第二話ーー出会いーー
春。
暖かな日差しの中、桜が舞い散る出会いと別れの季節。
俺ーー黒原浩介ーーは、この春、ある高校へ入学した。
登校日初日。
「おーっす!!暗い顔して何やってんだ!
せっかく入学できたんだから、シャキッとしろよ、シャキッとよぉ!!」
明るく元気なこの男、河井大樹は、小さい頃からの馴染みの一人である。
……そして、その後ろにも、幼馴染がもう一人。
「そうだよ。そんな怖い顔してると周りからドン引きされるよ?」
さらっと酷い事を言っているこの女、織宮静は、大樹と同じく、昔からの馴染みだ。
「お前らひでぇな!?人の事をなんだと思ってんだよ!!」
「うるせぇな!!こんにゃくみたいにグニュグニュしてるお前が悪いんだろ!!」
俺が反論すると、大樹が喝を入れた。
大樹……言いたい事は分かるが、例えが気持ち悪すぎるぞ……
こんにゃくって……
「……確かに!! 浩介は、顔が怖くなくても、性格がこんにゃくみたいだもんね。」
静さーん?おっしゃっている事ががさっきより酷いよー……?結構刺さるんだよー……?
「う、うん。ごめん……だから、もう責めないでください……」
思わず敬語になる俺。
同級生に敬語になるとは……我ながら情けない……
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そんなたわいもない会話をしていると、本校舎が見えてきた。
……そうそう、いい忘れていたが、高校の名は「国立社森学園」という。
いや……学園というよりは、財団と言い直した方がいいだろう。
その広さ、なんと75,322.42㎢。本州の上半分くらいが、この学園の敷地なのだ。
さらに驚くべきは、学校内には普通に家があり、街があり、人が住んでいる、ということだ。もはや別の国である。
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校舎内に入ると、入り口にクラス分けの看板があった。名前がズラーッと並んでいる。自分の名を探すのだけで疲れそうだ。
なんとか見つけたクラス分けの結果、俺と織宮は1-A、大樹だけが1-Bになった。
「元気だしなよー」
大樹は、先程から、「なんで俺だけ……」と、ブツブツ不満を垂れ流している。先程までの明るさは一体どこへ行ったのだろう。比べ物にならないほど、ダークになっているようだ。
その時、ふわっと俺の横を誰かが通り過ぎた。
黒く鮮やかな長髪。
服は何故か剣道着を着ている。
「なぁ、織宮。あの人、なんだ?ほら、あの剣道着着てる人。
なんとなく周りと浮いてね?」
俺は、織宮に問いかけた。
「……ほんとだ。なんか雰囲気違う。あ、あれ?どっかいっちゃった……」
「?ど、どこ?どこにいるの?」
大樹は全く気付いていないようだ。
そして、その女も、いつのまにか消えていた。
「おっかしいなー。この辺にいたんだけどなぁ」
最後に見た場所を重点的に探してみるが、どこにもいなかった。
「ん?なんだこれ?カラスの……羽か?
なんでこんなところに……?」
そこにあったのは、真っ黒な羽だった。