番外編ーー女の争いーー
「「さぁやって参りました!女子力対決!司会・進行は」」
「私、礼奈と!」
「僕、一也が!」
「「お送りいたしまーす!!」」
……やかましいわ。
と言うか、まず状況を説明してくれ。謎が多すぎてどこから聞いていけばいいか全くわからん。
「あ、あのー……」
「「はい!浩介さん!」
「どうして俺は審査員席に……」
「「そりゃ、あなたが審査員だからです。あ、私たちももちろん審査しますよ?」」
「いや、そうじゃなくて……なんで俺が審査員になってるのかって聞きたいんですけど……」
「「……じゃあそろそろ審査に入りましょうかー!」」
「まさかの無視!?」
質問タイム終了。
きっとこれは料理を食べて昇天しちゃうパターンのやつだ。
だが、死刑執行前の死刑囚のような気持ちになってしまった俺には目もくれず、どんどんと会は進んでいった。
「「では、まず容姿対決を行います!双方、前へ!」」
舞台裏から織宮と倉本が出てきた。ただ立っているだけだが、これを見て何をどうすればいいのか。
「「では、二人を見比べ、美しいと思える方に、手元にある名札を上げてください!」」
見比べるといっても……。
……。
…………。
……先に言い訳をしておきたい。
俺は男である。しかも思春期の。
どうしても目が自分の意思とは違う方向へ動いてしまうのは、仕方ないのだ。
だから、ね。ほら。うん。織宮と倉本じゃ、圧倒的に違う部分があるから……さ。まぁかわいそうだとは思うけど……。
即座に織宮の札を上げた。
「「結果発表!
ゼロ対サンで、織宮さんの勝利です!」」
喜ぶ織宮と、対極の反応を見せる倉本。
輝いた目でこちらを見つめている織宮と、刺すような視線でこちらを睨んでいる倉本。
当然と言えば当然の反応だが、倉本とはどうしても目を合わせられなさそうだった。目が合ったら殺されそうな気がする。
「「それでは、今日のメインイベント!料理対決といきましょうか!」」
いよいよ料理対決が始まる。
ここからが本番だ。俺も気を引き締めていかなければ。 少しでも気を緩めると本当に連れて行かれそうな気がする。大樹はトラウマで食欲がなかった。呪詛を吐くほど不味かったのだ。無理もない。
一方、二人は着々と料理の準備を進めていた。
調理場には、フライパンから見たこともないような珍しい器具まで、ありとあらゆる道具が揃っている。
その中から、自分の使う道具だけを取り出し、いそいそと準備を進めていた。
「「準備はできたでしょうか!
では行きます!制限時間は一時間!見た目と味の二つを審査します!
よーい、スタート!」」
手早く動き出す。手つき自体は、二人とも順調に動いて見えた。だが、ときおり聞こえる爆発音や、ゴポゴポという妖しい音、物が焦げる匂いが、俺を現実へと連れ戻してくれた。
ーーそれから一時間後ーー
「「……これから試食会に入ります。先ほども申し上げた通り、『見た目』と『味』で判断してください!よろしくお願いしまーす!では、まず織宮ちゃんから!」」
机の上にやつが現れる。料理は回鍋肉だったが、やはり見た目はとても美しかった。
「い、いただきます」
おそるおそる口に運ぶ。二、三度咀嚼すると、隠れていた怪物が姿を見せた。
ま、マズイ……。
「「さぁ!お味は!」」
「む、無理……」
先日よりはまだ大丈夫だが、それでもまだまだ狂気的だ。見た目と味とで裏表があり過ぎる。それがショックの強さをより大きくしている気がした。
「「そうですかー。では採点を……
っと、そういえば、出されたものは全て食べなきゃダメですよ〜?」」
「分かってるって……」
「「いや、僕たちのぶんも。」」
「!?」
死にかけになった俺の胃腸に、草薙兄弟が追い打ちをかけてきた。
しかも今まで見たこともないような満面の笑みで。
俺はこの時確信した。
この兄弟は間違いなくドSだと。
……良い子のみんな。僕みたいな人を絶対に見習わないでね☆
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「も、もう無理……」
