第七話ーー異変ーー
「「あ、来た来た。意外と遅かったね。何やってたの?沙樹。」」
沙樹と呼ばれた女は、入学式で見た和服姿の女だった。髪は頭の後ろで一つに束ねており、凛としたその姿は、まさに大和撫子と呼ぶに相応しかった。
「ん?あぁ、ちょっと、な。この辺で異常なくらいの霊障が起こってたから。気になって見回りしてきたんだよ。
……それはそうと、すまんな。この前といい今回といい、手荒い歓迎をしてしまって。」
こいつもこの極悪風紀委員の一人なのだろうが、何故かあまり悪い印象は受けなかった。それどころか、とても礼儀正しく、いい人だと感じたくらいだ。
「私は倉本。倉本沙樹だ。よろしく。あ、ちなみにみんな学年一緒だから敬語じゃなくていいぞ。」
全く状況が掴めず、しばらく思考が停止していたので、手を差し伸べられてもうやむやな返答しかできなかった。
「で、こいつらが草薙兄弟。えーっと……泣きボクロが左にあるのが、草薙礼奈。女の子ね。で、礼奈の反対側にホクロがあるのが草薙一也。こっちは男。」
二人は名を呼ばれると、軽く頭を下げた。
未だにニコニコと笑みを浮かべている。
「あと若干一名足りないが……まぁ、とりあえずこれが一年のメンバーかな……じゃ、よろし「あの……すみません……」
倉本が説明を終わらせようとしたその時だった。
「なんで私達ここに呼び出されたんですか……?そもそも私達は入る気なんてないのに……」
織宮が思いきって切り出した。
そうだ。当たり前だ。邪魔者のレッテルを押されるために委員会に入るなんて、俺らに得がないだろう。
「ん?あぁ、お前らにも利点はある。間違いなくある。
なんてったって、この風紀委員会の本当の目的は、学園の治安維持もあるが……この世の腐れきった正義や大人達をたたき直すこと、だからな。」
その言葉を聞いた途端、カチッと、自分の何かが変わった。
織宮達の表情も、先程とはまるで違う。
だが。
「けっ。そんなこと言って、結局自分達を正当化したいだけだろ。俺は嫌だね。反対だ。」
大樹が吐き捨てるように言った。織宮も、
「うん……それじゃあテロリストと全く同じだと思います……」
と続く。しかし、俺はこの時、何故か後に続く言葉が出なかった。
「そうか。ならすまない。向こうまで送るよ。巻き込んで本当に申し訳なかった。」
倉本が少し残念そうに呟いた。
「お前はいいのか?帰らなくて。まぁ、また後で来るけど。」
「お、俺か?……俺はまだいいや。色々と聞いてみたいことがある。別にいいだろ?」
倉本は、少しキョトンとした顔をしていたが、織宮と大樹を連れて黒い闇に呑まれ、何処かへ消えてしまった。
今度は俺が呆然としてしまった。一体何なのだこいつらは。
「「驚いたでしょ?色々あり過ぎて。」」
しばらく茫然自失としていた俺に話しかけてきたのは、草薙兄弟だった。あいもかわらずニヤニヤとしている。
「ん……ん?お、おう。てか、お前らといい倉本といい、何なんだそれ。何?あんたらマジシャンの類?」
前々から気になっていたことだったので、どうしても聞いておきたく、質問を投げかけてみた。
「「うーん……実は僕達にも分からないんだよねー。まぁでも科学じゃ証明できないのは確かだね。」」
「いや、それは分かってるんだけどさぁ……」
曖昧な答えに少しがっかりする。すると、
「「あ、だけど、みんな同じ能力ってわけでもないよ?」」
と、思い出したように喋り出した。
「「えーっとね……能力にも色々違いがあって、例えば僕らは人を騙したり、物事を錯覚させたりできるんだ。
僕……じゃなかった。一也の方は広範囲で人を騙せる。だけど、ぜーんぶ幻なの。
対して礼奈の方は、錯覚じゃなくて現実の物や出来事をねじ曲げることができる。まぁ、効果は自分だけだけどね。
……みたいな感じかな。あ、沙樹の能力は自分で聞いて。僕らもよくわかんない。」」
「 ……よ、要するに、お前の能力は他の人は持っていないと。」
「「うん。そうなるね。」」
ほうほう。なんとなくだが理解ができてきたぞ。ん?でもその能力って……
「あれ?そういえば、その能力っていつ手に入れたの……」
問いかけようとしたその時、突然カラスが出現した。そして、そのカラスがバラバラになったかと思うと、羽の舞い散る中から倉本達が出てきた。
「おい。草薙兄弟。仕事だ。準備しろ。霊障者が出た。」
霊障者?なんだそれは。すると、そばにいた大樹が、
「大変なんだ……!織宮が……!!」
精一杯の声でそう言った。
「急げ。お前も来い。早くしないとあいつが死んでしまうぞ。」




