「敵対するつもりは無いです。集団暴力に物申したいだけで」
味方に言い訳しながら、死なない程度迄敵さんを回復させる。
此処、加減が重要っすよ?下手打つと、わたしが殺されるからね!まあ、詠唱禁止術式で既に発動して居た魔法拘束は解けないから、どっちにしろ動けはしないんだけどね。
「彼等はもう負けて居る。なら、殺す必要は無いでしょう」
そっと、魔族さん達の心臓に魔法を打ち込んだ。
うっかり逃がして逆襲とか、嫌だしね。
二人の魔族に微笑み掛けた。
「貴方達に、呪いを打ち込んだ。今後、人に仇為すならば、呪いが牙を剥く。どうか逃げて、愛する者と、平穏に暮らして欲しい」
お二人さん、目が疑問で一杯だね。
まあ、そうだろうね。
「貴方達を、助ける訳じゃない」
味方の騎士達にも聞こえる様に、少し大きく声を出した。
半径一ヤード位は魔法圏内で無音になってるから、さして大きな声でなくても聞こえるんだけどね。
「此の儘、殲滅戦が続く事を、良しと思わないだけ。殺し合ったって、終わりは見えない。なら、そんな無駄な事止めて、不干渉でも、傷付け合わない世界が良い」
多分、だけど、味方さん達はわたしの魔力切れを期待してる。詠唱禁止が解けたら、わたしと彼等を、問答無用で攻撃するつもりなんだろう。
正義と言う名のお題目を掲げた人間程、手に負えないものは無い。
反論へ、聞く耳、持たないんだもんな。
つまり、説得不能。意見を通すなら、力尽くで、って事。
まあ、さしたる問題は無い。わたしが、詠唱禁止術式を保って居られる間に限れば
無詠唱の魔法使いの前で、詠唱を禁じられた魔法騎士も、一般兵も無力だ。攻撃を掛ける前に、返り討ちにされる。
大丈夫、まだ、暫くは保つ。
「妖精族とも半妖精族とも折り合いが付けられたのに、魔族とは無理とか、まあ、萌えるネタにはなるけど、ロミジュリ展開とか、めっちゃたぎるけどっ!!」
おっと、いけない。本音が…。
こら諸君、ドン引かないでくれたまえ。
「あー、げふんげふん。人間にだって極悪人はいっぱい居る。魔族にだって、善人は居るかも知れない。問答無用で殺してたら、絶対に仲良くなれない」
建前だけどさ。三分の一位は本気で言ってるんだよ。
「わたしは、争いを止めたい。敵前で支え合う、愛を知る貴方達なら、わかってくれるかも知れないと思った」
お互いぼろぼろなのに、互いに庇い合おうとしていたのは、見てたんだよ。
主従愛美味し過ぎて鼻からトマトソース吹くかと思った。
「タダで逃がす訳じゃない。死ぬ迄呪いは付き纏う。其でも、少しでも、助けられたと恩義を感じてくれるなら、人間と争いを止めないかと、提案して欲しい」
別に、かっこつけたかった訳じゃないんだけどね。
かっこいい言葉は、耳に響くじゃないか。
敵にも味方にも、少しで良いから、耳を傾けて貰えたら、ね。
「怪我は全て治す。拘束も解く。だから、此以上の抵抗は止めて逃げて貰えないかな」
有言実行、怪我を治した。答も待たず、拘束も解いた。
信じられない、と言いた気な顔をされた。
気持ちはわかるけども…。信じてくれたって、良くない?
お姉さん、可愛い子には優しいんだよ?
もうっ、出血大サービスだかんねっ!?
重ね掛けで、新しい魔法を掛けた。
「一時間だけ、絶対防御だよ。貴方達の脚なら、十分帰還出来るでしょう。ほら、わかったら、さっさとお逃げなさいっ!!わたしだって、何時迄も詠唱禁止術式保っては居られないんだよっ!?」
必死ですとも。此方は命懸けの反逆なんだ。
金髪魔族君は躊躇った様子だったけれど、黒髪魔族君から目線で何か伝えられて踏ん切りを着けたみたいだ。
『…感謝する』
口パクでそう伝えられた。
気付いたら、魔族君達の唇で両頬をサンドされて居た。
わお、彼等に殺意が在ったら死んでたね、わたし。
…お礼のキスはわたしに、じゃなくて、互いに、にして欲しかったな。
記録魔法で録画して、永久保存するから。
あ、黒髪魔族君照れた。ほっぺにちゅーで照れるなんて、あざと可愛いね。御馳走様です。
本当に逃がしたいなら、睡魔法でも掛けて全員戦闘不能にしちゃうのが一番なんだけどね。でも、わたしだって、味方を危険に曝したい訳じゃないから。
「元気でね」
走り去る二人に背を向けて、味方の追っ手に警戒した。せめて逃げる位の時間は稼いであげたい。
力尽きた後で、わたしに待つのは地獄かも知れないけれど。
彼等はそんな事知らなくて良い。
どうか二人、幸せになって欲しい。出来れば、わたしに美味しい展開で。
だから、お願い。
背を向けて、振り返らずに行って。
拙いお話をお読み頂き有難うございました
誤字脱字等気を付けて居りますが
何か気になる点がございましたら
お教え頂けると助かります