自分のぶん+αを食わされたおかげで、俺のHPはとっくに限界を迎えていた。
だが、まだ倒れることは許されない。審査は終わっていないからだ。もし気を失おうものなら、あの二人になにをされるかわかったものではない。そう思うと、背筋が寒くなった。
「「では、次の料理になります!倉本さん、どうぞー!」」
倉本が皿を持って奥から出てきた。
一体どんな生き物を生み出したのだろうか。好奇心と恐怖が混ぜ合わさり、なんとも複雑な気持ちだった。
「ほれ。食え。残すなよ……」
だが、出てきたのは、これまでの想像を見事に打ち砕くものとなった。
「な……ふ、普通の料理だと……」
「おい!それどういう意味だよっ!」
普通の料理。俺は何度これを望んだか分からない。それほどまでに、倉本たちの料理は衝撃的だった。
うん。普通に美味い。二口目、三口目と、消えるように口へ消えていく。見た目も綺麗で味も良い。最高じゃないか。
と、ふいに舞台裏から物音が聞こえてきた。まるで、何かを切ったり揚げたりするような……。
「倉本ー!新しい料理できたぞー!……って、あれ?」
聞き覚えのある声。こんなにも元気な声を持つ奴は一人しかいない。
大樹だ。
「なっ……お前出てくんなって……!!」
「んあ?……あ、そうだったわ。あははー!ごめんごめん!」
何も分かっていない大樹。それとは裏腹に、倉本の顔色はみるみる青くなっていた。
「「「……倉本さーん……」」」
「ヒイッ!」
「待てーッ!とっ捕まえて締め上げてやらぁぁッ!」
「ごーめーんーなーさーい!」
真っ先に織宮が飛び出ていった。と思えば、壮絶な追いかけっこが始まっている。
「なぁ浩介ー。何があったの?」
「……醜い女の争いだよ。」
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「「審査しゅーりょー!」」
先ほどの料理で全ての審査が終了した。どちらかに旗を揚げるとしたら間違いなく……
「では、良かった方の方に!」
「旗を上げてください!」
一斉に旗が上がる。結果はというと……
全員一致で織宮だった。
「「織宮ちゃんおめでとうございます!
沙樹は残念だったねー!負けちゃった!
と、いうことで、敗者には罰ゲームを用意しております!」」
舞台裏から何やら大掛かりなセットが出てきた。縄や鎖が着いていて、拘束具のようだ。
「沙樹には、この機械の中に入ってもらい、織宮ちゃんに女子力とはなんたるかを教えこんでもらいます!」」
……あれ?何かおかしくね?
これは罰ゲームとは呼ばない気が……というか、そもそもこの道具を出したのは何のためだったんだ?
「……あ。」
とっさに声が出てしまった。分かってしまったのだ。この罰ゲームの内容が。
「「おっと!?黒原くん分かっちゃった!?
そうです!今回の罰ゲーム、それは、王様ゲームです!
まぁ、王様はすでに決まっちゃってますけど。」」
「えっと……話を要約すると、みんなで倉本を好きなようにしましょうと。そういうことですね?」
「「その通りです!!さすが黒原くん!」」
最悪だ。一番いけないやつがきてしまった。
考えてもみろ。俺たちはまだいい方だが、あの二人ーー草薙兄弟は超がつくほどのドS。絶対に何かされるに決まってる。
「俺倉本に同情するわ……」
倉本が少し哀れに思えた。見ていられず背を向けると、後ろからは悲痛な笑い声が聞こえていた。
「ふひっ……ひひひっ……」
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次の日。
朝食のため食卓に座ると、一人分席が空いていた。
「あれ?倉本は?」
「あぁ、沙樹ちゃんなら、昨日笑いすぎて倒れちゃった。」
「そんなにやってたのか!?」
「「やり過ぎちゃいました☆」」
「いや、『☆』じゃなくて!?」
「あ、味噌汁美味しー!」
「大樹……空気読もうぜ……」
女子力対決は、こうして幕を閉じた。
「……お腹すいたな……」




