第五話ーー彼らの手違いーー
一体何を言い出したのかと思えば、馬鹿なのか?こいつらは。
「お前ら、正気か?今朝あんな暴動が起きたばっかなのに、その主犯達の仲間になろうなんて、誰も思わないだろ?」
俺は、吐き捨てるようにそう言った。当たり前だ。なんたって、今目の前に立っている奴らこそが、今日の暴動を企てた真犯人なのだから。
「「え?なにそれ。暴動?何のこと?僕達今日入学式出てないんだけど……」」
だが、帰ってきた答えは、思っていたものとは真逆の答えだった。
「とぼけんなよ。どうせ嘘ついてんだろ。」
俺は問い詰めるが、彼らの表情は真剣そのものだった。どうやら嘘は着いていないようだ。
しかし。
何故かタラタラと冷や汗をかきながら、兄弟二人でブツブツ話し合っているではないか。時折聞こえてくる声からは、「やばいよね……」だの「どうしよう……」だの、マイナスなイメージしか湧かないような内容だった。そして、しばらくしてから、
「「ごめん。急用できたから帰る……答えはまた今度聞くから……」」
と言い残し、煙のように消えてしまった。
周りが見ていた幻覚も、どうやら解けた様だ。今では誰を見ても、恐れおののいている人は見当たらない。
俺は、音が戻り始めた教室で、一人呆然としていた。
織宮も、やはり「何か」が見えたのだろう、まるで人形のように、生気が抜けてしまっているようだった。
一体何がどうなっているのか。「彼ら」は何なのか。様々な思いが頭の中で交錯しながらも、俺は今日という一日に幕を下ろした。